著者
野田 将史 佐藤 謙次 斉藤 明子 日詰 和也 印牧 真 黒川 純 岡田 亨
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Cb0486, 2012 (Released:2012-08-10)

【目的】 ブリッジ運動は下肢筋群の筋力強化として臨床で広く活用されており,これに関する報告は散見される.しかし,両脚ブリッジ運動における股関節外転および膝関節屈曲角度の違いが下肢筋群筋活動に及ぼす影響は明らかにされていない.本研究の目的は,両脚ブリッジ運動において最も効率良く筋力強化を行う肢位を検討することである.【方法】 対象者は,下肢疾患の既往の無い健常成人15名(男性9名,女性6名,平均年齢27.4歳,平均身長166.4cm,平均体重62.7kg)であった.測定方法は,表面筋電計はマイオトレース(Noraxon社製)を用い,大殿筋・中殿筋・内側ハムストリングス・外側ハムストリングスの4筋を導出筋とした.電極貼付部位は,大殿筋は大転子と仙椎下端を結ぶ線上で外側1/3から二横指下,中殿筋は腸骨稜と大転子の中点,内側ハムストリングスは坐骨結節と脛骨内側顆の中点,外側ハムストリングスは坐骨結節と腓骨頭の中点とした.十分な皮膚処理を施行した後,各筋の筋腹に電極中心距離2cmで表面電極を貼り付け,動作時における筋電波形を導出した.アースは上前腸骨棘とした.測定値は最大随意収縮(MVC)で正規化し%MVCとした.MVCの測定はダニエルズのMMT5レベルの測定肢位において5秒間の等尺性最大収縮とした.測定条件は,MVC測定後5分間の休息を設け,次の条件における各筋の筋活動を1肢位あたり2回測定しその平均値を分析に用いた.測定時間は5秒間とし中3秒間を解析に用いた.尚,条件の測定順序は無作為とした.測定肢位は,両足部内側を揃え股関節軽度内転位とし膝関節120度屈曲位でのブリッジ運動(股内転膝屈曲120°),膝関節90度屈曲位でのブリッジ運動(股内転膝屈曲90°),膝関節60度屈曲位でのブリッジ運動(股内転膝屈曲60°),両足部を肩幅以上に開き股関節外転20度とし膝関節120度屈曲位でのブリッジ運動(股外転膝屈曲120°),膝関節90度屈曲位でのブリッジ運動(股外転膝屈曲90°),膝関節60度屈曲位でのブリッジ運動(股外転膝屈曲60°)の6肢位とした.また,運動時は股関節屈曲伸展0度になるまで挙上するよう指示し,測定前に練習を行い代償動作が出現しないよう指導した.統計学的分析にはSPSS ver.15を用い,一元配置分散分析および多重比較により筋毎に6肢位の%MVCを比較した.また,有意水準は5%とした.【倫理的配慮,説明と同意】 本研究は当院倫理委員会の承認を得た上で,各被験者に研究に対する十分な説明を行い,同意を得た上で行った.【結果】 各動作における%MVCの結果は以下の通りである.大殿筋では,股外転膝屈曲120°は股内転膝屈曲60°と股内転膝屈曲90°よりも有意に高値を示したが,その他の有意差は認められなかった.中殿筋では,すべてにおいて有意差は認められなかった.内側ハムストリングスでは,股外転膝屈曲120°は股内転膝屈曲60°と股外転膝屈曲60°と股内転膝屈曲90°と股外転膝屈曲90°よりも有意に低値を示した.股内転膝屈曲120°は股内転膝屈曲60°と股外転膝屈曲60°よりも有意に低値を示した.その他の有意差は認められなかった.外側ハムストリングスでは,股内転膝屈曲60°は股内転膝屈曲90°と股外転膝屈曲90°と股内転膝屈曲120°と股外転膝屈曲120°よりも有意に高値を示した.股外転膝屈曲60°は股内転膝屈曲90°と股外転膝屈曲90°と股内転膝屈曲120°と股外転膝屈曲120°よりも有意に高値を示した.股内転膝屈曲90°は股外転膝屈曲120°よりも有意に高値を示した.その他の有意差は認められなかった. 【考察】 今回,各動作時における%MVCの結果から,大殿筋では股関節内転位よりも外転位,膝関節軽度屈曲位よりも深屈曲位の方が有意に高値を示した.内外側ハムストリングスでは,膝関節深屈曲位よりも軽度屈曲位の方が有意に高値を示した.この結果から,ブリッジ運動を行う際は,大殿筋に対しては股関節外転位+膝関節深屈曲位,ハムストリングスに対しては内外転を問わず膝関節軽度屈曲位に設定することで効率が向上されることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 臨床で頻繁に処方する両脚ブリッジ運動の最も効率よい肢位が判明することで,患者への運動指導の際その肢位を活用し運動指導することができる.
