著者
福田 道雄
出版者
Japan Bird Research Association
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.S7-S11, 2013

1996年 3月から2012年 6月までのあいだ,東京湾内の葛西臨海公園の人工なぎさで休息するカワウ <i>Phalacrocorax carbo</i> の羽数を調べた.カワウの羽数は2月から3月に急減し,6月から9月に急増していた.本調査地の周囲でのコロニーを利用しているカワウは冬期は内陸で採食するものが多く,夏期は海で採食するものが多いと考えられることから,休息地を利用する数にこのような季節変化が見られたものと考えられた.2004年7月以降羽数が次第に減少していたが,近隣コロニーの生息数は減少していなかった.これは,採食地や餌資源量が変化したことを示唆していた.朝,正午,夕方に行なった調査のうち,最多羽数が記録されたのは正午の調査であることが多かった.休息地の近隣のコロニーは立ち入り禁止地にあったので,攪乱はほとんどなく,帰還時間の制約がなかった.そのため,休息していたカワウは夕方をまたずににコロニー戻ることができるため,正午が多かったものと考えられた.
著者
平野 敏明
出版者
Japan Bird Research Association
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.A1-A9, 2015

近年,オオセッカが新たに繁殖期に生息するようになった渡良瀬遊水地で,繁殖期の個体数の変化と生息環境について2007年から2014年の繁殖期に調査を実施した.調査地のオオセッカは,2007年から2009年は1-2羽が生息していただけだったが,2010年に8羽,2012年には15羽と,2010年以降急激に増加した.増加の要因は,日本の主要な繁殖地での個体数の増加と調査地における春先の良好なヨシ原の存在が考えられた.渡良瀬遊水地では毎年3月中旬にヨシ焼きが実施されるが,個体数が増加した2010年から2012年はヨシ焼きが中止されたか,または降雨によって良好なヨシ原が残った.調査地におけるオオセッカの生息地点の植生は,青森県仏沼などの高密度生息地と酷似していた.すなわち,ヨシなどの単子葉高径植物の密度が16.2±9.1本/m<sup>2</sup>,高さが209.2±32.7cmで下層にスゲ類が密生している環境であった.渡良瀬遊水地では,オオセッカは調査地の特定の場所に集中してなわばりを占有する傾向があった.これは,本調査地での本種の生息密度が低いためと推測された.
著者
三上 修 三上 かつら
出版者
Japan Bird Research Association
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.S1-S6, 2013

青森県弘前市にて2012年6月から7月にかけて1つがいのアリスイ <i>Jynx torquilla</i> が繁殖した.孵化から巣立ちまでの巣の様子をカメラのインターバルタイマー機能で撮影した.一眼レフカメラに300mmレンズを装着し,15秒に1回のタイムラプスで1日あたり約10時間の撮影を行なった.照度不足と風による振動は撮影成功率を低下させた.6月22日に孵化直後のアリスイのヒナ2羽がみられ,7月13日に1羽が巣立った.育雛期後半は餌を咥えていた写真の枚数はピーク時よりも減ったが,コムクドリに対する警戒と思われる入り口から外を警戒している写真が増えた.餌ははじめアリの繭だったが,途中からアリの成虫や卵も加わった.1回に運んでくる餌量は途中で横ばいになった.
著者
平野 敏明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.A15-A23, 2005 (Released:2005-09-12)
参考文献数
11
被引用文献数
2

2004年12月から2005年 4月上旬にかけて,渡良瀬遊水地の谷中湖で,ヨシなどの背の高い植物が植栽されている浮島がチュウヒの探餌のための環境利用におよぼす影響を調査した.調査は,浮島が設置された方形区(500×500m)と浮島が設置されていない方形区で行なわれた.浮島設置区域では,チュウヒの探餌飛行の頻度は,浮島非設置区域より有意に多かった.また,浮島設置区域において,チュウヒの探餌飛行は,浮島が含まれる方形区の方が,含まれない方形区より有意に多かった.さらに,浮島設置区域とヨシ原に設置された方形区の探餌飛行の頻度は,両者で有意な違いがなかった.調査中,合計17回の狩り行動が観察された.このうち,76.5%は浮島の縁の部分で,17.6%は浮島の上,5.9%は湖上であった.以上の結果から,浮島は,越冬期におけるチュウヒの重要な生息環境となっていると思われる.これは,浮島に植栽されている背の高い植物が,チュウヒの不意打ちハンティングに効果的であることによると考えられる.
著者
植田 睦之 神山 和夫
出版者
Japan Bird Research Association
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.F33-F36, 2014

