著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.15-26, 1990-12

モンシロチョウ(Pieris rapae crucivora)幼生期の食草選好性を,9種のアブラナ科植物と1種のノウゼンハレン科植物を対象に,三つの個体群指標-密度,生存率,発育速度-を使って判定した。世代ごとに食草選好性は変化するものの,一年を通してみると,キャベツ(Brassica oleracea)を筆頭に,キレハヌイガラシ(Rorippasy lvestris)>ハルザキヤマガラシ(Barbarea vulgaris)>ダイコン(Raphanus sativus)>ハクサイ(Brassica campestris)が好適寄主として挙げられた。
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.38-57, 1984-01

1975年5月上旬から11月上旬まで,モンシロチョウの寄主選好性を調べるため,北海道大学構内に生育している10種類の植物-セイヨウアブラナ・キャベツ・キレハイヌガラシ・カキネガラシ・ハルザキヤマガラシ・ダイコン・ハクサイ・コンロンソウ・ノウゼンハレン・ナズナーを同構内に設けた実験区に移植あるいは播種し,そこに発生したモンシロチョウの個体数を発育段階ごとに調査した。それぞれの実験植物について,個体数の変化,寄生密度,生命表,発育期間,生存曲線,基本要因が得られた。本報告は,その一部として,第二世代,6月23日から8月31日までの結果である。1.生存率は,第一世代より低く,キャベツ・キレハイヌガラシ・ハクサイ・ダイコンで0.8〜0.3%,セイヨウアブラナ・カキネガラシ・ハルザキヤマガラシ・コンロンソウ・ノウゼンハレンで0%であった。2.発育期間は,27.6〜31.4日の間にあり,寄主間での差は小さいと判断された。3.内的自然増加率を基準に,モンシロチョウ第二世代の好適寄主として,キャベツ・キレハイヌガラシの2種を選んだ。
著者
岡田 利克
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.40-60, 1980-02
著者
岡田 利克
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.1-23, 1978-11
著者
森尾 忠憲
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.33-50, 1987-03