著者
平尾 利行 佐久間 孝志 妹尾 賢和 岡田 亨 竹井 仁
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
巻号頁・発行日
pp.74, 2011 (Released:2011-08-03)

【目的】 解剖学的観点から股関節深層筋のうち内外閉鎖筋は股関節の衝撃吸収作用という役割を担っていると考えられ、内外閉鎖筋機能を改善させることは股関節機能改善、維持という観点において重要な意味をなすと考える。しかし、どのような負荷のトレーニングをすることで内外閉鎖筋が促通されるかは明らかでない。運動によって活動した筋はMRI信号強度が上昇することが知られており、股関節深層筋機能評価においてMRIを用いることは有用と考えられる。本研究の目的は股関節深層筋である内外閉鎖筋を賦活するのに適した負荷量についてMRIを用いて明らかにすることである。 【方法】 股関節に既往のない成人男性11名(平均年齢23.5±1.5years、平均身長169.4±4.7cm、平均体重62.3±4.6kg)を対象とした。被検者に高負荷外旋運動と低負荷外旋運動を行い、それぞれの運動前後でMRI(1.5T)を施行し股関節周囲筋の信号強度を抽出した。高負荷外旋運動とは角速度60deg/secでの等速性外旋運動と定義し、低負荷外旋運動とは角速度500deg/secでの等速性外旋運動と定義した。運動機器にはBIODEX system3(BIODEX社製)を用い、股関節90°屈曲位(恥骨結合と上前腸骨棘を結ぶ線に大腿骨長軸が垂直になるよう設定した)の端座位にて0°から最大外旋位までの範囲で等速性外旋運動を行った。運動課題は30秒間の等速性外旋運動を5セットとした。セット間の休憩は10秒とした。MRIで抽出する筋は内閉鎖筋、外閉鎖筋、梨状筋、大殿筋、中殿筋、小殿筋、腸腰筋とした。高負荷外旋運動と低負荷外旋運動における各筋の運動前と運動後のMRI信号強度を比較した。統計処理にはSPSS ver.12.0を用い、Wilcoxonの符号付順位検定を行った。有意水準は5%とした。 【結果】 高負荷外旋運動において運動後にMRI信号強度の有意な上昇を認めた筋は内閉鎖筋、外閉鎖筋、中殿筋、腸腰筋であった。低負荷外旋運動において運動後にMRI信号強度の有意な上昇を認めた筋は内閉鎖筋、外閉鎖筋のみであった。 【考察】 低負荷外旋運動後にMRI信号強度の有意な上昇を認めた筋は内閉鎖筋、外閉鎖筋のみであり、高負荷外旋運動よりも選択的に内外閉鎖筋が働いていた。 内閉鎖筋を選択的に促通する際には、高負荷外旋運動よりも低負荷外旋運動の方が有用であると考える。 【倫理委員会の承認】 本研究は船橋整形外科病院倫理委員会の承認を得て行った。
著者
小山 泰宏 葛山 元基 岡崎 久美 高村 隆 岡田 亨
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C3O3055, 2010

【目的】<BR>臨床において,上腕三頭筋のMMT( Danielsら)での筋力は問題ないにも関わらず,肩関節挙上動作で肘関節伸展が困難な例を少なからず経験する.また上腕三頭筋内側頭,外側頭は,いわゆる単関節筋であり二関節筋ではないにも関わらず,肩関節挙上角度の違いで筋出力が異なることもしばしば経験する.そこで我々は,以下の2つの仮説をたてた.1)上腕三頭筋内側頭,外側頭は肩関節挙上位では筋出力に乏しい.2)上腕三頭筋内側頭は,特に肩関節内転方向かつ伸展方向に筋出力が高くなる.本研究の目的は,上記2つの仮説を検証するため,肩関節肢位の違いにおける上腕三頭筋内側頭,外側頭の筋活動を筋電図学的に検討することである.<BR>【方法】<BR>対象は,健常人男性21名(平均年齢26.29±3.1歳,平均身長171.63±4.9cm,平均体重66.27±8.1kg)の両側上肢42肢である.方法は,肩関節挙上角度が異なる6肢位で,前腕が常に重力に抗した肘関節伸展運動を伸展-20度まで行い,等尺性収縮による表面筋電図を3回測定した.また負荷は1kg重錘とした.測定6肢位は,すべて前腕回外位で前額面挙上4肢位(最大屈曲位,90度屈曲位,0度位,伸展20°位),矢状面挙上2肢位(最大外転位,90度外転位)とした.測定筋は,上腕三頭筋内側頭,外側頭,三角筋後部線維,棘下筋の4筋とした.測定機器は,Noraxon社製表面筋電図(Myosystem1400)を使用し十分な皮膚処理後に電極を貼付した.解析区間は,等尺性収縮5秒間の内,2~4秒の3秒間とした.また各筋の平均活動を算出し,3回測定の平均値を求め,DanielsらのMMT3遂行時の平均筋活動で除して標準化(%RVC)を行った.統計学的処理は,SPSS ver12.0を使用しFriedman検定を用い,その後の検定としてWilcoxonの符号付順位検定にて多重比較を行った.得られたP値についてはExcel上でBonferroniの不等式による修正を行い有意水準5%とした.<BR>【説明と同意】<BR>本研究は,船橋整形外科病院倫理委員会の承認の後に行われた.被験者に対しては,本研究における測定内容,又,皮膚処理時のリスクについての十分な説明を行い,同意を得られた対象のみ測定を施行した.<BR>【結果】<BR>肩関節肢位の違いと各筋の%RVC<BR>1)上腕三頭筋内側頭:平均値は最大屈曲位7515±38.5<最大外転位89.85±48.4<90度屈曲位101.0±52.5<90度外転位128.8±44.2<0度位211.1±134.5<伸展20度位212.55±135.6の順に高値を示した(P=0.000).多重比較の結果は,90度屈曲位‐最大外転位,0度位‐伸展20度位の間には有意差は認めなかったが,その他においてはすべて有意差を認めた.(P<0.05)<BR>2)上腕三頭筋外側頭:平均値は90度屈曲位78.0±31.7<最大屈曲位97.8±47.7<90度外転位107.46±39.4<最大外転位144.26±75.4<0度位149.54±81.6<伸展20度位184.45±81.6の順に高値を示した(P=0.000).多重比較の結果は,最大屈曲位‐90度外転位,0度位‐最大外転位の間には有意差は認めなかったが,その他においてはすべて有意差を認めた.(P<0.005)<BR>3)棘下筋:平均値は90度屈曲位82.27±37.0<90度外転位29.44±21.0<0度位36.62±26.3<伸展20度位40.18±32.1<最大外転位45.53±16.5<最大屈曲位82.27±37.0の順に高値を示した(P=0.000).多重比較の結果は,最大屈曲位‐その他の肢位の間,また最大外転位-90度屈曲位,90度外転位の間に有意差を認めた.(P<0.05)<BR>【考察】<BR>今回の結果から,上腕三頭筋訓練として行われている肩関節挙上位での肘関節伸展訓練は,上腕三頭筋内側頭,外側頭の筋出力に乏しく,棘下筋を主とした肩関節外旋筋の筋出力が高くなることが示唆された.また上腕三頭筋内側頭については,肩関節内転かつ伸展方向に筋出力が高値を示すことが示唆された.肩関節挙上位の動作で上腕三頭筋内側頭の機能改善を促す場合には,上腕三頭筋内側頭の筋機能を十分に理解した上で反復した運動学習を行うことが重要となると考える.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>関節可動域改善や筋力改善を促す際,筋連結に伴う効果は未だ不明なことが多い.健常人における肩関節肢位の違いによる上腕三頭筋内側頭、外側頭の筋活動を理解することは,肘関節エクササイズを施行する上で,単関節筋における筋機能を効率的に改善できると考える.