気候変動に対する鳥類の反応をモニタリングするために2005年に開始した参加型調査「季節前線ウォッチ」により収集したデータである.モズ(高鳴き),ヒバリ,ウグイス,メジロの初鳴き日,ホトトギス,カッコウ,アオバズク,ツバメ,オオヨシキリ,ツグミ,ジョウビタキの初認日,ヒヨドリの秋の渡り開始日,カルガモのヒナの初認情報も収集した.これらのデータを集計することで,どの種も年により初認時期が違うこと,温暖な地域ほど初認時期が早く,寒冷な地域ほど遅いという地理的な差があり,その差は1-2月にさえずりはじめるヒバリやウグイスでは大きく,3-4月に渡来するツバメやオオヨシキリは中くらいで,5月に渡来するホトトギスやカッコウでは小さいことなどがわかった.今後,情報を蓄積していくことで,気候変動の鳥類への影響などを解析することができると思われる.
著者
所崎 聡 江崎 正裕
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.S21-S24, 2015 (Released:2015-12-15)
参考文献数
9

鹿児島県トカラ列島平島でオオジュウイチの鳴き声を観察した.これは日本におけるオオジュウイチの初めての録音観察記録と考えられる.また同所では2012年より4期連続で同種の観察されている.
著者
植田 睦之
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.S19-S22, 2013 (Released:2013-08-30)
参考文献数
10

シジュウカラは主要な捕食者であるツミが繁殖してる林では,飛行形態がツミと似ているキジバトに対して,警戒声を発する頻度がツミの繁殖していない林と比べて高かった.シジュウカラはツミの繁殖している危険度の高い場所では警戒度合を高めていて,キジバトに対しても反応することで,捕食のリスクを低めており,危険度の低い場所では,警戒度合を下げることで警戒のコストを下げておいるのだと考えられた.
著者
高橋 雅雄 宮 彰男 上田 秀雄
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.S15-S18, 2011 (Released:2011-11-16)
参考文献数
14

2011年7月11日に,青森県仏沼湿原にてリュウキュウヨシゴイの声を録音した.本種は日本では主に琉球列島に生息する留鳥であり,本州においては関東甲信越から中国地方において数例の観察記録があるだけである.本報告は,東北地方におけるリュウキュウヨシゴイの初記録である.
著者
植田 睦之
出版者
Japan Bird Research Association
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.A19-A23, 2012

オナガ <i>Cyanpica cyana</i> はツミ <i>Accipiter gularis</i> の防衛行動を利用して捕食を避けるために,ツミの巣のまわりに集まってきて繁殖するが,ツミが巣の直近しか防衛しなくなった2000年代からは,ツミの巣のまわりで繁殖することは少なくなった.しかし,一部のオナガはツミの巣のまわりで繁殖し続けている.なぜ,一部のオナガがツミの巣のまわりで繁殖しているのかを明らかにするため,営巣環境に注目して2005年から2011年にかけて東京中西部で調査を行なった.ツミの巣のまわりのオナガの巣は1990年代よりも葉に覆われた場所につくられるようになり,通常のオナガの営巣場所とかわらなかった.またツミの巣の周囲に好適な巣場所が多くある場所でのみ,ツミの巣のまわりで営巣した.これらの結果は,オナガは1990年代同様,ツミのできるだけそばで繁殖しようとしてはいるものの,当時のように自分たちの巣の隠蔽率を無視してまでツミの巣の近くを選択することはなく,営巣場所選択におけるツミの巣からの距離と隠蔽率の優先順位が逆転したことを示唆している.
著者
三上 修 植田 睦之 森本 元 笠原 里恵 松井 晋 上田 恵介
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.A1-A12, 2011 (Released:2011-05-20)
参考文献数
12
被引用文献数
2