上記のものが,スピノザのいう君主制国家の構想であるが,この構想に関連して以下のような諸特徴が,指摘されることを追加しなければならない。スピノザの君主制の構想は,顧問会議,市民軍,土地の共有制という三つのものを主な要素として構成されている。この構想はメンツェルその他が指摘しているように,アラゴンの国家史やスペイン絶対王制の歴史に関する知識によっても,またオランダの当時の政治的歴史的状況についてのスピノザ自身の知識によっても規定されていることを否定することはできない。スピノザ自身が随所において指摘し,言及しているように君主派と共和派との緊張は,1672年における君主派の勝利をもたらし,これを契機としてオランダは,君主制国家へと移行することになった。この事件を契機とする君主派の復位は,スピノザが,充分に識りえたところであり,またオランダはこれをほぼ画期として「泥沼のような停滞の時代」あるいは「かつらの時代」に移行したことは,諸研究によって認められるところである。スピノザは,これらの動向を予測できる位置にあったと思われる。このことは顧問会議の構成と機能においてその一端を識ることができるといえよう。すでにみたように顧問会議は,一方では君主に対する助言の機関であり,他方では民意を識る機関であった。また君主の意志の実行機関として機能するものであり,司法会議に対して指揮統制の権能をもつ機関であった。したがって実質的には,立法および行政機関として機能するものといわねばならない。言いかえれば君主の権力は,事実上,剥奪されるということができる。スピノザは,この顧問会議の構成を「家族」とこれの連合である「氏族」に求めたが,この場合,この家族が従って君主制国家の基礎であるといわねばならない。君主制国家構想に認められるこの特徴は,スピノザみずから認めているように,共同体的(ゲマイリシヤフトリツヒ)であり,それゆえ自然的であるが,これは,ボーダンやアルトシュウスの君主制論の基礎を思い起こさせる。アリストテレスに従ってボーダンは君主制の基礎を,「家族」に求めたが,この家族は,夫の妻に,子息,親類縁者ならびに使僕に対する家父長の権威によって結束し,すべてが生活の資源と手段とを分けもつ自然な社会である。ローマ法に依拠するこの家父長家族を,ボーダンは,アリストテレスがその経済的意味を重視したのと異なって,家族成員に対する服従訓練を重視して道徳的政治的意味を強調している。したがってこれは,一大社会権力である。ボーダンにおいては,これが特徴であるが,君主権力の支持基盤となった。スピノザも同様に,君主制国家の基礎を家族に求めたことは上述の通りであるが,家族の社会的基盤は,顧問官の出自について彼が言及しているように,その基盤は,通商と金融とにあるから,いわゆる「都市貴族」であるが,この事情は,オランダの社会経済構城の特徴と一致する。したがってスピノザがいう家族は,この意味におけるものであるということができる。それは,グロチュースやウイットの出自のような家族をも含む一大社会的権力である96)。スピノザは,この種の家族の代表をもって顧問会議を構成することを提案したのであった。いいかえれば「長老支配」が君主制の内実をなすといえよう。他方において君主は,顧問会議が集約する諸提案の採択とその公布以外に重要な役割を果たしえず,したがって「弱々しいなぐさめ」と化している。あるいはいうなれば象徴あるいはバジョットのいう「尊厳的部分」と化している。「君主」は,アルトシュウスのいう「総督」(Ephor)に踏み止まることもできず,ユトレヒト同盟規約にいう連邦議会における調停者,軍事指揮者でもありえない。このスピノザの構想は,オランダ運動の主流をなしたリプシュウスの啓蒙君主論ならびにアムステルダム市長ホーフトによって主張された「効用的君主」論とこれを支持する共和派内保守派の君主待望論やさらにこれに関連したカルバニスト=君主派の君主論に対する強烈な批判を含むものといわねばならない。いま少し視野を拡大すれば,スピノザの君主制構想は,ボーダンの権威的君主制と君主の効用に依存するホッブズの君主制論のみならず,イギリス憲法史上中世以来論争の一つとなり,後に国王大権を認めたロックに反対するものということができよう。君主と顧問会議との関係は,ポロックによれば19世紀におけるイギリス議会制と君主との関係を想起せしめるものであるが,マクシャーは,ポロックのこの解釈を認めながらも,スピノザの君主を「単なる頭首,看板」と評し,君主は,いかなる理由によって君主たりうるのか,と問い,この種の君主の言葉あるいは約束を額面通りうけとるのは,最高権力の権利なるものに全く無知なおろかもののみであろう,と論じて,スピノザの君主制構想が,君主のために主権を,国民のために平和と自由とを確保することを目標としたことを認めても,スピノザの政体論において,君主制は,もっとも好まれることの少なかったものであり,かつ君主制に対し,相かわらぬ不信を抱いていたことは明らかであるというが,われわれも,彼の政体論の原則からしてもまた現実批判からいっても,マクシャーのこの見解を支持しなければならない。
著者
中村 美枝子
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.54-73, 1997-07