著者
松田 雅弘 大山 隆人 小西 由里子 東 拓弥 高見澤 一樹 田浦 正之 宮島 恵樹 村永 信吾 小串 健志 杉浦 史郎 三好 主晃 石井 真夢 岡田 亨 亀山 顕太郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】加齢に伴う運動器障害のために移動能力の低下をきたし,要介護になったり,要介護になる危険の高い状態を「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」と定義し,中高齢者の運動器に起こる身体状態として知られている。子どもの発育の偏りや運動不足,食育などが原因となり,筋肉,骨,関節などの運動器のいずれか,もしくは複数に障害が起き,歩行や日常生活に何らかの障害を引き起こすなど,子どもでも同様の状態が起こりうる。さらに,転んでも手がつけない,片脚でしっかり立つ,しゃがみ込むなど基本動作から,身を傷害から守る動作ができない子が急増している。幼稚園児36.0%,就学児42.6%,小学校40%で片足立ち。しゃがみ込み,肩180度挙上,体前屈の4項目の検査で1つでも当てはまる児童生徒が存在する。【活動報告】千葉県浦安市の児童に対するロコモの検診を行政と連携し,千葉県スポーツ健康増進支援部中心に実施した。参加者は3~12歳の334名であった。検査項目は先行研究にある片脚立ち,肩180度挙上,しゃがみ込み,体前屈以外に,四つ這いバランス,腕立て・腹筋などの体幹筋力,2ステップテスト,立ち上がりテストなど,柔軟性・筋力・バランス能力など12項目とした。また,食事・睡眠などのアンケートを実施した。当日は理学療法士が子どもと1対1で検査することで安全性の確保と,子どもの集中力を維持させ,検診を楽しむことで計測が可能であった。【考察】この検診で成長にともなう運動発達が遅れている子の把握が可能であった。親を含めた検診を通じて家族の運動への関心が高まったことや,自分の子どもの運動能力の把握,日頃の運動指導にもつながった。【結論】今回の検診で子どもの運動機能の現状を把握するのに,この取り組みが有益なことが示唆された。今後は広く地域と連携して子どものロコモ検診を行い,健康状態の把握と運動の啓発を理学療法士の視点として取り組んでいきたい。
著者
岡山 知世 高村 隆 小野寺 萌 岡田 亨
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.81, 2008

【目的】<BR>肩関節周囲炎いわゆる五十肩は、中高年に多くみられる肩関節疾患である。三木らは「明らかな起因を証明しにくい特発性の初老期の有痛性肩関節制動症」と定義している。臨床においては患者に詳細な問診を行うと何らかの動作が誘因となり発症しているケースを多く経験する。肩関節周囲炎における疼痛を引き起こしたと思われる自覚動作(以下、発症誘因動作)の実態についてアンケート調査を施行し、若干の知見を得たので以下に報告する。<BR>【対象・方法】<BR>2007年10月~2008年2月までに当院を受診した肩関節周囲炎患者40歳以上65歳以下の男性10名、女性22名、合計32名(平均年齢56.6歳)を対象とした。対象の除外項目は、中枢・内科・精神・循環器・呼吸器疾患の既往のあるもの。肩関節術後。外傷とした。調査方法は、自己記入形式でアンケートした。調査項目は、1誘因動作の自覚の有無、2発症誘因動作内容、3痛みの発生状況、4発症後の対応、5原因となる動作の作業時間(連続作業時間・1日作業時間)6作業姿勢の6項目とし、同時にJOAスコアも調査した。<BR>【結果】<BR>1、発症誘因動作、ありと回答した患者は18名(65.6%)、なし、5名(12.5%)、わからない、と回答したものは7名(21.8%)であった。2、発症誘因動作の内容は、パソコン作業、重いものを持つ動作、拭き掃除、寝ながらゲームをした等の回答を得た。3、痛みの発生状況は、徐々に痛くなった20名(62.5%)、急に痛くなった5名(15%)。4、発症時の対応は、病院受診18名、病院でない治療機関4名、湿布17名、冷やした2名、温めた2名、何もしない4名、その他4名であった。5、連続作業時間の平均は30分以内4名(12.5%)、1時間以内が3名(0.9%)、1~3時間が8名(25%)、その他7名(21.8%)。1日作業時間は4.12時間であった。6、作業姿勢は坐位12名(48%)、立位12名(48%)、その他1名(4%)。平均JOAスコア67.9点であった。<BR>【考察】<BR>諸家の報告から、「肩関節周囲炎は特別な誘因なく発症する」という文献が多く散見されるが、今回の結果では、65.6%以上に本人が自覚する誘因動作を認める結果が得られた。痛みの発生状況では、発症誘因動作の有無にかかわらず、62.5%が徐々に痛みが生じてきたと回答しており、誘因動作を本人が自覚できないケースが含まれていると考えられた。日常生活動作での肩関節周筋の筋緊張の増加や筋疲労をひき起こす動作は、手関節や上肢の動作を安定させるために肩関節周囲筋群に持続的収縮が強いられる動作が多く、さらに作業への集中などが加わり、長時間の実施による筋疲労の蓄積や作業姿勢への自覚ができず、具体的な誘因動作の特定を阻害しているものと考える。
著者
宮島 恵樹 関 俊昭 高見澤 一樹 七尾 真理子 早川 政人 彦田 直 森 大 東 拓弥 岡田 亨 村永 信吾 秋葉 洋介 石田 隆 亀山 顕太郎 河田 聡巳 小串 健志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101926, 2013

