- 著者
-
城下 貴司
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.C0270, 2007 (Released:2007-05-09)
【はじめに】アキレス腱炎およびアキレス腱周囲炎とは若年スポーツに限らず中高年層にも発症し、原因はランニング、ジャンプ、登山等での蹴り出し時に腱やその周囲に繰り返し伸張刺激が加わり、結合組織の炎症や腱実質に微細損傷および変性を引き起すという報告が複数ある。臨床現場でも推進期等の伸張位での痛みを訴える症例が多い。代表的な治療の一つにアキレス腱のストレッチがある。ところが伸張刺激が原因にもかからず伸張刺激で治療する矛盾があり、安易なストレッチには疑問を持っていた。本研究では、本疾患の理学療法についてもう一度再考するきっかけ作りとしたい。【対象および方法】対象は当クリニックでアキレス腱炎およびアキレス腱周囲炎と診断された15足(15名,男9名 女6名)年齢35.4±19.1歳とした。まずステッピング等でアキレス腱にストレスのかかる疼痛誘発テストで評価し、次に母趾から5趾を使用しての底屈エクササイズ、2趾から5趾での底屈エクササイズ、そして3趾から5趾での底屈エクササイズを施行し各々でエクササイズ前後の疼痛の変化を比較した。疼痛変化はVAS(100mm幅)を使用した。【結果】母趾から5趾底屈で改善した被験者は4名,26.7%、非改善は3名20%、変化が認めなかったものは8名53.3%であった。2趾から5趾底屈では、改善したもの12名80%、非改善1名6.7%、変化が認めなかったもの2名13.3%であった。3趾から5趾底屈では改善したものは14名93.3%、非改善0名0%、変化が認めなかったものは1名6.7%であった。 2趾から5趾底屈の「30%以上改善率」は13.3%、「40%以上改善率」は0%、3趾から5趾底屈の「30%以上改善率」は46.7%、「40%以上改善率」は33.3%であった。【考察】母趾から5趾底屈では、ほとんどの被験者で改善は認めず、中には悪化する被験者も認めた。一方2趾から5趾の底屈では約8割の被験者に改善を認め、3趾から5趾の底屈では15名中14名の9割以上の被験者に改善を認めた。さらに改善率から比較しても3趾から5趾の底屈の方が良好な結果を得た。また本研究の結果では母趾を使用したエクササイズよりも母趾を使用ないエクササイズが有効的であった。すなわち、本疾患に対しては母趾を使用させるにはリスクがあり、母趾以外の足趾に着目すべきと考える。以上から、ストレッチを施行せずとも、臨床的な評価に基づいたエクササイズを選択することで本疾患は有効的な理学療法を展開できると考えている。