著者
三上 かつら 植田 睦之
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.T1-T8, 2016 (Released:2016-04-08)
参考文献数
12

亜種サンショウクイと亜種リュウキュウサンショウクイの音声を比較し,両亜種の違いを記述するとともに,簡便な計測および判別方法を開発した.7つの音声要素に着目し,両亜種の平均値を比較したところ,先頭の周波数,第1音素の最大周波数,最高周波数,最大音圧の周波数,最初の音素の最大周波数から最後の音素の最大周波数を引いた値,計5つの要素で有意な違いがみられた.亜種サンショウクイに比べ,亜種リュウキュウサンショウクイのほうが,全体的に音が高く,音色がフラットまたは尻下がり調子になる傾向があるといえる.線形判別関数の利用および特定の変数の値と95%信頼区間を比較するという2つの方法で、判別方法の実用性を確認した.神奈川県で録音された4例の亜種不明サンプルをこれらの方法で判定したところ,4例すべてが亜種リュウキュウサンショウクイであると判定された.今回用いた方法は録音状況があまり良くない音声記録にも用いることができ,サンショウクイ2亜種の判別に有効だと思われる.
著者
三上 修
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.A1-A8, 2009 (Released:2009-09-16)
参考文献数
13
被引用文献数
4

近年,日本においてスズメ Passer montanus の個体数が減少している可能性が指摘されている.その減少要因について,いくつかの仮説が提示されているが,何が原因かわかっていないのが現状である.減少原因のひとつとして都市環境において,スズメの繁殖がうまくいっていないことが考えられる.そこで,都市部と農村部において,「幼鳥の比率」および,「ひとつがいが面倒をみている巣立ちヒナ数」を比較した.その結果,どちらの値も都市部において低く,予測した通り,スズメの繁殖は,都市部においてうまくいっていないことが示唆された.さらに,後者の値は,都市部において 1羽程度と少なく,都市部では,スズメの増殖率がマイナスになっている可能性も考えられた.都市での繁殖の不振が,スズメの個体数の減少の一要因になっているのかもしれない.
著者
三上 修
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.A19-A29, 2008 (Released:2008-12-26)
参考文献数
12
被引用文献数
1

スズメは日本において最も身近な鳥でありながら,その基礎的な生態についてわかっていないことが多い鳥でもある.本研究では,スズメの最も基礎的なデータの 1つである,日本本土におけるスズメの個体数を推定することを試みた.まず,スズメの生息密度が異なると予測される 5つの環境において(商用地;住宅地;農村;非繁殖地;その他),野外調査によりスズメの巣密度を調査した.そして,それぞれの環境が日本本土に何km2あるのかをGISデータより求め,環境ごとに面積と巣密度を掛け合わせることで,日本本土におけるスズメの全巣数を推定した.その結果,約900万巣という結果が得られた.この値に一夫一妻を仮定して 2倍することで,2008年の繁殖期における日本本土のスズメの成鳥個体数は,およそ1,800万羽と推定できた.成鳥 1つがいあたり,秋までに 3羽の若鳥が生存すると仮定すると,秋には4,500万羽ということになる.なお,この値の取り扱いには注意する必要がある.なぜなら,これらの推定値はいくつかの仮定に基づいているため推定値としては粗いものであり,また実際のスズメ個体数は年によって変動すると推測されるからである.一方で,そのような粗さを考慮に入れても,日本本土における繁殖期におけるスズメの成鳥個体数は,数千万の桁に収まると思われる.
著者
平山 琢朗 牛山 喜偉 長 雄一 浅川 満彦
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.V1-V13, 2014 (Released:2014-05-02)
参考文献数
101

日本で記録された野鳥の感染症・寄生虫病の病原体を体系的に理解することは、保全施策においても重要なツールの一つである.そこでこの総説では、ウイルス、細菌、真菌および原生生物性の病原体の記録情報についてまとめ、それらによる実際の疾病発生を回避する方策について簡単に論述した.
著者
多田 英行
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.S13-S18, 2016 (Released:2016-12-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1

岡山県南部におけるオオセッカの越冬期の生息状況について,2014年3月から2016年4月にかけての越冬期に調査した.調査は錦海塩田跡地,児島湖湖岸,倉敷川河口の3か所のヨシ原で行なった.オオセッカの生息確認にはプレイバック法と定点調査をもちいた.オオセッカは11月下旬から4月中旬に各調査地で1-3羽が確認され,3月下旬から4月中旬には飛翔を伴わないさえずりが確認された.生息環境はスゲなどの下層植生のあるヨシ原で,ヨシの高さは1.9-2.2m,ヨシの生育密度は48-58本/㎡だった.本研究の結果,岡山県南部はオオセッカの越冬地として継続的に利用されていると考えられた.
著者
籠島 恵介
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.S1-S5, 2016 (Released:2016-03-02)
参考文献数
11