近年,日本国内においてスズメ Passer montanus の個体数が減少していると言われている.その原因はわかっていないが,熊本で行なわれた先行研究では,都市部では農村部とくらべて1つがいが連れている巣立ち後のヒナ数が少なく,都市化にともなう何らかの要因がスズメの減少をもたらしている可能が示唆されている.しかし,この研究は狭い地域で行なわれたものであり,それが本当に日本全体でも起きているかはわからない.そこで2010年にこの研究と同じく,巣立ち後のヒナ数を調べる調査を「子雀ウォッチ」と銘打ち,一般市民に協力してもらう形で全国規模で行なった.その結果,全国から406の記録が集まり,それを解析したところ,巣立ち後の平均ヒナ数は,商業地で1.41羽,住宅地で1.81羽,農村では,2.13羽と,商業地,住宅地,農村の順で多くなった.この結果は前述の先行研究の結果と整合性があり,やはり都市化と関連している何らかの要因が全国規模でスズメの減少要因になっていると考えられる.この子雀ウォッチを今後もつづけ,記録を蓄積することで,スズメの減少要因の解明につながると期待できる.
著者
嶋田 哲郎
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.6, pp.S7-S11, 2010

秋田県北部(小友沼,八郎潟),福島潟,化女沼という国内を代表するヒシクイ <i>Anser fabalis</i> の大規模飛来地で,2008年12月19日,2009年 1月 9日,23日におけるヒシクイの個体数を調べた.12月19日から 1月 9日にかけて福島潟,化女沼で個体数が減少し,秋田県北部で個体数が増加した後,1月23日には秋田県北部での個体数が減少した一方で,福島潟,化女沼それぞれで再び個体数が増加した.1月中下旬,能代の平均気温は0.1~0.5℃であり,降雪量は66~79cmであった.降雪量の増加にともなう採食条件の悪化によってヒシクイは秋田県北部から南下したと考えられる.
著者
平野 敏明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.A35-A46, 2006 (Released:2006-12-25)
参考文献数
14
被引用文献数
2

2005年 5月中旬から 8月下旬,2006年 4月中旬から 8月下旬にかけて,栃木県藤岡町から小山市の渡良瀬遊水地で,カセットテープレコーダーから鳴声を再生してクイナとヒクイナの繁殖期における生息分布,個体数,生息環境の調査を行なった.2005年には110地点,2006年には140地点で鳴声再生を実施した結果,クイナおよびヒクイナの生息が2005年には20地点と 2地点,2006年には16地点と 2地点でそれぞれ確認された.しかし,同一個体の可能性のあるものを除くとクイナは2005年が12羽,2006年が10羽,ヒクイナは2005年,2006年とも 1羽と推定された.クイナおよびヒクイナが生息していた場所は,20cm以下の深さで地表に水があるヨシやスゲ類が繁茂する環境で,下層植物のない乾燥したヨシ原ではまったく記録されなかった.渡良瀬遊水地におけるこれら 2種の生息分布は,著しく限られていた.これは,渡良瀬遊水地の多くが,乾燥したヨシなどの高茎草原からなっていることが理由の 1つと考えられた.クイナ類など湿地性鳥類の良好な生息地を創出するために,人為的な掘削などによる湿地性環境の再生が必要と考えられる.
著者
菊地 正太郎 佐野 清貴
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.3, pp.S7-S10, 2007

主な生息地が沖縄県の石垣島と西表島の 2島に限られているカンムリワシを,その間に位置する竹富島で2005年 1月に観察した.羽衣の状態から前年生まれの幼鳥であると判断した.石垣島か西表島から飛来した迷鳥であると考えられた.
著者
平野 敏明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.1, pp.A25-A32, 2005