本報告は,1993年度,1995年度,1996年度に著者が流通経済大学にて担当した統計学総論Bの受講者による授業評価の結果を分析したものである。受講者は,テキスト,教員の話し方,教員の板書,授業の進め方,練習問題の内容,練習問題の実施,実習の実施,授業のペース,授業の内容・程度,授業への満足度,自己申告による出席率,以上11の項目について5段階評価を行なった。分析にあたり,80%以上の回答者がふつうかそれ以上と答えた項目は受講者から受け入れられているとみなし,20%以上の回答者が否定的に答えた項目は受講者から受け入れられていないとみなすことにした。主な結果は以下の通りであった。(1)1993年度においては,実習,ペース,内容・程度,の3項目が受け入れられていなかった。また,出席率も20%以上の回答者が悪かったと自己申告していた。しかし1995年度には,出席率が悪かったと申告した回答者の割合は20%をきった。1996年度においては,実習も受け入れられるようになり,依然として否定的な回答者が多かったのはペースと内容・程度の2項目だけであった。(2)アンケートは,1993年度と1995年度が無記名式,1996年度が記名式で行なわれた。そこで,1996年度については,自己申告による出席率と実際の出席回数との比較が可能になった。独立性の検定の結果,自己申告による出席率は実際の出席回数と独立ではなく,実際の出席回数を反映した自己申告であることがわかった。(3)年度間の比較を項目ごとに行なった結果,テキスト,進め方,実習,自己申告による出席率において有意差が認められた。このうち,テキストは1996年度の評価が高く,また自己申告による出席率は1996年度が低かった。これらは,1996年度のアンケートが記名式であったことによるものと推察される。次に,実習については年々受け入れられるようになっている傾向が顕著に認められた。進め方については一貫した傾向は認められなかった。(4)各項目をペアにして,二つの項目への回答を分割表にして独立性の検定を行なった。特に,自己申告による出席率,満足度,内容・程度,ペース,実習に注目し,これらと関連性の認められた項目について,その関連性の傾向を分析した。まず満足度については,話し方,進め方,練習問題の内容についての評価が高い人ほど満足度が高かった。また,ペースは進め方と関連しており,ペースが速いと感じている人ほど進め方が悪いと思う傾向があった。そして,実習の実施は,練習問題の実施に賛成の人ほど賛成する傾向があった。出席率および内容・程度については,一貫して強い関連性がみられる項目はなかった。今後の課題として,理解度に関する項目の追加が提案された。
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.52-62, 1988-10

1982〜1987年に,竜ヶ崎市流通経済大学構内において,1日13回の帯状センサス法を用いて,チョウの日周活動性の調査が行われた。4〜10月にかけて計26回の調査で,7科44種10,782個体が目撃され,群集構造,種数,個体数,多様性,優占種についての日周変化について解析が行われた。以下はその結果である。1.チョウ44種の13の調査時間帯への個体数分布マトリックスより,群分析と主成分分析を併用して,二つの活動時間帯と二つのチョウ群集を分類した。2.早朝および午後遅くから夕刻にかけての時間帯は,サトキマダラヒカゲ,ヒメジャノメに代表される好陰地性群集の活動の場である。3.日中の時間帯は,ヤマトシジミ,ヒメウラナミジャノメ,オオチャバネセセリ,アゲハ,イチモンジセセリ,モンシロチョウ,アオスジアゲハ,ツバメシジミ,コミスジに代表される好陽地性群集の活動の場である。
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.1-20, 1995-03

1986年の竜ヶ崎市郊外の2.5km-帯状センサスにより,チョウ成虫の生息環境の調査が行われた。3〜11月にかけて1旬につき2回の調査で7科44種3,091個体が目撃され,距離補正の上(補正総個体数=2,048),群集構造,種数,個体数,多様性,優占種についての生息環境による違いが報告された。以下はその結果である。1.チョウ44種の13の調査小区への補正個体数分布マトリックスより,群分析と主成分分析を併用して,三つの生息環境(オープンランド,モザイク,森林)と二つの群集(オープンランド群集,森林群集)を区別した。2.耕作地とその周辺域には,モンシロチョウ>ヤマトシジミ>キタテハ>イチモンジセセリが優占する計18種からなるオープンランド群集が成立していた。3.森林には,オオチャバネセセリ>ヒカゲチョウ>キチョウ>ゴイシシジミ>アゲハ>>ヒメウラナミジャノメ>サトキマダラヒカゲ>コチャバネセセリ>ルリシジミ>アオスジアゲハ>コミスジを優占種とする計26種を含む森林群集が成立していた。4.これら二つの群集の移行帯的性格をもつたモザイクが第三の環境として区別され,オープンランド群集と森林群集の混合体となつていた。5.種数については,オープンランド群集はモザイク>オープンランド>森林,森林群集は森林>モザイク>オープンランドの順となり,個体数については,オープンランド群集はモザイク>オープンランド>森林,森林群集は森林>モザイク>オープンランドの順となり,多様性については,両群集ともにモザイク>森林>オープンランドの順となった。6.1986年には,調査地にある森林の一部が造成地に変わったため,そこではチョウは生息不能となったが,全体としては目撃種数,目撃個体数ともに増加し,特に,造成地に隣接する森林では特定の種の集中化が見られた。全体として,1985年の環境変化から回復傾向にあるが,以前の状態とは大きな違いがある。
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-16, 2005-07

