著者
先崎 千尋
出版者
茨城大学
雑誌
茨城大学地域総合研究所年報 (ISSN:03882950)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.87-99, 2007

2007年度から「新農政」が始まる。その骨子は,これまでの「バラマキ農政」から「選別政策」へ転換するもの,ということであり,財界,マスコミ,それに生協などが賛意を表している。この農政の転換は,その通りに実現すれば,わが国農政では農地改革以来の大改革となる。小農経済の中で,農協の存在は不可欠だが,現在の農協に対する批判は厳しく,まさに四面楚歌の状態にある。批判の論旨は,農業構造の変化に農協は対応出来ていない,行政と癒着している,農協の経営はどんぶり勘定だ,組合員の声が運営に反映されていない,など。しかしそれにもかかわらず,農協の対応は鈍い。昨年秋に開かれた全国,都道府県レベルでの大会は「農協の生き残りをかけたもの」という意気込みだったが,その内容は問題だらけだった。重要な問題は,農協としてわが国の農業をどうするかというグランドデザインが欠けていること,農家の暮らしをどう守っていくのか,まったく触れていないことの二つである。では,農協で展望を見出す(農協が生き残れる)とすれば,解決すべき課題は何か。そもそも協同組合とは何か,など9つの課題と私見を展開するものである。
著者
武井. 邦夫
雑誌
茨城大学地域総合研究所年報
巻号頁・発行日
no.17, pp.91-102, 1984
著者
有賀 絵理
出版者
茨城大学
雑誌
茨城大学地域総合研究所年報 (ISSN:03882950)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.77-85, 2007

少子高齢化が進むにつれ,災害弱者は障がい者よりも高齢者の方が,実数・割合とも高くなってきている。これまでは,災害弱者イコール障がい者と見る傾向が多かったが,現実は,高齢者の救護・介護の一部として,災害弱者の避難方法を取り上げざるを得なくなってきた。そのためには,全ての人間が安全で健康的な生活を保障するユニバーサルデザインの社会が要求される。災害避難を実施する場合,災害の情報を正確に伝える,そして,対応は,自宅待機,緊急避難,生活場所移動,町の廃棄まで,いろんな段階がある。これらの対応に,住民が自治体の指導の下に,一致協力して被害を最小限に食い止める災害避難・防災が人類共通の課題となる。勿論,災害発生・場所などの規模の大小は大きい。これらの災害に対して,被害を最小にする対応には,災害弱者の実数・生活場所を確認し,通常の救護・介護体制を把握し,災害発生時の地域社会の救援体制整備が不可欠である。本研究では,第一段階として,災害情報連絡の周知体制の整備を検討したい。
著者
小林 三衛
出版者
茨城大学
雑誌
茨城大学地域総合研究所年報 (ISSN:03882950)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.1-14, 2007

「水戸地方裁判所の決定」の検討である。「生命・健康に危険のない質の飲料水,生活用水を確保すること」を人格権と位置づけ,「法的に最大の保護に値する」とし,これが処分場から流出する汚水によって侵害される可能性がある場合には,差止めることが認められるとしており,高く評価される。ついで,処分場から排出される汚水が田野川に流入し,これによって,「水道水が汚染される可能性」を認め,「それを利用している債権者らの被保全権利の侵害の可能性を否定できない」として,「保全性があるものと思料される」と結論づけていることは,先駆的・画期的である,といえる。また,田野川の水を農業用水としている債権者らについて,「水質が害され,水利権が侵害される可能性が高く,その侵害の程度が深刻である場合には,その行為を事前に差し止めることも認められる」としている点も,重要であるが,「農業用水は,水道水のように直接汚染水そのものが人体に影響を及ぼすものではない」ので,「事前差止めまでを求める保全の必要性はない」と判断していることには賛成できない。なお,地下水の汚染の可能性はないとして,その汚染を認めていない点については,疑問である。