2004年 4月から 7月に栃木県宇都宮市において,セキレイ属 3種(セグロセキレイ,ハクセキレイ,キセキレイ)の生息分布と生息環境を比較するために,1984年に行なわれた調査(平野 1985)と同じ場所,同じ方法で調査を行なった.調査地は1984年と同様に500×500mの方形区545個に分けられた.各方形区を優占する環境をもとに建物密集地,住宅地,農耕地,大河川,工業団地,丘陵の 6つに分けると,1984年と比較して建物密集地と住宅地の方形区は増加したが,農耕地と丘陵の方形区は減少していた.セグロセキレイの生息分布とその環境は,1984年と比較して,有意な変化はみられなかった.しかし,ハクセキレイは生息分布と生息環境ともに著しく変化した.すなわち,2004年には1984年にほとんど記録されなかった農耕地や大河川に分布を拡大していた.そのため,セグロセキレイとハクセキレイのあいだに,生息環境に有意な違いはなくなった.このようなハクセキレイの生息分布の変化の原因の 1つとして,調査地の都市化による営巣場所の増加が考えられた.なお,キセキレイでは,生息環境に変化はなかったが,分布は有意に縮小した.
著者
平野 敏明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.A25-A32, 2005 (Released:2005-11-10)
参考文献数
8

2004年 4月から 7月に栃木県宇都宮市において,セキレイ属 3種(セグロセキレイ,ハクセキレイ,キセキレイ)の生息分布と生息環境を比較するために,1984年に行なわれた調査(平野 1985)と同じ場所,同じ方法で調査を行なった.調査地は1984年と同様に500×500mの方形区545個に分けられた.各方形区を優占する環境をもとに建物密集地,住宅地,農耕地,大河川,工業団地,丘陵の 6つに分けると,1984年と比較して建物密集地と住宅地の方形区は増加したが,農耕地と丘陵の方形区は減少していた.セグロセキレイの生息分布とその環境は,1984年と比較して,有意な変化はみられなかった.しかし,ハクセキレイは生息分布と生息環境ともに著しく変化した.すなわち,2004年には1984年にほとんど記録されなかった農耕地や大河川に分布を拡大していた.そのため,セグロセキレイとハクセキレイのあいだに,生息環境に有意な違いはなくなった.このようなハクセキレイの生息分布の変化の原因の 1つとして,調査地の都市化による営巣場所の増加が考えられた.なお,キセキレイでは,生息環境に変化はなかったが,分布は有意に縮小した.
著者
植田 睦之
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.S1-S4, 2012 (Released:2012-04-12)
参考文献数
11

2008年から2010年の3月に北海道小平町において,春期に北へ向かって渡るハシブトガラスとハシボソガラスの飛行位置と個体数,風向を記録した.東よりの風が吹いているときにはカラス類は内陸を渡ることが多く,西よりと北の風の吹いているときには海岸段丘沿いを渡ることが多かった.調査地では西よりの風が吹くと海岸段丘により斜面上昇風が起きる.カラス類はこの斜面上昇風を利用して,渡っていることが示唆される.
著者
植田 睦之 福田 佳弘
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.S21-S26, 2010 (Released:2010-09-13)
参考文献数
5
被引用文献数
4

北海道西部の日本海沿岸において,オジロワシとオオワシの飛行頻度に影響する気象要因を明らかにするために調査を行なった.解析した気象要素は,気圧,気温,降水量,風速,日照量および,風速の西ベクトル(西方向の風の強さ)と北ベクトル(北方向の風の強さ)で,これらとワシ類の飛行頻度とを比較した.その結果,西方向の風の強さがオジロワシ,オオワシの出現頻度に影響していた.調査地では西方向の風が吹くと海岸段丘による斜面上昇風が生じると考えられ,そのため西方向の風が強いとワシ類の出現頻度が高くなるのだと考えられる.
著者
渡辺 美郎 平野 敏明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.A45-A55, 2011 (Released:2011-09-11)
参考文献数
16
被引用文献数
1

