著者
高橋 光輝
雑誌
研究報告デジタルコンテンツクリエーション(DCC)
巻号頁・発行日
vol.2013-DCC-3, no.6, pp.1-8, 2013-01-14

シャノンの情報理論(Shannon 1949)1),伝統的な命題論理や述語論理を応用したラムダ計算(Frege 1997)2),そしてチュアリングマシン(Penrose 1995)3)などの発達により,デジタル技術は大規模情報処理を可能にさせた.今日の社会において,デジタル技術はコンピュータ工学から人間コミュニケーションの分野にまで多大な影響を与えている.その代表例がFacebook,YouTube,Blogなどをはじめとするソーシャルネットワーキングサービス(以下:SNS)の台頭である.情報社会において,SNSは人間コミュニケーションの必要不可欠な意思伝達手段として急速に広まりつつある(ソーシャルメディア白書2012)4).いわば21世紀の近代コミュニケーションに多大な影響を与えているものとしてSNSの存在感が増しているといえる.本論文ではこうした背景を捉えつつ,デジタルコミュニケーション論(高橋2011,2012)を通してどうSNSが今日のコミュニケーションに貢献しているのかを探る.第1章では,SNSの具体例としてFacebook,YouTube,Blogの特徴をそれぞれ取り上げ,どう今日の人間コミュニケーションにおいて活用されているのかを概説する.第2章では,筆者が2011年と2012年に独自に調査した,中国と日本のそれぞれの大学生のSNS使用状況に関するアンケートをもとに,実際にSNSがどういった動機により使用されているのかを分析する.その上で,SNSが人間コミュニケーションに与える影響を模索する.第3章では,中国と日本のSNS事情より考えられる情報拡散の可能性や問題性を捉え,広く社会に対する影響を論じる.第4章では,こうした社会問題を解決する際に考えられる事項を情報と意味の観点より考察し,メディアリテラシーの本質を探る.
著者
王 杲 高橋 光輝
雑誌
研究報告デジタルコンテンツクリエーション(DCC)
巻号頁・発行日
vol.2015-DCC-9, no.50, pp.1-8, 2015-01-19

近年,中国の急激な経済発展に伴い,コンテンツ市場も大きく活性化されている.しかし,日本で行われているキャラクタービジネスが成功している事例は中国では極めて少ない.さまざまな制約などの厳しい環境がある中国で,日本型キャラクタービジネスの展開は今後も厳しい状況ではないかと推測される.今回は,著者がプロデューサーとして参加し,中国で展開した “VOCALOID CHINA PROJECT” の事例を基に,海賊版問題や放送規制が厳しく文化も違う中国で,実際に行ったどんな問題に直面したのか.また,ユーザーとなる中国の若者がどんな影響を受けたのかを記録し,分析する.
著者
高津 良介 牧 宥作 権藤 聡志 井上 智雄 岡田 謙一
雑誌
研究報告デジタルコンテンツクリエーション(DCC)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.42, pp.1-8, 2015-01-19

オーケストラをはじめとした大人数の演奏形態は身近な存在となり,アマチュアを中心としたオーケストラも多数見られるようになった.大人数による音楽演奏の場において,指揮者の存在は演奏をまとめる上で重要である.指揮者に求められる専門知識の敷居は高く,アマチュアオーケストラにおいては指揮者不足が問題として挙げられている.その状況に焦点を当てた,指揮者不在でも演奏を成立させるための仮想指揮者の研究が存在する.しかし,それらの仮想指揮者は人間の指揮ほど多種多様な表現を行えないため,演奏内容を豊かにするだけの指揮能力を持たせることは困難である.そこで我々は,演奏者一人一人に指揮を行う環境を提案する.本システムでは,演奏者全員の面前にタブレット端末を配置し,これに演奏者の役割に応じた個別の仮想指揮者を表示する.それぞれの仮想指揮者のタイミングは同期を取る.このシステムによって,高い指揮能力を持つ仮想指揮者を実現し,指揮者不在でも演奏しやすい環境を提供できることが期待できる.Instrumental performances which consist of a large number of people, such as the orchestra, have been familiar. In addition, orchestras consist of many amateur musicians are often seen. When music is played by a large group, what becomes most essential in order to put together a performance is the existence of the conductor. A conductor is required of a wide range of expertise, and shortage of conductors due to this load, has been a serious problem within amateur orchestras. Focusing on such situations, there are studies using a Virtual Conductor in order to make performances workout in the absence of the conductor. Unfortunately, these Virtual Conductors obviously lack variety of expressions than human conductors, so it is difficult for the conductor to have conducting abilities to enrich the performance. Therefore, we suggest an environment where each performer can have one conductor to conduct them. In this system, tablets are placed in front of each player. Separate Virtual Conductors are in display that could provide personalized directions that suit their role in the orchestra. Timing of each Virtual Conductor is synchronized. This system can realize a Virtual Conductor with high conducting ability, and is expected to make possible to provide supportive playing environments for amateur players without the conductor.
著者
三宅 勇紀 井上 凌輔 梅村 祥之
雑誌
研究報告デジタルコンテンツクリエーション(DCC)
巻号頁・発行日
vol.2014-DCC-8, no.2, pp.1-5, 2014-11-13

先に提案した楽曲の心地よさに関する客観評価法の検討において実験参加者は 1 名であった.そこで,本研究は複数人の主観評価を用いて客観評価法にて機械判定することで,より一般的な結果を得ようとする研究である.そこで,1 フレーズおよそ 8 音符のメロディに対しての客観評価法を 3 つの方法で性能評価した.1 つ目は複数人の主観評価結果を個人ごとに主観評価法によって機械判定する方法である.2 つ目は個人ごとの正解率より一般性を高めるため,複数の評価者による判定を正解判定として,客観評価法の正解率を調べる方法である.3 つ目は客観評価法が機能することが出来るのかを確認することで,性能評価を行う方法である.以上のことから客観評価法の有用性を確認することが出来た.
著者
梅村祥之
雑誌
研究報告デジタルコンテンツクリエーション(DCC)
巻号頁・発行日
vol.2014-DCC-8, no.1, pp.1-7, 2014-11-13

我々が先に情報処理学会第 104 回音楽情報科学研究会で発表した 「規則的に生成した 4 音符からなる楽曲を用いた楽曲の心地よさに関する客観評価指標」 は,およそ 1 小節に相当する長さを対象とした楽曲の心地よさに関する客観評価法であった.今回,先の手法を一部修正し,およそ 1 フレーズに相当する 8 音符を扱えるようにした.評価対象曲を Essen folk song collection の曲とし,実験参加者 1 名による 273 曲の主観評価結果を正解判定として,客観評価法にて機械判定した結果,正解率 84% という高い値を得た.