著者
蓑輪 雅好
出版者
The Society of Agricultural Structures, Japan
雑誌
農業施設 (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.137-149, 1998-12-25 (Released:2011-09-05)
参考文献数
10

周囲物体に対する豚体の形態係数を豚体形状に基づいて解明するために, 肥育中期に相当する体重が65kgである豚の立位におけるサーフィスモデル (8838個の三角形パッチで構成した3次元多面体グラフィックスモデル) を用い, 矩形面に対する65kg豚の形態係数を数値計算で求めた。形態係数計算値の百分率誤差は約1%以下であることが, 形態係数総和則と誤差伝播法則から推定できた。豚体の側面, 正面, 背面および天井面に位置する矩形面 (側面壁, 正面壁, 背面壁, 天井面) に対する65kg豚の形態係数算定図を, 豚体中心 (豚体の全長, 最大幅, 最大高さそれぞれの中点) から矩形面までの距離と矩形面の大きさをパラメータとして提示した。同様に, 豚の蹄部底面が接触している矩形面 (床面) と蹄部底面よりも下方に位置する矩形面 (ケージ式豚舎における豚舎床面) に対する形態係数算定図を提示した。同一場所に位置する同一大の矩形面に対する27kg豚の形態係数と65kg豚の形態係数との大小関係および差異の大きさは, 矩形面が位置する壁面, 天井面, 床面の種類や豚体中心から矩形面までの距離で異なった。また, 両者の差異は最大で約10%であった。
著者
小綿 寿志 佐藤 義和 干場 信司 影山 敏司 杉吉 一行
出版者
The Society of Agricultural Structures, Japan
雑誌
農業施設 (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.77-82, 1999

実規模アイスポンドシステムを用いてバレイショの長期貯蔵を行い, その際の冷房性能および氷の融解に関わる熱負荷を測定した。その結果, 最大冷房能力はほぼ設計通りの13.3kWであり, この時の冷房成績係数は約1.7であった。3月末から5月末までは貯蔵庫内はバレイショ貯蔵に好適な気温2℃, 相対湿度約93%に維持された。6月以降に電気冷房機を併用した場合, 加湿器を使用することなく庫内を高湿度に維持でき, バレイショの貯蔵のほかアスパラガス,キャベツの予冷でも良好な結果を得た。氷は8月末まで残存し, 8月中旬まで氷を利用した冷房が可能であった。アイスポンド各面の熱負荷の中で底面および法面に比べ氷の上面からの侵入熱量の割合が際立って大きかった。アイスポンドの氷の融解に関わる熱負荷の総和は,製氷完了時に推定した氷の全融解潜熱量とよく一致した。
著者
森山 英樹 佐瀬 勘紀 小綿 寿志 石井 雅久
出版者
農業施設学会
雑誌
農業施設 (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.199-212, 2003-12-25
参考文献数
16
被引用文献数
4

2002年10月1日20時半頃に、台風0221が神奈川県川崎市付近に上陸した。関東地方太平洋側を北上した本台風は、中心付近の最大風速が35m/sの、関東地方における戦後最大級の強さの台風であった。そのため、台風の危険半円に位置した千葉県東総地方および茨城県鹿行地方では、パイプハウスを中心とする多くの園芸施設が倒壊等の被害を受けた。今後の台風対策に資するために、被災した園芸施設7事例に関する現地調査を行った。また調査結果の整理・被災園芸施設の構造解析・接合部および基礎の耐風性の算出を行い、破壊メカニズムに関する考察を加えた。その結果、(1)南南東風を中心とする風速35m/s以上の風によって園芸施設の被災が生じたことを確認し、さらに事例毎に、(2)50m/sの風では基礎が浮き上がることと、さらに施工不良基礎では引き抜き耐力が70%以上低減すること、(3)基礎を現状よりも10cm深く埋設することにより50m/sの風でも浮き上がらなくなること、(4)斜材の設置されていない鉄骨補強パイプハウスの柱梁接合部は50m/sの風には耐えられないことを明らかにした。また、(5)風下側妻面の開放による施設内部の負圧増加が屋根を押しつぶそうとする荷重を増加させたとする破壊メカニズムの可能性を指摘し、(6)風上側に風の流れを大きく変化させる物体が存在する場合の園芸施設に適した風圧力算定方法の必要性について指摘した。