【はじめに、目的】高齢者の転倒予防の実践は,各個人の健康寿命延命のみならず,実益的な医療費削減や介護費削減,さらには地域,自治体の活性への貢献として今後の重要課題といえる.加えて運動機能の維持向上への取り組みは,現在,歩行機能の低下を自覚する世代から,その予備軍的な世代に対する幅広い働きがけが必要である.我々,千葉県理学療法士会は,県内における専門領域職能団体として,千葉県民の能動的で活発な健康社会づくりに寄与するため,千葉県理学療法士会公益事業局スポーツ健康増進支援部の取り組みとして2010年度より「千葉県から転倒を減らそうプロジェクト」を展開している.本取り組みは県内士会員による転倒予防を目的とした転倒予防セミナーの開催と歩行年齢測定会の実施を行なっている.測定会は,有志の県士会員の協力を得ながら県内各地で開催される健康増進,福祉関連イベントなどに千葉県理学療法士会として出展を行い実施している.各測定会では測定結果をもとに,その場でフィードバックと自己管理方法としてのエクササイズ指導を合わせて行っている.今回は我々が実施した歩行年齢測定会の結果を基に今後我々理学療法士が改めて目を向けるべきであろう予防について考察する.【方法】測定項目は,体組成(身長,体重,体脂肪率),Functional reachテスト(以下FR),Timed up&goテスト(以下TUG),立ち上がりテスト,2stepsテストの5項目を行った.対象者は2010年10月~2012年10月イベントに参加した1437名(30~85歳,平均58.6±18.2歳,男性338名・女性1099名)であった. 2stepsテストは最大に2歩前進した距離を計測する方法であり,その後身長で正規化した.FRは両上肢を肩関節90°屈曲し,両肘伸展位で出来るだけ前方にリーチさせたときの指先の移動距離を測定した.今回は上記の項目のうち年齢における差をFR,2stepsテストの2項目について検討した.統計処理は年齢とFR,2 stepsテストの関係をPearsonの積率相関係数を用いて分析し,また30~90歳までを5歳毎に分類し,その分類でFRと2stepsテストに一元配置分散分析を行い,その後の検定としてTukeyの検定,サブグループの作成を行った.危険率は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】測定に参加する県民には文章ならびに口頭にて十分な説明を行い参加する意志を確認した上で,測定を行った.また,測定会運営スタッフに対しては事故対応としてスポーツ健康増進支援部でイベント保険に加入した.【結果】年齢とFR,2stepsテストでは,FRはr=-0.45,2stepsテストではr=-0.46と有意な負の相関があった.各年代とFRは近い年代で有意な差を認めるのは60~64歳と,65歳~69歳の間であり,6つのサブグループに分かれ若年者との境の年代は50~54歳の世代となった.各年代と2stepsテストは近い年代で有意な差を認めるのは65~69歳と,70歳~74歳の間であり,6つのサブグループに分かれ若年者との境の年代は45~49歳の世代となった.どちらのテストも65歳以上は細かなサブグループに分割され,年齢の上昇とともに数値が低下していた.【考察】年齢と2stepsテスト・FRには,有意な負の強い相関が認められ,年齢とともにバランス能力が低下していることが示唆された.また,各項目とも65歳以上にサブグループが細かく分類され,バランス能力の低下が急激に進行していることが考えられる.特にFRでは60~64歳,2stepsテストでは65~69歳で次の年代と比較して急激にバランス能力の指標でもある両項目とも低下しており,その急激に低下する以前の60歳前半で予防的に運動介入することに意義があると考えられる.また,その急激になる以前のグループの区切れの年代はFRで50~54歳,2stepsテストで45歳~49歳となり,この年代より段階的に運動指導を実施して,65歳以降の転倒を未然に防ぐことが可能ではないかと考えられる.このように幅広い年代のデータを集積することで,バランス能力の低下だけではなく,急激に低下をする年代の発見につながり,ロコモティブシンドロームなどに対する予防的な取り組みを段階的に各年代にそった運動プログラム作成への足掛かりとして進めていきたいと考えている.【理学療法学研究としての意義】理学療法士が国民の健康寿命延伸や,転倒予防活動に積極的に参加することで理学療法士の認知向上はもとより.理学療法士の知識技術が健康増進分野へも十分寄与することが示唆され,予防分野への職域拡大に貢献すること考える.また,測定会を継続することによって,千葉県民各年代の転倒リスク,運動機能の指標が示され,行政施策の中で理学療法士として役割が求められると考える.
著者
笠井 将也 葛山 元基 佐藤 謙次 岡田 亨
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101956, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】 足関節捻挫は整形外科領域において多い疾患であり、それに対する理学療法評価の1つに足圧中心(COP)が用いられることがある。足関節捻挫受傷患者は歩行時にCOPが外側偏位しやすいとの報告が散見されるが、歩行の立脚期を相分けし、COPの偏位を詳細に検討した報告は少ない。そこで本研究の目的は足関節捻挫受傷患者における歩行時のCOPの偏位を詳細に検討することとした。【方法】 対象は、当院リハビリ通院患者で過去1年以内に足関節捻挫を受傷した11名、11肢(捻挫群:男性6名、女性5名、平均年齢24.4±10.2歳、平均身長168.5±12.8cm、平均体重64.4±17.2kg、受傷後平均60.1±70.3日)、および下肢疾患の既往のない健常者19名、19肢(対照群:男性9名、女性10名、平均年齢27.2±5.1歳、平均身長165.6±8.1cm、平均体重58.1±9.3kg)とした。捻挫群では両側受傷例および炎症所見、歩行時痛のある者は除外し、対照群は全例右足の測定および解析を行った。全対象者に対し、足圧分布測定装置winpod (Medicapteures社製)を用いて歩行時の足底圧分布、COPをサンプリング周期150Hzにて計測した。歩行路上にセンサープレートを設置し、被験者には5歩目がセンサープレートを踏むように指示し、数回の練習の後に計測を行った。計測時の歩行速度は自由速度とし、裸足にて3回計測を行い、平均値を解析の対象とした。解析方法はSelby-Silversteinらの方法に準じ、パソコン上でwinpod描画ツールを用い、得られた足底圧分布図の外周に枠を作図した。その後足底圧分布図を前後方向に3等分し、枠内に3等分線を作図した。COPの始点をFoot contact(FC)、3等分線とCOPの交点をそれぞれEarly-midsupport(EM)、Late-midsupport(LM)、COPの終点をToe off(TO)と設定した。次に、外枠の内側線から各点(FC、EM、LM、TO)までの最短の距離と、外枠の内側線から外側線までの距離を計測した。得られた内側線から各点の距離を、内側線から外側線の距離で除した値をpronation-spination index(PSI)とした。検討項目は各点のPSIとし、これを捻挫群と対照群で比較した。