著者
佐久間 孝志 平尾 利行 妹尾 賢和 岡田 亨 白土 英明 老沼 和弘 阿戸 章吾
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第27回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.15, 2008 (Released:2008-08-01)

【はじめに】 股関節の安定化機構として、解剖学的・力学的知見から、股関節深層筋は力学的支持という役割だけでなく、関節運動の誘導を担っている可能性があることが推測される。その中で股関節深層筋のトレーニングはいくつか紹介されているが、いずれも実際に股関節深層筋の収縮を検証している報告は少ない。そこで今回は股関節深層筋である小殿筋に着目し、小殿筋が収縮しやすい股関節肢位および負荷量について検討した。 【対象】 対象は本研究に同意を得た股関節に既往のない健常男性10名とした。 平均年齢25.3歳、平均体重63.8kg、BMI21.8であった。 【方法】 被検者に側臥位をとらせ、膝関節伸展位、股関節内外転・内外旋中間位にて、屈曲30度、0度、伸展10度の3肢位にて等尺性股関節外転運動を行った。それぞれにおいて低負荷運動と高負荷運動を行わせ、各肢位での小殿筋の収縮を測定した。測定には超音波画像診断装置 GE横河メディカルシステム LOGIQ BOOK を用い、MRI画像より大転子と腸骨稜を結んだ線上の近位1/3、および上前腸骨棘と後上腸骨棘を結んだ前方1/3を小殿筋の測定箇所として固定した。また検者は同一としプローブを固定する者1名、抵抗を加える者1名として測定を行った。 得られた画像から安静時と収縮時における小殿筋の厚みを計測し、収縮時の厚みを安静時の厚みで除すことで収縮率を算出した。統計処理はTukeyの多重比較および対応のあるT検定を用い、有意水準5%未満とした。 【結果】 低負荷運動時においては伸展10度での収縮率が屈曲30度、屈曲0度のときよりも有意に高値を示した。高負荷運動時では、股関節屈曲角度の違いによる収縮率の変化はみられなかった。各股関節屈曲角度における低負荷運動と高負荷運動時における収縮率を比較すると、伸展10度のときのみ低負荷運動で有意に高値を示した。 【考察】 今回の結果から、股関節伸展位および低負荷運動にて有意に高い収縮率を認めた。これは小殿筋の走行から股関節伸展位では股関節軸より後方に位置するため、股関節屈曲位よりも股関節伸展位で外転筋として作用しやすくなり高い収縮率を認めたものと考える。また、股関節深層筋には遅筋線維の割合が高いことが報告されていることから、低負荷運動の方が有意に高い収縮率を認めたものと考える。今後、さらに本研究を踏まえ股関節深層筋トレーニングの有効性を検討していきたい。
著者
伊藤 昭 上井 雅史 田中 隆晴 平野 弘之
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第27回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.24, 2008 (Released:2008-08-01)

【目的】肩関節周囲炎の治療期間に関する先行研究及び報告は多い。治療期間と運動療法の頻度及び注射療法の頻度に関する統一見解がない。今回、我々は肩関節周囲炎の治療期間と運動療法の頻度及び注射療法の関係について検討したので報告する。【対象】平成18年6月から平成20年1月の間に当院を受診した肩関節周囲炎患者28例34肩(右肩19肩、左肩15肩)であった。男性4例、女性24例、平均年齢64.7±9.6歳であった。リタイヤ患者及び変形性肩関節症など病変部位が明らかな患者は除外した。【方法】治療期間を、短期間群(1~4ヶ月間通院、n=17)及び長期間群(5ヶ月間以上通院、n=17)の2群に分けた。運動療法を週2回未満施行群(n=21)と週2回以上施行群(n=13)に分けた。注射療法をヒアルロン酸ナトリウム(以下、ヒアルロン注)の注射頻度及びステロイドの注射回数に分けた。ヒアルロン注の頻度がそれぞれ月1回(n=10),2週間に1回(n=13)及び2週間に1回以上(n=11)に分けて検討した。治療開始時と最終時の肩関節屈曲及び外転角度で治療成績を評価した。統計処理にStatcel2を用いた。各群間の比較に対応のあるt検定を用いた。治療期間と運動療法の頻度及びヒアルロン注頻度の相関関係をPearson’sの相関係数検定を用いた。有意水準を1%未満とした。【結果】長期間群の治療開始時と最終時の屈曲及び外転角度の間に有意差を認めた(p<0.01)。運動療法の週2回未満群と週2回以上群の治療開始時と最終時の屈曲及び外転角度の間に有意差を認めた(p<0.01)。ヒアルロン注の2週間に1度群の治療開始時と最終時の屈曲及び外転角度の間に有意差を認めた(p<0.01)。ステロイド注射回数の1回(n=12)と3回以上(n=6)の治療開始時と最終時の外転可動域の間に有意差を認めた(p<0.01)。治療期間と運動療法及びヒアルロン注との間には相関関係が認められなかった。治療期間とステロイド注射回数との間に正の相関関係が認められた(r=0.58)。【考察】先行研究で運動療法とヒアルロン注を併用することで関節可動域の改善と自覚・他覚所見(自発痛、夜間痛、運動時痛及び圧痛)の改善が得られるといわれている。今回の検討では、運動療法が週2回以上おこなっている症例でヒアルロン注を2週間に1度実施し、かつ通院期間中1回のステロイド注射をうけていた症例は有意に関節可動域の治療成績がよかった。治療期間が5ヶ月以上必要でだった。それぞれ治療期間、運動療法の頻度及びヒアルロン注頻度の間に相関関係が認められなかった。この理由として、肩関節の運動痛の強さがあげられる。