1991年の竜ヶ崎市郊外の2.5km-帯状センサスにより,チョウ成虫の生息環境の調査が行われた。3〜11月にかけて1旬につき2回の調査で7科39種1,713個体が目撃され,距離補正の上(補正総個体数=1,552),群集構造,種数,個体数,多様性,優占種についての生息環境による違いが報告された。以下はその結果である。1.目撃総個体数5以上のチョウ31種の19の調査小区への補正個体数分布マトリックスより,群分析と主成分分析を併用して,三つの生息環境(人家周辺域,荒地森林)と二つの群集(森林群集オープンランド・モザイク群集)を区別した。2.森林やそれと隣接する荒地では,ヤマトシジミ>アゲハ>オオチャバネセセリ>ルリシジミ>アオスジアゲハ=イチモンジセセリを優占種とする計23種が森林群集を構成していた。3.荒地や人家周辺域には,キチョウ>モンシロチョウ>キタテハ>ツバメシジミを優占種とする16種からなるオープンランド・モザイク群集が成立していた。4.種数個体数ともに過去10年間の最低となったが,オープンランド・モザイク群集の台頭と優占種への目撃個体数の集中度合いが減少し,均等性が増大した結果多様性はむしろ上昇した。
著者
Suzuki Keisuke
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.33-62, 1983-02