統計処理はSPSS ver.12を用い、Mann-WhitneyのU検定を使用し、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は船橋整形外科病院倫理委員会の承認を受け、被験者には研究の主旨と方法について十分な説明をし、承諾を得て実施した。【結果】 各測定点のPSI平均値は、FCにおいて捻挫群62.9±6.8%、対照群51.7±3.7%であり捻挫群で有意に高値を示した(p=0.000)。EMにおいて捻挫群60.3±10.1%、対照群49.4±5.6%であり捻挫群で有意に高値を示した(p=0.002)。LMにおいて捻挫群53.0±9.3%、対照群47.5±5.5%であり捻挫群で有意に高値を示した(p=0.020)。TOにおいて捻挫群30.2±8.2%、対照群26.7±8.0%であり両群間に有意差はなかった(p=0.279)。【考察】 PSIが高値を示すほどCOPの外側偏位を表している。本研究において、捻挫群では対照群と比較し、有意にPSIが高く、COPが外側に偏位していた。このことから足関節捻挫受傷患者は歩行時のCOPが外側へ偏位するとした過去の報告を支持する結果となった。また本研究では歩行の立脚期をFC、EM、LM、TOの4期に分けてより詳細に検討した。その結果、FC、EM、LMにおいて有意差を認めたが、TOでは有意差は認められなかった。したがって、足関節捻挫受傷患者は歩行時において、踵接地から外側に荷重し、足指離地では正常に戻ることが示された。足関節捻挫により前距腓靭帯や踵腓靭帯の機能が低下し、後足部が回外位になりやすく、後足部の回内制限を前足部で代償するためこのような結果につながったと考える。【理学療法学研究としての意義】 足関節捻挫により立脚前期から中期にCOPが外側へ偏位しやすいことが明らかとなった。特に後足部が回外位をとりやすいと考えられ、捻挫の再受傷の危険性が増加する可能性がある。今後理学療法を展開する上で、COPを評価の一助とするとともに、立脚前期からの過度な外側荷重を内側へ誘導するアプローチを検討していく必要があると考える。
著者
野田 将史 佐藤 謙次 斉藤 明子 日詰 和也 印牧 真 黒川 純 岡田 亨
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cb0486, 2012

【目的】 ブリッジ運動は下肢筋群の筋力強化として臨床で広く活用されており,これに関する報告は散見される.しかし,両脚ブリッジ運動における股関節外転および膝関節屈曲角度の違いが下肢筋群筋活動に及ぼす影響は明らかにされていない.本研究の目的は,両脚ブリッジ運動において最も効率良く筋力強化を行う肢位を検討することである.【方法】 対象者は,下肢疾患の既往の無い健常成人15名(男性9名,女性6名,平均年齢27.4歳,平均身長166.4cm,平均体重62.7kg)であった.測定方法は,表面筋電計はマイオトレース(Noraxon社製)を用い,大殿筋・中殿筋・内側ハムストリングス・外側ハムストリングスの4筋を導出筋とした.電極貼付部位は,大殿筋は大転子と仙椎下端を結ぶ線上で外側1/3から二横指下,中殿筋は腸骨稜と大転子の中点,内側ハムストリングスは坐骨結節と脛骨内側顆の中点,外側ハムストリングスは坐骨結節と腓骨頭の中点とした.十分な皮膚処理を施行した後,各筋の筋腹に電極中心距離2cmで表面電極を貼り付け,動作時における筋電波形を導出した.アースは上前腸骨棘とした.測定値は最大随意収縮(MVC)で正規化し%MVCとした.MVCの測定はダニエルズのMMT5レベルの測定肢位において5秒間の等尺性最大収縮とした.測定条件は,MVC測定後5分間の休息を設け,次の条件における各筋の筋活動を1肢位あたり2回測定しその平均値を分析に用いた.測定時間は5秒間とし中3秒間を解析に用いた.尚,条件の測定順序は無作為とした.測定肢位は,両足部内側を揃え股関節軽度内転位とし膝関節120度屈曲位でのブリッジ運動(股内転膝屈曲120°),膝関節90度屈曲位でのブリッジ運動(股内転膝屈曲90°),膝関節60度屈曲位でのブリッジ運動(股内転膝屈曲60°),両足部を肩幅以上に開き股関節外転20度とし膝関節120度屈曲位でのブリッジ運動(股外転膝屈曲120°),膝関節90度屈曲位でのブリッジ運動(股外転膝屈曲90°),膝関節60度屈曲位でのブリッジ運動(股外転膝屈曲60°)の6肢位とした.また,運動時は股関節屈曲伸展0度になるまで挙上するよう指示し,測定前に練習を行い代償動作が出現しないよう指導した.統計学的分析にはSPSS ver.15を用い,一元配置分散分析および多重比較により筋毎に6肢位の%MVCを比較した.また,有意水準は5%とした.【倫理的配慮,説明と同意】 本研究は当院倫理委員会の承認を得た上で,各被験者に研究に対する十分な説明を行い,同意を得た上で行った.【結果】 各動作における%MVCの結果は以下の通りである.大殿筋では,股外転膝屈曲120°は股内転膝屈曲60°と股内転膝屈曲90°よりも有意に高値を示したが,その他の有意差は認められなかった.中殿筋では,すべてにおいて有意差は認められなかった.内側ハムストリングスでは,股外転膝屈曲120°は股内転膝屈曲60°と股外転膝屈曲60°と股内転膝屈曲90°と股外転膝屈曲90°よりも有意に低値を示した.股内転膝屈曲120°は股内転膝屈曲60°と股外転膝屈曲60°よりも有意に低値を示した.その他の有意差は認められなかった.外側ハムストリングスでは,股内転膝屈曲60°は股内転膝屈曲90°と股外転膝屈曲90°と股内転膝屈曲120°と股外転膝屈曲120°よりも有意に高値を示した.股外転膝屈曲60°は股内転膝屈曲90°と股外転膝屈曲90°と股内転膝屈曲120°と股外転膝屈曲120°よりも有意に高値を示した.股内転膝屈曲90°は股外転膝屈曲120°よりも有意に高値を示した.その他の有意差は認められなかった. 【考察】 今回,各動作時における%MVCの結果から,大殿筋では股関節内転位よりも外転位,膝関節軽度屈曲位よりも深屈曲位の方が有意に高値を示した.内外側ハムストリングスでは,膝関節深屈曲位よりも軽度屈曲位の方が有意に高値を示した.この結果から,ブリッジ運動を行う際は,大殿筋に対しては股関節外転位+膝関節深屈曲位,ハムストリングスに対しては内外転を問わず膝関節軽度屈曲位に設定することで効率が向上されることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 臨床で頻繁に処方する両脚ブリッジ運動の最も効率よい肢位が判明することで,患者への運動指導の際その肢位を活用し運動指導することができる.
