著者
丸山 真央
出版者
日本都市社会学会
雑誌
日本都市社会学会年報 (ISSN:13414585)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.28, pp.219-235, 2010 (Released:2011-12-20)
参考文献数
61
被引用文献数
1 1

Since the late 1980s, many urban restructuring researchers interested in Tokyo have inquired impacts of economic globalization approached by world/global city hypothesis. This paper reviews these researches and clarifies research agenda for transformation of urban restructuring in Tokyo under the impact of neoliberal state reform in the late 1990s and 2000s. Some researchers, especially with Regulationist approach, have pointed out Tokyo's particularity of urban economic and social structure derived from the postwar Japanese “Toyotaist” regulatory regime and the Japanese “developmental” state, compared with New York and London under the North Atlantic Fordist regime and Keynesian welfare state. However, Japanese postwar regime and state have started changing since the crash of bubble economy and the economic turmoil in the “lost decade”. Company welfarism in Toyotaist regime has collapsed and the state apparatus in developmental state has experienced drastic restructuring in the late 1990s and 2000s. For understanding the urban restructuring of Tokyo under the impact of neoliberalism, we must capture the regime shift, state restructuring, and these effects to the economic and social structure of the city. Therefore, we focus attention on theoretical and methodological framework of “neoliberalizing city” researches by European and American urban scholars. This paper makes a point of the potential utility of this framework and discusses some points for the Japanese “neolibelarizing” urban restructuring.
著者
丸山 真央
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.52-65, 2021 (Released:2022-07-08)
参考文献数
32

本稿では、2010年代を通じて大阪府・市政で大きな影響力をもった「大阪維新の会」を素材に、2010年代の地方政治の構造変化の一端を明らかにする。戦後日本の保守政治の支持基盤のひとつに、都市部では町内会があり、自営業者層を中心に担われるさまは「草の根保守主義」と呼ばれてきた。町内会をはじめ、かつて政治的に力をもった中間集団は、政党にせよ政治家後援会にせよ、近年、凝集力の低下が指摘されている。のみならず、ポピュリズム研究で指摘されるように、ポピュリスト政治家は、こうした中間集団を回避して、マス・メディアやソーシャル・メディアを活用して有権者から直接支持を調達する政治コミュニケーションを展開している。維新の大阪市政でも、既存の町内会が「政治マシーン」と批判され、補助金制度の改革や新たな地域住民組織の設立が進められた。我々の調査によると、そうした地域住民組織政策のもとで、これまで「草の根保守」層の中核を形成してきた町内会の担い手層の一部が、維新支持者に鞍替えしつつある。しかしそれはまだ多数でなく、またその支持も必ずしも堅いものではない。維新は、中間集団に統合されない流動的な無組織層の支持を獲得する一方で、既成の保守政党を支えてきた固定層である「草の根保守」の制度的基盤を破壊して、「中抜きの構造」と呼ばれるような地方政治の新たな構造を生みだしてきた。2010年代の地方政治は、そうした新たな構造の上で展開してきたといえるが、同時に、そうした構造が孕むデモクラシーの課題も浮き彫りにしてきたと考えられる。
著者
丸山 真央
出版者
地域社会学会
雑誌
地域社会学会年報 (ISSN:21893918)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.13-26, 2017 (Released:2018-05-14)
参考文献数
44
被引用文献数
1

This article aims to illuminate contradictions between a state rescaling strategy as seen in the Grand Design of National Spatial Development toward 2050 and current conditions in targeted areas. Primarily, the article highlights metropolitan areas and the living conditions of urban residents. Through the strategic document, the Japanese government aspires to concentrate national resources in cities and metropolitan regions. In fact, since the late 1990s, many major Japanese metropolitan regions have expanded in terms of population; this trend is called re-urbanization. We distributed questionnaire surveys to apartment residents in the central cities of six metropolitan regions—Sapporo, Tokyo, Nagoya, Kyoto, Osaka, and Fukuoka. The data analysis revealed that a sizable number of residents enjoys a high occupational status and income stratum. These people are blessed further with material and cultural richness. Though many singles and couples enjoy abundance in the consumption environment of central cities, most families with young children are hard-pressed for time because of balancing work with family life. Therefore, they have few time to enjoy the rich cultural environment of the central city. On the one hand, many singles and couples have little interaction with their neighbors; on the other hand, many families with children build and maintain good neighborly relations as a catalyst for nurturing children. From the perspective of the geographical scalar debate, the state rescaling strategy—as seen in the Grand Design—has been developed considering inter-corporation and inter-urban economic competition on the global scale. However, the daily lives of urban residents, especially families with young children, are dependent on a neighborhood scale, not global scale. These scalar contradictions included in the state rescaling strategy might have worsened the living conditions of urban residents.
著者
田辺 俊介 松谷 満 永吉 希久子 濱田 国佑 丸山 真央 米田 幸弘 斉藤 裕哉 張 潔 五十嵐 彰 伊藤 理史 桑名 祐樹 阪口 祐介
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

近年の日本のナショナリズムの時点間比較として、前回調査の2009年全国調査データと本科研費によって得た2013年全国調査データを用い、2時点間の比較分析を行った。その結果、愛国主義については大きな変化は見られず、純化主義は一定程度強まる傾向が示された。また排外主義は、対中国・対韓国に対するものと他の外国人に対するものの2種類に分けられた上で、対中国・韓国への排外主義については日本型愛国主義の影響力が強まっていた。この点は、尖閣/釣魚諸島沖衝突事件(2010年)や李 明博大統領の竹島/独島上陸(2012年)ような国家レベルの紛争が、人々の抱く排外主義にも影響した結果と考えられる。
著者
丸山 真央
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.476-488, 2012-03-31 (Released:2013-11-22)
参考文献数
47

