- 著者
-
黒沢 令子
長谷川 理
泉 洋江
越川 重治
- 出版者
- 特定非営利活動法人バードリサーチ
- 雑誌
- Bird Research
- 巻号頁・発行日
- vol.3, pp.A19-A25, 2007
- 被引用文献数
-
1
2006年初頭に北海道の中央地域でスズメが大量死し,個体数が減少した.そこで市民が気軽に参加できるような簡易定点調査法により,その後のスズメの個体群動態のモニタリングを開始した.積雪地域(北海道など)と雪のない地域(関東地方)の違いや季節および,餌やりの影響を比べたところ,スズメの出現数は平均3.6~3.8羽(0.78ha)で,両地域に差はなかった.季節別にみても夏と冬ともに平均3.6羽で差はなかった.一方,北海道の同一地点において,季節別に冬期の餌やりの交互作用をみると,冬期に餌やりのある地点では,冬期のスズメの数が有意に多く,餌やりのある場所にはスズメが集中することが裏付けられた.このような状態は感染症が発生した場合には水平感染が起きやすくなるので,2005/06年のような大量死を引き起こす要因になりうる.それを避けるためには,餌やりは最小限にして過密状態を避け,餌台の衛生管理の徹底を呼びかける必要があるだろう.市民参加による調査は,簡便さが要求される一方,精度にバラつきが生じやすいことと,さらに検討できる要因を増やすために調査地点数を増やすことが課題である.スズメのような身近な鳥は,人間の近くに住むので,環境の健全性を見守る指標として利用できることから,学校や自然教育における応用が期待される.