著者
佐久間 孝志 平尾 利行 妹尾 賢和 岡田 亨 白土 英明 老沼 和弘 阿戸 章吾
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第27回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.15, 2008 (Released:2008-08-01)

【はじめに】 股関節の安定化機構として、解剖学的・力学的知見から、股関節深層筋は力学的支持という役割だけでなく、関節運動の誘導を担っている可能性があることが推測される。その中で股関節深層筋のトレーニングはいくつか紹介されているが、いずれも実際に股関節深層筋の収縮を検証している報告は少ない。そこで今回は股関節深層筋である小殿筋に着目し、小殿筋が収縮しやすい股関節肢位および負荷量について検討した。 【対象】 対象は本研究に同意を得た股関節に既往のない健常男性10名とした。 平均年齢25.3歳、平均体重63.8kg、BMI21.8であった。 【方法】 被検者に側臥位をとらせ、膝関節伸展位、股関節内外転・内外旋中間位にて、屈曲30度、0度、伸展10度の3肢位にて等尺性股関節外転運動を行った。それぞれにおいて低負荷運動と高負荷運動を行わせ、各肢位での小殿筋の収縮を測定した。測定には超音波画像診断装置 GE横河メディカルシステム LOGIQ BOOK を用い、MRI画像より大転子と腸骨稜を結んだ線上の近位1/3、および上前腸骨棘と後上腸骨棘を結んだ前方1/3を小殿筋の測定箇所として固定した。また検者は同一としプローブを固定する者1名、抵抗を加える者1名として測定を行った。 得られた画像から安静時と収縮時における小殿筋の厚みを計測し、収縮時の厚みを安静時の厚みで除すことで収縮率を算出した。統計処理はTukeyの多重比較および対応のあるT検定を用い、有意水準5%未満とした。 【結果】 低負荷運動時においては伸展10度での収縮率が屈曲30度、屈曲0度のときよりも有意に高値を示した。高負荷運動時では、股関節屈曲角度の違いによる収縮率の変化はみられなかった。各股関節屈曲角度における低負荷運動と高負荷運動時における収縮率を比較すると、伸展10度のときのみ低負荷運動で有意に高値を示した。 【考察】 今回の結果から、股関節伸展位および低負荷運動にて有意に高い収縮率を認めた。これは小殿筋の走行から股関節伸展位では股関節軸より後方に位置するため、股関節屈曲位よりも股関節伸展位で外転筋として作用しやすくなり高い収縮率を認めたものと考える。また、股関節深層筋には遅筋線維の割合が高いことが報告されていることから、低負荷運動の方が有意に高い収縮率を認めたものと考える。今後、さらに本研究を踏まえ股関節深層筋トレーニングの有効性を検討していきたい。
著者
仲島 佑紀 小林 雄也 高村 隆 岡田 亨 戸野塚 久紘 高橋 憲正 菅谷 啓之
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.78, 2011

【目的】<BR>少年期の野球肘内側障害(以下、内側型野球肘)において、一般に画像上の異常所見により長期の投球禁止となる場合が少なくない。当院では早期より理学療法を施行することで安静期間の短縮を図ってきた。本研究の目的は少年期の内側型野球肘における、画像所見の違いによる競技復帰への影響を調査することである。<BR>【対象】<BR>2005年1月から2010年8月までに当院を受診した小中学生野球選手で内側型野球肘と診断され、競技復帰までの経過観察が可能であった症例のうち、明らかな画像上の異常所見を認めなかった144例をN群、内側上顆骨端核の裂離を有していた248例をS群とした。画像所見における分類は、当院放射線技師により撮影された初診時X線所見を主治医が診断したものを用いた。医師の指示の下、全例初診時より投球禁止と共に理学療法を直ちに施行した。なお、上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の合併例は除外した。<BR>【方法】<BR>N群、S群における競技完全復帰率を算出した。さらに両群を完全復帰群(C群)、不完全復帰群(I群)に分類し、N-C群・N-I群・S-C群・S-I群の初診時と復帰時における身体機能の群内比較を行った。、次に復帰時の身体機能、ならびに復帰までの期間N-C群とN-I群、S-C群とS-I群で比較した。身体機能は肘関節可動域、肩甲帯機能(CAT・HFT)、股関節機能(SLR・HIR・HBD)評価を用いた。統計学的処理にはMann-Whitney U検定、Wilcoxon符号順位検定を用いた。なお本研究には当院倫理委員会の承認を得て行った。<BR>【結果】<BR>完全復帰率はN群82%、S群87%であった。N-C群、S-C群においてCAT・HFT・SLR・HIRが初診時よりも有意に改善していた(p<0.01)。N、S群ともにC群がI群に比しCAT・HFT・SLR・HIRが有意に大きかった(p<0.05)。復帰までの期間はN-C群:7.0±4.4週、N-I群:3.1±2.7週、S-C群:7.8±4.5週、S-I群:3.8±4.7週であった。<BR>【考察】<BR>今回の調査では画像所見にかかわらず競技完全復帰は7~8週で80%以上が可能であった。内側型野球肘の投球禁止期間は緒家により様々だが、安静期間における身体機能改善を目的とした理学療法アプローチは、競技復帰への重要な要素であるといえる。I群は機能改善が不十分かつ復帰までの期間が短く、コンプライアンスの悪い例であったと考えられる。競技復帰において画像所見は必ずしも影響するとは言えず、身体機能も含めた包括的な評価により投球再開を医師とともに協議し、症例に呈示していく必要があると思われる。
著者
亀山 顕太郎 高見澤 一樹 鈴木 智 古沢 俊祐 田浦 正之 宮島 恵樹 橋川 拓人 岡田 亨 木島 丈博 石井 壮郞 落合 信靖