2000年代以降, 都市研究で「国家のリスケーリング」論が影響力をもつようになっている. これは, グローバルやリージョナルな経済・政治統合が進むなかで国家諸機構の機能や影響力がその地理的スケール上の編成を変化させることに注目し, 都市やそのガバナンスの変化との関連を明らかにするものである. 「都市」は, 従来の都市研究でしばしば所与の空間的単位とみなされてきたが, 「地理的スケール上の編成の変化 (リスケーリング)」という発想を採り入れることで, それが資本や国家のスケール的編成と相互規定的に生産される地理的スケールのひとつであり, それゆえ今日, 「都市」というスケールをどう定義するかということそれ自体が「スケールの政治」の争点になっていることが明らかになる. 本稿では, この視角による都市研究の基本的な問題構制と成果を整理し, グローバル化とネオリベラリズムのもとでの都市ガバナンスの変化を捉えるのに有益であることを示す. そのうえで「平成の大合併」をめぐる地方都市の事例の簡単な分析を行う. 基礎自治体の合併は, 既存の「地域/都市」スケールのガバナンスを担う政治行政機構を再編して, 新たな「地域/都市」スケールでガバナンスを組織しなおす「国家のリスケーリング」のひとつだが, 事例分析から, 日本でこれがどのような政治経済的な力学で進められたのかを明らかにする. あわせてこの視角による都市研究の課題を引き出し整理する.
著者
鯵坂 学 上野 淳子 堤 圭史郎 丸山 真央
出版者
同志社大学
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.1-78, 2013-05

日本の大都市では,1990年代後半から都心部の人口が減少から増加に転じる「都心回帰」現象が起きている。本研究では,2つの方向から人口の都心回帰が大都市の都心コミュニティにもたらす変化を探った。(1)既存研究が少ない札幌市,福岡市,名古屋市を対象として,自治体等へのイン タビュー調査と行政資料の分析を行った。その結果,3都市ともに都心回帰を経験しているが都心回帰の担い手や都心を取り巻く状況は異なることが明らかになった。都市自治体の対応は都市計画分野に限定されており,都心コミュニティの再編に直接対応する制度がないため,地域住民組織は対応に苦慮している。(2)札幌市と福岡市に絞った都心マンション住民へのアンケート調査からは,東京や大阪における都心回帰の担い手と相違点が示された。また,マンション内外の付き合い方は住居の所有形態,世帯構成,年齢による違いが大きいとともに,都心による違いがあることが分かった。
著者
丸山 真央
出版者
滋賀県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

「平成の大合併」で基礎自治体が合併して大規模化した地域では、自治体内分権や地域自治区制度を活用した新しい地域自治が試みられている。本研究ではこうした試みが効果的なローカルガバナンスにつながる条件を探った。地域自治区の全国的な動向調査や事例調査を通じて明らかになったのは次の 2 点である。第一に、地域自治区制度を活用した先進事例においては、法律上の地域協議会だけでなく、地域の公共サービス供給を担うNPOなどの新しい住民組織が必要とされ、実際に設立が進んでいるところがみられた。第二に、こうした新しい制度や組織が有効に機能するうえで、町内会・自治会等の既存の地域住民組織が、公共サービス供給でも地域の公共的な意思決定でも、またガバナンスのシステム自体の正統性の確保においても必要不可欠な役割を果たしているということである。
著者
丸山 真央
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

最終年度にあたる平成19年度は、平成18年度までの成果を踏まえて次の3つの課題に取り組んだ。1)市町村合併(「平成の大合併」)をめぐる地域政治の地域社会学的研究。ポスト「大合併」段階のローカルガバナンズを明らかにするために、静岡県浜松市(旧佐久間町)と新潟県上越市(旧安塚町)で調査を継続した。いずれも、住民全員参加型NPOを設立し、地域協議会制度を活用することで、合併により消滅した自治体の機能を部分的ながら代補させようとする稀少な事例であり、「大合併」後のローカルガバナンスに関する全国的先進事例である。地域協議会委員全員の面接調査を集中的に進めたほか、NPOや行政の聞き取り調査も行った。以上から、ポスト「大合併」段階の地域においてこうした「自治体代替型NPO」と地域協議会制度を活用したガバナンスが構築されようとしていることが明らかになった。成果は、安塚町の事例に関する制度論的考察を『地域社会学会年報』に論文投稿した(査読付き、掲載決定、平20年度刊行予定)。2)大都市部におけるローカルガバナンスの政治社会学的研究。東京圏の都市自治体におけるネオリベラル・ガバナンス改革と市民活動との関連を検討し、日本社会学会で発表したほか、国際社会学会都市・地域部会の国際会議でも発表した。3)地方自治の制度変化と同時に進行する地方政治の再編に関する政治社会学的研究。ポスト55年体制期の地方政治の構造変動を明らかにするため、理論枠組の整理を行ったほか、徳島県などで継続調査を行った。その成果の一端は、ミネルヴァ書房より公刊された。現在、以上3つの課題を統合的に分析する理論枠組を検討しており、平成20年度中にも論文として発表する予定である。