著者
佐藤 綾
出版者
一般社団法人 日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.83-94, 2018 (Released:2018-10-29)
参考文献数
27

小学校理科では,野外での生物観察など自然との関わり合いの中で児童が問題を見出すことが求められている.一方で,小学校教員や教員を目指す大学生は野外での生物観察の指導に不安を感じていることが指摘されている.本研究では,野外での生物観察を行う単元において,教科書で取り扱われる頻度が高い生物,その中でも特に学生が知らないと感じている生物を明らかにすることで,小学校の教員を目指す大学生が野外での生物観察を指導する自信を高める大学での効果的な支援を探るための基礎資料を提供する.小学校理科の教科書に記載されている生物を調査した結果,全体で190の動物と134の植物が記載されていた.その中で「昆虫と植物」,「身近な自然の観察」,「季節と生物」の野外での生物観察を行う単元で記載されていた動植物は3~6学年全体で記載されている生物の約半数(54.2%)を占めていた.一方で,単元間で共通して見られた生物,出版社間で共通して見られた生物は動物38,植物30のみであった.教員養成学部の大学生を対象とした調査から,教科書に記載されている生物のうち,動物では鳥類,植物では野生草本について,その生物を知らないと回答する学生が多いことが明らかとなった.以上のことから,大学の授業においては,単元間,出版社間で共通して見られる生物をまず取り上げること,特に鳥類と野生草本を授業の材料として取り上げることで,小学校教員を目指す大学生が野外での生物観察を将来指導するための基礎的な知識を効果的に高めることができると考えられる.
著者
山田 貴之
出版者
一般社団法人 日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.38-44, 2017 (Released:2018-10-29)
参考文献数
20

本研究の目的は,中学校第2学年「動物の体のつくりと働き」における「生命を維持する働き」において,ブタ心臓の解剖実験を取り入れた授業実践が,「心臓の各部位の同定」,「動物の生命に対する意識」および「解剖に対する意識」に与える効果について明らかにすることである.この目的を達成するために,ブタ心臓の解剖実験を取り入れた授業を行い,作成したワークシートおよび質問紙を分析したところ,以下の3点のことが示唆された.第1に,「心臓の各部位の同定」については,85%以上の生徒が8点以上(10点満点)を獲得するとともに,個人の合計得点の平均値が9.07点と大変高かった.特に,心臓の8ヶ所の部位の観察事実に基づく同定に効果があった.このことから,ブタ心臓の解剖実験は,「心臓の各部位の同定」に効果がある.第2に,「動物の生命に対する意識」については,解剖実験を基点に変容が促進されるとともに,授業実施から約4ヶ月後においても高い割合で維持できることが示された.このことから,本単元「生命を維持する働き」において,ブタ心臓の解剖実験は,生徒の「動物の生命に対する意識」の変容とその維持に効果がある.第3に,「解剖に対する意識」については,解剖実験後の平均得点が,解剖実験前のそれよりも有意に上昇した.このことから,ブタ心臓の解剖実験は,「解剖に対する意識」の変容を促進する.
著者
中川 繭 高橋 香穂理
出版者
一般社団法人 日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.50-57, 2019 (Released:2019-08-14)
参考文献数
13
被引用文献数
1

花器官ABCモデルは,被子植物の花が外側からがく片,花弁,雄しべ,雌しべ(心皮)の順に4種類の器官が並ぶ仕組みを遺伝子レベルで明快に説明する簡潔かつ大変美しい仮説である.シロイヌナズナのホメオティック変異を起こした花の変異体の解析により,3つの遺伝子グループ(クラスA, B, C)の発現の組み合わせによって4種の花器官の形成が決まることを示したこの仮説は,2009年の高等学校学習指導要領改訂後,すべての高等学校理科「生物」の教科書で取り上げられている.しかし,多くの教科書で遺伝子領域と形成される花器官のモデル図と変異体の花の構造図や写真に相違が見られたことから,ABCモデルが植物の発生と遺伝子の働きについての例として適切に説明されているか疑問が生じた.そこで,教科書および副読本においてABCモデルがどのように説明されているかについて,被子植物の花の構造と同心円領域の概念,3つの基本ルールの記載,遺伝子領域と花器官の形成についてのモデル図と花の構造図に注目して調査した.その結果,すべての教科書で遺伝子の機能領域と形成される花器官を示すモデル図が記載されているが,その仮説の構築に使われたクラスA, B, C遺伝子の欠損体花の構造図として示されている図の多くが実際の花と異なっていることがわかった.これは主に,ABCモデルは3つの基本ルールによって成り立つことが理解されていない,特にクラスC遺伝子が花の有限性の維持に働くことが認識されていないこと,シロイヌナズナの雌しべは2枚の心皮が合着していることが説明されていないことの2点が原因と推測された.そこで,今後ABCモデルを高校生物で取り上げるのであれば,被子植物の花器官が同心円状に存在し,外側からがく片,花弁,雄しべ,心皮が形成されること,雌しべは心皮が融合または合着したものであることを説明した上で,クラスA, B, C遺伝子の欠損体の表現型(実験結果)からモデル(仮説)を構築し検証する観察実験,またはモデルを踏まえた思考実験として変異体の表現型を示すことを提案する.
著者
入江 萩子 渡辺 守
出版者
日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.68-75, 2009-03-31
参考文献数
32
被引用文献数
1

1 0 0 0 微小生物

著者
斎藤実
出版者
神奈川県立教育センター
雑誌
生物教育
巻号頁・発行日
pp.46-58, 1966
被引用文献数
1