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1000, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】成長期の野球選手において野球肘の有病率は高く予防すべき重要課題である。その中でも離断性骨軟骨炎(以下,OCD)は特に予後が悪く,症状が出現した時にはすでに病態が進行していることが多いため,早期発見することが重要である。OCDを早期発見するためにはエコーを用いた検診が有効であり,近年検診が行われる地域が増えている。しかし,現状では現場に出られる医師数には限界があり,エコー機器のコストも考慮すると,数十万人といわれる少年野球選手全体にエコー検診を普及させるのは難しい。もし,エコー検査の前段階に簡便に行えるスクリーニング検査があれば,無症候性のOCDを初期段階で効率的に見つけ出せる可能性が高まる。本研究の目的は,問診・理学検査・投球フォームチェックを行うことによって,その選手のOCDの存在確率を推定し,二次検診が必要かどうかを判定できるスクリーニングシステム(以下OCD推定システム)を開発することである。【方法】調査集団は千葉県理学療法士会・スポーツ健康増進支援部主催の「投球障害予防教室」に参加した小中学生221名とした。この教室では問診・理学検査20項目・投球フォームチェック5項目の他に医師による両肘のエコー検査が行われた。OCDが疑われた選手は病院での二次検査に進み,そこでOCDか否かの確定診断がなされた。上記の記録をデータベース化し,OCDの確定診断がついた選手と有意に関連性のある因子を抽出した。この抽出された因子をベイズ理論で解析することによって,これらの因子から選手一人一人のOCDの存在確率を推定するシステムを構築した。推定されたOCDの存在確率と実際のデータを照合し,分割表を用いてシステムの妥当性を評価した。【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ条約に基づき,事前に各チームの監督,保護者に対して検診の目的,内容について説明し同意を得た。また,「プライバシーの保護」「同意の自由」「参加の自由意志」を説明し,協力・同意を得られなかったとしても,不利益は生じないことを記載し当日文書にて配布した。【結果】221名中17名(7.7%)の選手が,エコー上で骨頭異常を認め二次検診を受けた。結果,4名(1.8%)の選手がOCDと確定診断された。OCDに関連性の高かった問診項目は「野球肘の既往があること」「野球肩の既往がないこと」であり,理学検査項目は「肘の伸展制限があること」「肘と肘をつけた状態で上肢を鼻の高さまで上げられないこと(以下 広背筋テスト)」「非投球側での片足立ちが3秒間安定できないこと」,投球フォームチェックでは「投球フォームでの肩肩肘ラインが乱れていること(以下 肘下がり)」であった。これらの因子から選手一人一人のOCDの存在確率をベイズ理論を用いて推定した。推定したOCD存在確率のcut off値を15%に設定し,二次検査が必要か否かを判別し,実データと照らし合わせたところ,感度100%,特異度96.8%,陽性的中率36.4%,陰性的中率100%,正診率96.8%と高精度に判別できた。【考察】本システムは,OCDの危険因子を持った選手を抽出し,その存在確率を推定することによって,危険性の高い選手にエコー検査を積極的に受けるように促すシステムである。このシステムでは問診や理学検査を利用するため,現場の指導者でも簡便に使うことができ,普及させやすいのが特徴である。こうしたシステムを用いることで,選手や指導者のOCDに対する予防意識を高められるという効果が期待される。本研究でOCDと関連性の高かったフィジカルチェック項目は,投球フォームでの肘下がりや非投球側の下肢の不安定性,肩甲帯・胸椎の柔軟性を評価するものが含まれている。こうした機能の低下はOCDに対する危険因子の可能性があると考えられた。今後普遍性を高めるために,他団体とも連携し縦断的かつ横断的観察を進めていく予定である。【理学療法学研究としての意義】OCD推定システムを開発し発展させることで,理学療法士がOCDの予防に貢献できる道筋を開ける。今後,より簡便なシステムを確立し,無症候性のOCDを高精度にスクリーニングできれば,より多くの少年野球選手を障害から守ることが可能になる。
著者
梅原 肖美 脇元 幸一 岡田 亨 斉藤 仁 佐々木 紗英
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.H1046-H1046, 2004

【目的】<BR>我々は、2002年6月よりN高校アメリカンフットボール部に対して、医科学的サポートを実施している。今回、傷害調査とフィジカルチェックを通して、オフェンス(以下OF)・ディフェンス(以下DF)別の受傷機転と身体能力の関連性について以下に報告する。<BR>【対象】<BR>2002年6月~2003年11月にN高校アメリカンフットボール部に在籍し、ライン以外のポジションの選手、延べ29名、平均年齢16.4歳を対象とした。<BR>【方法】<BR>傷害調査は、2003年1月から10月の期間、聞き取り調査を実施した。調査結果より、傷害で1日以上練習を制限、または試合を欠場した選手の受傷機転を調べた。受傷機転は1対1のコンタクト時を単数群、密集や、1対複数の受傷を密集群とし発生傾向を調査した。<BR>フィジカルチェックは、年に2回6、10月に実施した。項目は、以下のとおりとした。身体計測「体重・体脂肪・筋力量」、柔軟性測定「指床間距離;Finger-Floor-Distance以下FFD、下肢伸展挙上;Straight-Leg-Raising以下SLR、踵殿間距離;Heel-Buttock-Distance以下HBD」、筋力テスト「等尺性膝伸展筋力、等速性膝伸展筋力;以下60deg/sec(peak-Torque/Body-Weight)」。結果は,Wilkcoxonの符号順位和検定を用いた。<BR>【結果】<BR>傷害調査結果、対象は31件だった。その中でポジション別、受傷機転別での傷害発生は、OFは単数群7件、密集群5件、DFは単数群12件、密集群5件であった。フィジカルチェックの結果によるOFとDF間の違いは、体重OF:62kg、DF:61kg、体脂肪率はOF:13.7%、DF:13.9%、SLR:はOF:84°、DF:86°、HBDはOF:8.6cm、DF:8.9cm、等尺性膝伸展筋はOF:111.0kg/kg、DF:102.9kg/kg、60deg/secは、OF:99%、DF:101%、と有意差は認められなかった。<BR>【考察】<BR>傷害調査より、OFはDFより1対複数のコンタクトによる受傷が多い傾向にあった。これは、OF選手がタックルの対象になるため、多数の選手より大きな外力を受ける結果と考えられる。また、フィジカルチェックでは、OF・DF間に有意差はなく、身体特性と受傷機転には関連性が認められなかった。これには、競技年数が浅く初心者が多いことから各ポジションにおける身体能力の確立が十分でないことが原因として考えられる。このため、選手の身体能力の状況とポジション別の障害発生の傾向を十分理解し、現場のリスクマネージメントと競技力向上に協力していくことが重要と考える。
著者
葛山 元基 小山 泰宏 岡﨑 久美 高村 隆 岡田 亨
