- 著者
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足利 幸乃
- 出版者
- 医学書院
- 雑誌
- 看護学雑誌 (ISSN:03869830)
- 巻号頁・発行日
- vol.67, no.11, pp.1054-1059, 2003-11-01
前稿(本誌前号)では,がん化学療法におけるセルフケア支援の考え方と看護師の役割,そして,医療者が陥りやすいパターナリズムが患者支援という看護を阻むことに言及した.本稿では,がん化学療法を受ける患者の抗がん剤による副作用症状に対するセルフケア支援に焦点をあて,前稿で提示したセルフケア支援のプロセス1)(図)の枠組みを使って,筆者の考えるセルフケア支援のポイント(表1)を説明していきたい.なお,セルフケア支援のポイントを具体的に解説するにあたって,前号「便秘のセルフケア支援2)」でとりあげた事例(表2)をつかっていくこととする.
ケアの優先順位を決める
ポイント1:看護アセスメントと患者の気がかりをすりあわせ,セルフケアの優先順位を決める
がん化学療法では,投与される抗がん剤のレジメンによって,出現頻度の高い副作用,その症状の程度,出現時期と回復パターンをある程度予測できる.多くの現場では,がん化学療法によって出現する一般的な副作用,たとえば,悪心・嘔吐,易感染,口内炎,食欲不振などをカバーする内容の患者教育用パンフレットを使って,患者への指導が行なわれている.患者教育のなかに,セルフケアに関する内容がもりこまれており,副作用の知識とともに患者に必要とされるセルフケアが説明される.
このように一般化された看護を行なうことは,ある水準の看護を維持するために不可欠である.しかし,一般化された看護に終始すれば,患者のなかには「だからどうなの…」「じゃあ,私はどうなの」と思ってしまう者もいるだろう.患者が気にかけていることは,自分のことである.患者が自分に対して看護が行なわれていると感じるためには,一般的な看護のうえに,患者個別の看護を付加しなければならない.このオプションは,個別的な看護アセスメントから見出すことができる.個別的なアセスメントを行なうことで,一般的とされる患者の問題が,ほんとうにこの患者の問題であるのか,この患者にとっての優先順位の高い問題は何かといったことが明らかにされる.