沖縄本島において, 南米原産のコガネノウゼン Tabebuia chrysotricha に対するメジロ Zosterops japonicus の吸蜜および盗蜜行動を観察した.メジロは嘴が短く,またホバリングができないため,本来のポリネーターのハチドリとは違って,枝に留まって盗蜜をしていた.メジロは主に萼と花弁の隙間に嘴を入れる盗蜜,および花弁を裂いて行なう盗蜜をしており,後者では送粉が行なわれていると思われる. コガネノウゼンの蜜の糖度は,メジロが良く利用するハイビスカス Hibiscus rosa-sinens およびカンヒザクラ Cerasus campanulata の平均値および最大値を上回っており,食物として大きな価値を持っているように思われた.しかし,本行動は2011年には頻繁に観察されたにも関わらず,2012年,2013年,および2014年には全く観察されなかった.このことは,この植物がメジロの蜜利用を忌避させる可能性のあるフェノール配糖体およびナフトキノンを含んでいるためかもしれない
著者
池田 兆一 土居 克夫 山崎 智子 桐原 佳介
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.S1-S4, 2014 (Released:2014-04-30)
参考文献数
8

2008年から2012年に鳥取県の巣箱で繁殖するブッポウソウのヒナの体重と尾長を測定しヒナの成長過程を把握した.その結果,ブッポウソウのヒナの体重は一度160g位まで増加したが,その後120g前後まで減少した.また,一腹雛の体重と尾長は不揃いなことが多く,その較差には年により差があった.
著者
植田 睦之 島田 泰夫 有澤 雄三 樋口 広芳
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.A9-A18, 2009 (Released:2009-09-16)
参考文献数
12
被引用文献数
1

全国31か所で2001年から運用されているウィンドプロファイラという風を観測するためのレーダーに渡り鳥を中心とした鳥からのエコーが映ることが知られている.そこで,2003年 8月から2007年12月の記録を使って,全国的な渡り鳥の状況について記載した.いずれの地域でも 4月から 6月にかけての春期と 8月から11月にかけての秋期の夜間に「鳥エコー」が多く記録された.またその時期は地域によって異なっており,北の地域は南の地域と比べて春は遅く,秋は早かった.渡りは日没 1~3時間程度後から活発になる日が多く,夜半過ぎからは徐々に少なくなった.春の渡りは秋に比べて,日没後に活発になるまでの時間が早く,秋の渡りでは季節の進行に従って,活発になる時刻の日没後の経過時間が短くなる傾向があった.地域的にみると,春の渡りは日本海側で多く,秋は太平洋側も多いという違いがあった.国外では,レーダーをもちいた渡り鳥の生息状況のモニタリングが行なわれているが,日本でもこのウィンドプロファイラを使うことでそれが可能になると考えられ,標識調査等の情報と合わせることでより意味のあるものにできると思われる.
著者
植田 睦之 馬田 勝義 三田 長久
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.S9-S13, 2011 (Released:2011-09-11)
参考文献数
6

洋上風力発電のバードストライクのリスクの高い種を検討する上の一資料として長崎県池島近海において2009年11月から2011年1月にかけて海上を飛行する鳥類の飛行高度を調査した。海上30m~150mをバードストライクの危険のある高さと想定すると,オオミズナギドリ Calonectris leucomelas,カツオドリ Sula leucogaster,ウミネコ Larus crassirostris はそれより低い高さを,スズメ目の鳥類はそれより高い高さを主に飛ぶため,バードストライクの危険性は低いと考えられたが,ウミウ Phalacrocorax capillatus,セグロカモメ L. schistisagus,ミサゴ Pandion haliaetus,トビ Milvus migrans はバードストライクの危険性が高いと考えられた。
著者
植田 睦之
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.A19-A23, 2012 (Released:2012-04-12)
参考文献数
7