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C3O1105-C3O1105, 2010

【目的】<BR>臨床において,上腕三頭筋のMMTでの筋力は問題ないにもかかわらず,投球障害肘や離断性骨軟骨炎を有する野球選手において肘関節の伸展が困難な例を少なからず経験する.我々は,上腕三頭筋内側頭,上腕三頭筋外側頭は伸展・内転方向に従って筋出力が高くなること,また,肩関節挙上角度が増すに従い筋出力が小さくなることを示した.そこで,本研究では,野球経験(中学・高校の部活動レベル以上)の有無により,肩関節肢位の違いにおける上腕三頭筋内側頭,外側頭の筋活動に変化があるかを検討し,また競技に伴う特徴的な筋活動があるかを筋電図学的に検討することである.<BR>【方法】<BR>対象は肩・肘関節に手術歴・可動域制限がなく,日常生活において疼痛のない健常人男性21名(平均年齢26.3±3.1歳,身長171.6±4.9cm,体重66.3±8.0kg)であり,内訳は野球経験のある9名の投球側,非投球側,野球経験のない12名の利き手(コントロール側)の3群とした.<BR>肩関節の挙上角度が異なる肢位において,1kgの重錘を負荷とし,前腕が常に抗重力位になる肢位を基本肢位とした.基本肢位から肘伸展運動を行い,肘関節伸展-20度での等尺性収縮を表面筋電図にて測定した.測定筋は上腕三頭筋内側頭,上腕三頭筋外側頭,棘下筋,三角筋後部線維の4筋である.測定機器は,Noraxon社製表面筋電図myosystem1400を使用し,十分な皮膚処理後に電極を貼付した.測定肢位は,解剖学的肢位を基準として,前額面上4肢位(肩関節最大屈曲位,屈曲90度位,屈曲0度位,伸展-20度位)と,矢状面上2肢位(最大外転位,外転90度位)の計6肢位で行った.解析区間は,等尺性収縮5秒間の内,2~4秒の3秒間とした.また,各筋の平均を算出し,3回測定の平均値を求め,DanielsらのMMT3遂行時の平均筋活動にて除して標準化(%RVC)を行った.統計学的処理は,SPSSver12.0を使用し,2元配置分散分析(多重比較法:Tukey法)を用いて投球側,非投球側,コントロール側の3群と肢位別での比較を行い,有意水準は5%とした.<BR>【説明と同意】<BR>本研究は,船橋整形外科病院倫理委員会の承諾を得た後に行われた.被験者に対しては,本研究における評価内容,皮膚処理時のリスクについて十分な説明を行い,同意を得た対象のみ測定を施行した.<BR>【結果】<BR>肩関節挙上角度と角筋%RVC<BR>a上腕三頭筋内側頭について<BR>投球側,非投球側,コントロール側の3群による筋活動は共に投球側が有意に高い結果となり(P<0.01),平均値は,最大屈曲位において投球側94.5±40.5,非投球側66.5±28.3,コントロール側67.5±36.8,最大外転位では投球側101.5±55.8,非投球側83.5±45.6,コントロール側84.8±43.1であった.肢位においては,伸展20度位242.9±152.1,0度屈曲位218.9±150.1,90度外転位138.4±42.5,90度屈曲位105.1±56.6,最大外転位82.6±49.2,最大屈曲位80.5±38.2の順で高値を示した(P<0.01).<BR>b.棘下筋について<BR>投球側,非投球側,コントロール側の3群による筋活動に有意な差は見られなかった(P=0.94).肢位による違いでは,最大屈曲位74.1±35.4,最大外転位46.8±15.3,伸展20度位38.1±18.7,屈曲0度位28.4±15.6,90度屈曲位24.2±14.1,90度外転位24.1±18.7の順で高値を示した(P<0.01)<BR>【考察】<BR>棘下筋の筋活動は挙上角度が増すにつれて優位に高くなっていたが,投球側,非投球側,コントロール側の3群においての有意な差は見られなかった.我々は,上腕三頭筋の筋活動は内転方向かつ伸展方向で高値を示すこと,挙上角度や外転角度が増すにつれて低値となることを示したが,野球経験者においては投球側の筋活動が非投球側,野球未経験者であるコントロール側より大きく,挙上位での上腕三頭筋筋活動は繰り返しの投球により運動学習されたものであることが示唆された.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>野球経験者の上腕三頭筋内側頭の筋活動は反復された運動学習によって獲得されたものであると考えられた.そのため,投球障害肘や離断性骨軟骨炎を有する野球選手の治療の一手段として腱板機能改善と共に挙上・外転位での上腕三頭筋の筋収縮を促し,運動学習をさせることは競技復帰への重要な要素であると考える.
著者
林 一也 鈴木 敦子 津久井 亜紀夫 高松 直 内藤 功一 岡田 亨 森 元幸 梅村 芳樹
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.589-596, 1997-07-15
被引用文献数
6

The characteristic anthocyanin, vitamin C, dietary fiber and sucrose contents of new types of colored potatoes were studied. The total dietary fiber level in the violet, red and yellow potatoes w[ere 0.75, 0.66 and 0.85o%, respectively. The total vitamin C contents of the violet, red and yellow potatoes were 25.3, 14.l and 31.5mg/100 g, respectively, while the anthocyanin contents of the violet, red and yellow potatoes were 142,148 and 17 mg/100 g, respectively. The main anthocyanin structures in the violet and red potatoes were determined to be petanin and pelanin by FAB-M S and ^1 H-NM R analysis. The red potato anthocyanin was very stable to heat and UV irradiation. Sucrose in the red and yellow potatoes increased during low-temperature storage.