著者
植田 睦之
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.3, pp.A11-A18, 2007

環境省が行なった「ガンカモ科鳥類の生息調査」の結果と気象庁による積雪の深さと最低気温の記録をもちいて北海道,東北地方,中部地方日本海側で越冬するハクチョウ類とカモ類の越冬数におよぼす積雪や気温の影響について解析した.北海道のカモ類を除き,ハクチョウ類もカモ類も年々記録数が増加する傾向があった.気象要因については,東北および中部地方の日本海側の地域では,ハクチョウ類は気温の,カモ類は積雪の影響を強く受けることがわかった.気温は開水面の凍結を通してねぐらや休息地の状況に影響を与え,積雪は水田などの採食地での食物の採りやすさに影響を与えると考えられる.したがって,ハクチョウ類は給餌への依存度が高く,止水域をおもな生息地としているために気温の影響を強く受け,カモ類は,水田などが重要な採食地になっているので,積雪による影響を強く受けると考えられる.
著者
渡辺 朝一
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.5, pp.S11-S15, 2009

越冬期前半の2004年12月11日と,越冬期の後半の2005年 2月26日に,越後平野水田において,コハクチョウが水田面と畦畔をどのように利用しているかを調査した.その結果,コハクチョウは採食地として,越冬期の前半も後半も水田面を選好している可能性が示された.
著者
黒沢 令子 長谷川 理 泉 洋江 越川 重治
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.3, pp.A19-A25, 2007
被引用文献数
1

2006年初頭に北海道の中央地域でスズメが大量死し,個体数が減少した.そこで市民が気軽に参加できるような簡易定点調査法により,その後のスズメの個体群動態のモニタリングを開始した.積雪地域(北海道など)と雪のない地域(関東地方)の違いや季節および,餌やりの影響を比べたところ,スズメの出現数は平均3.6~3.8羽(0.78ha)で,両地域に差はなかった.季節別にみても夏と冬ともに平均3.6羽で差はなかった.一方,北海道の同一地点において,季節別に冬期の餌やりの交互作用をみると,冬期に餌やりのある地点では,冬期のスズメの数が有意に多く,餌やりのある場所にはスズメが集中することが裏付けられた.このような状態は感染症が発生した場合には水平感染が起きやすくなるので,2005/06年のような大量死を引き起こす要因になりうる.それを避けるためには,餌やりは最小限にして過密状態を避け,餌台の衛生管理の徹底を呼びかける必要があるだろう.市民参加による調査は,簡便さが要求される一方,精度にバラつきが生じやすいことと,さらに検討できる要因を増やすために調査地点数を増やすことが課題である.スズメのような身近な鳥は,人間の近くに住むので,環境の健全性を見守る指標として利用できることから,学校や自然教育における応用が期待される.
著者
水田 拓
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.3, pp.T21-T28, 2007

マダガスカル共和国アンカラファンツィカ国立公園において,2004年と2005年に温度データロガーを用いてマダガスカルサンコウチョウの巣の捕食者と捕食時間帯の特定を試みた.温度データロガーの設置と並行してビデオカメラによる捕食現場の撮影を行なった結果,ブラウンキツネザル,シロハラハイタカ,ゴノメアリノハハヘビの 3種の捕食者が特定された.ブラウンキツネザルとシロハラハイタカは夕方に,ゴノメアリノハハヘビは夜間に巣の卵やヒナを補食していた.巣の内部の測定温度は,これらの種による捕食の後急激に低下していた.ブラウンキツネザルによる捕食では,親が捕食の40分以上前から巣外に出ていたため温度変化は他と少し異なっていたが,温度変化から捕食者の種を特定することはできなかった.巣の捕食は夜間,早朝,夕方に多かったが,抱卵期と育雛期で捕食時間帯に違いは見られなかった.本研究により,捕食時間帯を特定するための温度データロガーを使用することは有効であることが示唆された.