一国内の各都市の人口をP,最大の都市人口から数えたその都市人口の順位をRとするとき,それらの間には,log P = -a log R+b (1)という関係が成立する(aおよびbは,パラメーターである)。これが,今日,一般に,「ジップの順位規模法則」とよばれている法則である。この法則の成立機構,性質,適用の可能性等については,すでに,これまで多くの研究がなされている。しかし,一国内でこのジップの順位規模法則が成立しているとき,その一国内の部分的地域内にある都市人口に対して,やはり,ジップの順位規模法則が成立し得るかどうかという問題についての研究は,まだなされていない(ただし,一国の部分的地域の都市人口へのこの法則の単なるあてはめは試みられている)。ここでは,この問題に対する検討をおこなった。検討の結果,『ある一地域(第k地域)内の都市人口P_kのもつその地域内の都市人口における順位R_k』と『その都市人口のもつ全地域(一国)内の都市人口における順位R』との間に,ほぼ R≒κR_k (2)という関係(ただし,κはある定数)があるとき,もしも,全地域内の都市人口が順位規模法則に従っていれば,第k地域内の都市人口もまた,近似的に順位規模法則に従うことが理論的に見いだされた。すなわち,一国全体の都市人口が,ジップの順位規模法則に従っているとき,同時に,その国の部分的地域の都市人口もまたジップの順位規模法則に従うことが可能であることを理論的に示すことができた。また,この事実をシミュレーションによっても示すことができた。ジップの順位規模法則のもつ上記のような性質-全地域内の都市人口と部分的地域内の都市人口が同時に順位法則に従うことができるという性質-を,筆者は,『ジップの順位規模法則の可分解性(decomposability)』と名づけた。さらに,検討の結果,いくつかの地域内の都市人口が,同様のジップの順位規模法則に従うとき,いいかえれば,第k地域における都市人口をP_k,その地域内の都市人口におけるO_kの順位をR_kとすれば,R_kとP_kとの間に,P_k=-a log P_k+b(k=1,2,…)(3)という関係が成立する(a,およびbは各地域共通のパラメーターである)とき,これらの地域全体の都市人口にジップの順位規模法則を適用し得ることが理論的に判明した。順位規模法則のもつこのような性質を,ここでは,「ジップの順位法則の可結合性(composability)」と名づけた。最近のわが国においては,わが国全体の都市人口に対しても,また,各種地域内の都市人口に対しても,ジップの順位規模法則が適用され得るが,このようなことが可能となった理由は,ジップの順位規模法則の可分解性,または,可結合性にあることが認められた。この研究の一部は,日本大学の1981年度における総合研究:『21世紀目本の針路』に与えられた研究資金によっておこなわれた。その研究結果は,鈴木啓祐:「地域的人口分布の動向」,黒田俊夫編:『21世紀日本の針路』東京,古今書院,1981年,159-193頁および,鈴木啓祐,黒田俊夫:"On the structure of the spatial distribution of recent urban population in Japan," NUPRI Research Paper Series, No.4,東京,日本大学人口研究所,1981,という形で公表されている。この研究をおこなう際,この研究に対して関心を示し,大きな刺戟を与えられた日本大学の黒田俊夫教授に謝意を表する。また,この研究の一部は,1981年に東北学院大学(仙台)で開催された日本入口学会の第33回研究発表会,ならびに,1981年に明治学院大学(東京)で開催された目本地域学会の第18回研究発表会において発表した。これらの発表の内容は,鈴木啓祐:"On the homogeneous structure found in the system of the population of cities in Japan,"『人口学研究』第5号,1982年,49-56頁,ならびに,鈴木啓祐:「ジップの順位規模法則の可分解性について」,『地域学研究』第12巻,1982年,35-52頁,という形で公表されている。これらの研究発表の際,有益なコメントを与えられた,宇都宮大学の大友篤教授,慶応義塾大学の高橋潤二郎教授,および摂南大学の岡崎不二男教授に対して感謝の意を表する。なお,この研究に必要となった重要な文献を閲覧する機会を与えられた成蹊大学の志村利雄教授および石井三郎教授に感謝を表する。さらに,また,この研究に必要な計算作業に協力された芙蓉情報センターの土屋政晴氏,蒲耕二氏,および藤原史之氏に対しても感謝の意を表する。
著者
本村 猛能 内桶 誠二
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.1-14, 2004-01

最近,大学への専門高校からの進学率が高まっており,従来の普通高校を前提とした情報教育の内容ばかりでなく,様々な形態の高校教育を考慮したカリキュラムを考えることが必要になってきた。また,同時に教科「情報」の免許取得にあたり,その対象学部・学科でも,平成14年度以降専門高校生の割合が高まっている。そこで本研究では,現在大学で実践されている一般(共通教育)課程での情報教育と,高等学校・専門高校の情報に関する学習内容を比較することで,今後の大学情報教育の在り方について検討することを目的とした。検討の結果,大学情報教育では,各種ソフト活用による日常利用するプレゼンテーション技能の向上に力点が置かれ,その面で専門高校,中でも商業系,工業系出身の生徒にとっては動機付けは高い。ただし,普通科出身の生徒の技能が初期レベルのため,現状では教育内容およびカリキュラムの不十分さが認められた。つまり,情報に関する能力として,大学では,情報社会や倫理といった「教養」教育は努力されているものの,アルゴリズムなどの「知識」は不足がちであり,高校では,情報に関する技能として,ソフト操作やパソコン操作といった「利用技術」教育は努力されているものの,問題解決能力などの「構成力」は不足がちである。具体的には,今後の情報教育の内容は,指導する学生数や個人差に応じた教育,技能とコンピュータ等メディア活用技術を十分検討する必要性があることがわかった。今後,これらの必要性の意味と,専門高校の実践で認められた情報教育の「基礎・基本の徹底,理論と実践の関連,創造性重視」の関連性,および高等学校と大学との系統的なカリキュラムについて検証していかなければならない。