オナガ Cyanpica cyana はツミ Accipiter gularis の防衛行動を利用して捕食を避けるために,ツミの巣のまわりに集まってきて繁殖するが,ツミが巣の直近しか防衛しなくなった2000年代からは,ツミの巣のまわりで繁殖することは少なくなった.しかし,一部のオナガはツミの巣のまわりで繁殖し続けている.なぜ,一部のオナガがツミの巣のまわりで繁殖しているのかを明らかにするため,営巣環境に注目して2005年から2011年にかけて東京中西部で調査を行なった.ツミの巣のまわりのオナガの巣は1990年代よりも葉に覆われた場所につくられるようになり,通常のオナガの営巣場所とかわらなかった.またツミの巣の周囲に好適な巣場所が多くある場所でのみ,ツミの巣のまわりで営巣した.これらの結果は,オナガは1990年代同様,ツミのできるだけそばで繁殖しようとしてはいるものの,当時のように自分たちの巣の隠蔽率を無視してまでツミの巣の近くを選択することはなく,営巣場所選択におけるツミの巣からの距離と隠蔽率の優先順位が逆転したことを示唆している.
著者
福田 篤徳 池長 裕史 伊丹 英生 片山 秀策 小山 慎司 深川 正夫 前田 敦子 前田 崇雄
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.S7-S11, 2016 (Released:2016-05-27)
参考文献数
11

2012年5月20日の石川県輪島市舳倉島にて,カンムリカッコウと思われる声を録音した.この声の声紋を確実な記録と思われるカンムリカッコウやチャイロジュウイチのものと比較することによって,この声がカンムリカッコウのさえずりであると判断した.これは,日本での初めての録音及び記録と思われる.
著者
嶋田 哲郎 藤本 泰文
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.S7-S9, 2009 (Released:2009-06-08)
参考文献数
9

2009年5月1日に内沼で捕獲されたオオクチバス(全長506mm,体重2.4kgのメス)の胃内容物から鳥類1羽,アメリカザリガニ3匹が発見された.未消化の羽毛の大きさや色彩パターン,上嘴や脚の色や形態,露出嘴峰長やふ蹠長などから,捕食された鳥類はオオジュリンと考えられた.
著者
平野 敏明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.A1-A9, 2015 (Released:2015-02-08)
参考文献数
16

近年,オオセッカが新たに繁殖期に生息するようになった渡良瀬遊水地で,繁殖期の個体数の変化と生息環境について2007年から2014年の繁殖期に調査を実施した.調査地のオオセッカは,2007年から2009年は1-2羽が生息していただけだったが,2010年に8羽,2012年には15羽と,2010年以降急激に増加した.増加の要因は,日本の主要な繁殖地での個体数の増加と調査地における春先の良好なヨシ原の存在が考えられた.渡良瀬遊水地では毎年3月中旬にヨシ焼きが実施されるが,個体数が増加した2010年から2012年はヨシ焼きが中止されたか,または降雨によって良好なヨシ原が残った.調査地におけるオオセッカの生息地点の植生は,青森県仏沼などの高密度生息地と酷似していた.すなわち,ヨシなどの単子葉高径植物の密度が16.2±9.1本/m2,高さが209.2±32.7cmで下層にスゲ類が密生している環境であった.渡良瀬遊水地では,オオセッカは調査地の特定の場所に集中してなわばりを占有する傾向があった.これは,本調査地での本種の生息密度が低いためと推測された.
著者
峯岸 典雄
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research
巻号頁・発行日
vol.3, pp.A01-A09, 2007

長野県軽井沢町で1989年より2006年の繁殖期に105日の定点録音を行ない,鳥類の出現状況について解析を行なった.オオルリとハシブトガラスは増加傾向にあったが,それ以外の種は減少傾向にある種が多く,キジ,カッコウ,ツツドリ,クロツグミ,アカハラ,ウグイス,ホオジロ,ノジコ,アオジは調査開始当初は普通に記録されていたにもかかわらず,まったく記録されなくなった.減少した種の多くでは,一度,記録数が増加し,その後減少するパターンがみられた.増減のおきた時期は周囲で開発が行なわれた時期と一致しており,開発により生息できなくなった個体が一時的に調査地に移入し,その後,消失してしまうため,このような増減が起きたのかもしれない.
著者
雲野 明
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.A1-A10, 2012 (Released:2012-03-01)
参考文献数
15

