著者
赤羽 俊亮 日野 貴文 吉田 剛司
出版者
森林野生動物研究会
雑誌
森林野生動物研究会誌 (ISSN:09168265)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.1-9, 2016-03-30 (Released:2019-09-21)
参考文献数
41

エゾシカが高密度に生息する洞爺湖中島と生息密度の低い洞爺湖湖畔地域で,エゾシカの高密度化がマルハナバチ類に及ぼす影響について考察するため,マルハナバチ類の個体数,種数および種構成を両地域で比較した.中島と湖畔の各3ヶ所でマルハナバチ類の捕獲および林床の開花植物の調査を実施した.中島よりも湖畔で採集個体数は有意に多かったが,種数には違いが見られなかった.nMDSを用いて群集構成を比較したところ,両調査地域間に差異があった.両地域の優占種であるエゾオオマルハナバチの個体数は中島の方が少なく,さらに他種の個体数は中島では非常に少なかった.また中島では林床植物の開花フェノロジーに中断が見られた.これらの結果から,エゾシカの高密度化がもたらす植生改変が,開花フェノロジーの断絶を介してマルハナバチの個体数を減少させ,種構成を変化させる可能性が示唆された.
著者
寺尾 愛也 日野 貴文 鈴木 正嗣 近藤 誠司 吉田 剛司
出版者
Association of Wildlife and Human Society
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.41-50, 2016 (Released:2017-06-17)
参考文献数
24

In Japan, the use of firearms to culling in areas surrounding the main road would be an effective option to control overabundant deer. This culling practice is linked to the laws and regulations regarding road and traffic; however, wildlife managers lack knowledge of these laws and regulations. We have identified Japanese regulations and conditions, and have focused on problems and prospects of the existing laws on sharpshooting, which was practiced at the National Route 453 in Shikotsu, Hokkaido, as a model case. Under these laws and regulations, strict safety control by blocking traffic and attending to public interests for culling is required in order to engage in culling around the road. However, the Road Law and Road Traffic Law do not specifically support road usage for culling intended for wildlife population control. Consequently, those laws require a viewpoint of wildlife management to solve conflicts that occur in and around the road.
著者
倉島 孝行 松浦 俊也 日野 貴文 神崎 護 キム ソベン
出版者
京都大学フィールド科学教育研究センター森林生態系部門
雑誌
森林研究 (ISSN:13444174)
巻号頁・発行日
no.81, pp.1-11, 2021

本稿ではカンボジアを例に, 集約管理型コミュニティ林業 (以下, CF) 導入・普及の試みが発展途上国の台地・丘陵地帯で直面しうる問題と, その現実的な対策について解明・論述する. 具体的には一地方内の複数のCF区域と各周辺域の土地利用動態, それらの差違の要因, 以上の点から汲み取れる施策上の示唆点を記す. カンボジアでは大規模森林伐採権制度停止後, 国土の11%をCF域とする方針が出された. だが, 森林維持群と耕地拡大群という, 好対照なCF区域が狭い範囲内に出現していた. 特に後者には政府の新たな土地コンセッション発行に基づくゴム園の拡大と, 農民による商品農作物栽培地の拡大とが直接・間接に影響していた. 以上の対照的なCF区域出現の背景として, 村ごとで異なった余剰可耕地の大小と, 新参者の耕地化の動きが重要だった. そこで今後, 森林維持群を増やすためには, 1)CF区域の取捨選択に当たり, CF以外の土地利用政策と農林業の動向, それらに由来する土地需要の変化を踏まえた, 中期的で広範な分析に基づく判断と, 2)CF区域での新参者の耕地化に, 元からいる村人らが追随しないようにする効果的な支援が肝要だと言える.
著者
寺尾 愛也 日野 貴文 吉田 剛司
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-10, 2014-12-01 (Released:2017-06-16)
被引用文献数
2

The increasing number of deer-vehicle collisions (DVCs) has had a significant impact on public safety. Scientific countermeasures require the systematization of DVC data. In Japan, however, DVC countermeasures are still insufficient due to the lack of DVC data systematization. The objective of this study was to review the progressive approach used for DVC data systematization in Germany, North America (Canada and the USA.), Sweden, and the United Kingdom. Additionally, we describe the prospect of DVC data systematization in order to develop scientific countermeasures in Japan.
著者
山本 さつき 鈴木 馨 松浦 友紀子 伊吾田 宏正 日野 貴文 高橋 裕史 東谷 宗光 池田 敬 吉田 剛司 鈴木 正嗣 梶 光一
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.321-329, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
35

銃器捕殺の勢子による追い込み狙撃法(n=4),大型囲いワナ(銃)(n=6),出会いがしらに狙撃するストーキング(n=9),シャープシューティング(n=14),および麻酔薬を用いた不動化捕獲の移動式囲いワナのアルパインキャプチャー(n=14),大型囲いワナ(麻)(n=8),待ち伏せ狙撃するフリーレンジ(n=10)を用いてニホンジカ(Cervus nippon)を捕獲した.肉体的ストレスの指標として測定したクレアチンキナーゼは,追い込み狙撃法(2,057±1,178 IU/L)がシャープシューティング以外の全ての捕獲方法より,また交感神経興奮の影響を反映するアドレナリン,ノルアドレナリンは,追い込み狙撃法(アドレナリン:16.500±4.655 ng/ml,ノルアドレナリン:20.375±8.097 ng/ml)が他の全ての捕獲方法より有意に高かった(P<0.05).精神的ストレスの指標として測定したコルチゾルは,囲いワナ(アルパインキャプチャー:2.63±1.90 mg/dl),大型囲いワナ(銃:1.38±0.50 mg/dl)および大型囲いワナ(麻:3.10±1.79 mg/dl)が他の捕獲方法より高い傾向が見られたが,これらは全てGaspar-Lópezほか(2010)により報告されたアカシカ(Cervus elaphus)の正常変動範囲内(1.30~6.49 mg/dl)であった.以上の結果から,追い込み狙撃法は身体的負荷が大きいこと,囲いワナは他の方法に比較して著しいストレス反応を伴う捕獲方法ではないことが明らかになった.よって,大量捕獲が可能な囲いワナで生息密度を低下させることは,アニマルウェルフェアに配慮した適切な個体数管理の手法になりうると考えられた.