繁殖期と冬期のヒクイナ Porzana fusca の生息個体数を調査するために,兵庫県神戸市付近の約43.75km2内の河川や溜池,農地で2009年1月から6月に録音再生法をもちいて調査を行なった.冬期には, 190地点で鳴き声再生した結果,合計76羽(1月)と66羽(2月)のヒクイナが記録された.環境区分ごとの1月と2月の調査地点あたりの個体数は,中規模河川(N=55)が0.62羽と0.62羽,小規模河川(N=49)が0.18羽と0.29羽,池(N=78)が0.41羽と0.23羽,農地(N=7)が0.14羽と0.29羽であった.一方,繁殖期には,合計169地点で調査を行ない,合計81羽(5月)と45羽(6月)が記録された.環境区分ごとの5月と6月の調査地点あたりの個体数は,中規模河川(N=48)が0.79羽と0.46羽,小規模河川(N=49)が0.31羽と0.18羽,池(N=65)が0.38羽と0.17羽,農地(N=7)が0.38羽と0.38羽であった.農地を除く3環境区分の個体数は,冬期および繁殖期とも有意に異なっており,中規模河川がもっとも多く記録された.池の調査地における生息の有無と池の面積および池内の湿地性植物の面積を比較した.ヒクイナの生息が確認された池の面積(±SD)は,2.87±3.62ha(冬期)と2.69±3.20ha(繁殖期),生息が確認されなかった池は2.89±2.72ha(冬期)と3.16±3.16ha(繁殖期)で,両者の間には有意な違いは得られなかった.しかし,ヒクイナが生息していた池の湿地性植物の面積は,0.27±0.21ha(冬期)と0.28±0.22ha(繁殖期)で,生息していなかった池より湿地性植物の面積が有意に広かった.このことから,ヒクイナの生息には湿地性植物の面積が重要であることがわかった.調査地で,越冬期と繁殖期に70羽以上のヒクイナが記録されたのは,調査地には溜池が多くあることで,良好な生息環境が多く存在することが一因になっていると考えられる.
著者
籠島 恵介
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.7, pp.S1-S4, 2011

沖縄本島において,メジロ <i>Zosterops japonica</i> が沖縄原産の植物ノアサガオ <i>Ipomoe indica</i> の花に対して盗蜜を行なうのを観察し,その盗蜜痕を撮影した.今までメジロによる盗蜜の記録のある花はすべて移入種であったのに対し,日本原産種に対して盗蜜が行なわれていたことは,メジロが沖縄島において,古くから盗蜜を行なってきた可能性を示す.また,同属で移入種のモミジヒルガオ <i>I. cairica</i> については,盗蜜行動の連続写真により,その詳細を記録した.ノアサガオへの盗蜜痕と思われるものは8回の調査のうち5回で観察され,323個の花のうち,最大被害率41.18%,平均被害率6.19%であった.モミジヒルガオでは,8回の調査のうち2回観察され,264個の花のうち,最大被害率31.03%,平均被害率5.68%であった.
著者
西 教生 高瀬 裕美
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.4, pp.S1-S8, 2008

2007年 5月中旬から10月中旬にかけて,山梨県都留市においてハシボソガラスおよびハシブトガラスの成鳥の風切羽,尾羽の換羽の調査を行なった.踏査によって落ちている風切羽および尾羽を採集し,定点観察によって飛翔中の個体の風切羽および尾羽の換羽状態を記録した.ハシボソガラスおよびハシブトガラスとも初列風切羽の最も内側の第 1羽から外に向かって換羽を開始し,第 5~第 6羽まで進むと次列風切羽は最も外側の第 1羽から内側に向かって換羽を開始した.ハシボソガラスは 5月下旬から,ハシブトガラスは 6月上旬から風切羽の換羽を開始し,ハシボソガラスは 9月上旬から中旬に,ハシブトガラスは 9月下旬から10月上旬に終了した.尾羽の換羽は初列風切羽の第 4羽が換羽をすると開始され,中央尾羽から外側に向かって換羽を行なった.