道北にある中川町で2007年12月から2008年11月に,道央の空知地域の森林で2008年5月から2009年11月にクマゲラ Dryocopus martius のプレイバック法をもちいた生息調査を行なった.中川では5,9月を除いてプレイバックをもちいた生息調査でクマゲラを発見した.プレイバック再生前の待機時間,再生中,再生後の待機時間に発見したクマゲラの累積発見率の推移は,単位時間当たり同じ確率で発見するとした期待値とほぼ同じであった.雄も雌もプレイバックに反応した.クマゲラは声にもドラミングにも反応し,どちらによく反応するかは現時点ではわからないので,声とドラミングの混在した音源でプレイバックを行なうことを推奨する.クマゲラの発見率は,季節(春と秋)や日の出からの経過時間により変化することはなかった.プレイバック後に鳴かずに飛んでくることがあり,見落とす可能性が示唆された.プレイバック後にドラミングのみの反応しかなかった場合には,ドラミングによる種の識別手法が確立していないので,クマゲラのドラミングとして記録すべきでない.
著者
深瀬 徹 簗川 堅治 高橋 ゆう 吉村 晶子
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.S5-S8, 2022 (Released:2022-08-07)
参考文献数
11

山形県蔵王温泉で,2022年6月5日から7月2日にかけてジョウビタキの巣とそこから巣立った3羽のヒナを観察した.当地では2015年夏まで日本野鳥の会山形県支部の探鳥会が実施されていたが,繁殖期のジョウビタキの観察記録はなく,近年になってから,ジョウビタキが繁殖するようになったものと考えられた.
著者
西 教生 高瀬 裕美
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.S1-S8, 2008 (Released:2008-03-28)
参考文献数
21
被引用文献数
1

2007年 5月中旬から10月中旬にかけて,山梨県都留市においてハシボソガラスおよびハシブトガラスの成鳥の風切羽,尾羽の換羽の調査を行なった.踏査によって落ちている風切羽および尾羽を採集し,定点観察によって飛翔中の個体の風切羽および尾羽の換羽状態を記録した.ハシボソガラスおよびハシブトガラスとも初列風切羽の最も内側の第 1羽から外に向かって換羽を開始し,第 5~第 6羽まで進むと次列風切羽は最も外側の第 1羽から内側に向かって換羽を開始した.ハシボソガラスは 5月下旬から,ハシブトガラスは 6月上旬から風切羽の換羽を開始し,ハシボソガラスは 9月上旬から中旬に,ハシブトガラスは 9月下旬から10月上旬に終了した.尾羽の換羽は初列風切羽の第 4羽が換羽をすると開始され,中央尾羽から外側に向かって換羽を行なった.
著者
佐藤 重穂 濱田 哲暁 谷岡 仁
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.S1-S5, 2018 (Released:2018-02-13)
参考文献数
13

四国地域の野外で観察されたサンジャク Urocissa erythrorhyncha の記録をとりまとめた.アジア大陸原産のカラス科に属するサンジャクは飼育個体の逸出に由来すると考えられる個体が四国西部で2000年から記録されており,2017年までに33件の記録が収集された.観察された環境は二次林が多く,針葉樹人工林と農耕地でも確認された.2015年と2016年には幼鳥と巣立ちビナが観察された.本種は四国西部に定着し,低地の広い範囲に生息していると考えられた.
著者
菊地 正太郎 佐野 清貴
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.S7-S10, 2007 (Released:2007-05-31)
参考文献数
16

主な生息地が沖縄県の石垣島と西表島の 2島に限られているカンムリワシを,その間に位置する竹富島で2005年 1月に観察した.羽衣の状態から前年生まれの幼鳥であると判断した.石垣島か西表島から飛来した迷鳥であると考えられた.
著者
三上 かつら 植田 睦之
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.A33-A44, 2011 (Released:2011-08-01)
参考文献数
20
被引用文献数
1

アンケートや文献調査から,亜種リュウキュウサンショウクイ Pericrocotus divaricatus tegimae の西日本における分布拡大状況を把握した.1970年代に南九州に生息していた本亜種は,2010年までに九州北部・四国・紀伊半島においても確認されるようになった.生息地では留鳥であるが,一部個体は冬には繁殖地より暖かい中~低標高地へ移動している可能性もある.生息環境について,亜種サンショウクイ P. d. divaricatus と比較すると,両亜種のニッチは似通っているもしくは連続的であった.現在,繁殖期は亜種サンショウクイの方が北の地域に生息しているものの,越冬期は亜種リュウキュウサンショウクイの方が北の地域に生息していることから,両亜種の分布の違いは寒さへの生理的耐性では説明できない.1980年代に亜種サンショウクイが減少し,空いた地域で亜種リュウキュウサンショウクイが夏に繁殖できるようになり,さらに越冬するようになったものと示唆される.環境条件から推定した生息可能域は,関東地方にまでおよぶことがわかった.