著者
古本 佳代 近藤 千晶 村尾 信義 前田 憲孝 神田 鉄平 糸井 崇将 古川 敏紀
出版者
一般社団法人 日本動物看護学会
雑誌
Veterinary Nursing (ISSN:21888108)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.43-50, 2020 (Released:2021-08-04)
参考文献数
28

地域猫活動を参考に大学キャンパス内のノラネコの管理に取り組んだ。ノラネコ数の縮減と長期的な活動継続の要素について考察するため、個体数、不妊去勢手術済み数、遺棄個体数、新規個体数、譲渡個体数、失踪個体数、死亡個体数、学内教育動物病院への治療依頼数、活動メンバー数、活動経費を算出し分析した。譲渡、失踪、死亡による数の減少が繁殖、新規参入、遺棄による数の増加より上回り、大学キャンパス内のノラネコ数は縮減し、ゼロとなった。管理したノラネコの約半数は失踪あるいは死亡したが、約半数は新しい飼い主に譲渡され、キャンパス内のノラネコ数の縮減に一定の成果を上げることができた。6年間の活動期間中の活動メンバーおよび活動資金は安定的に確保できた。TNR(trap-neuter-return)活動と新しい飼い主への譲渡を組み合わせた取り組みと、活動の効果発揮のための組織作りがノラネコ数の縮減と長期的な活動継続の要素となったことが示唆された。
著者
大橋 由紀子 石坂 有香倫 花田 道子
出版者
日本動物看護学会
雑誌
Veterinary Nursing (ISSN:21888108)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.13-20, 2016 (Released:2020-05-07)
参考文献数
4

本研究は、動物看護学を学ぶ学生のための、英単語リスト、英会話表現リストの作成を目的とする。現在獣医師のための英語コーパスは存在するが、動物看護師を対象としたコーパスは見られない。そこで本研究では、想定に基づく内容ではなく、コーパスを構築し、実際に使用頻度の高い内容を抽出後、日本語から英語へのパラレルコーパスを構築し、英単語、会話リストを作成した。日本語コーパス材料サンプルとして、『MF動物病院日誌』(少年画報社)での会話の書き出しを使用し、コーパス化した内容から、KHcoderにより頻出語を抽出した。それらのワードリスト、および現役、元動物看護師を対象に実施したアンケート結果を基盤とし、実際にコーパスで抽出された表現を使用した英会話表現を作成した。構築コーパスでのtype(異なり語数)は1545語、token(総語数)は6653語である。本論文では、単語、英会話表現リスト紹介のほか、実際の使用現場データに関連する小規模コーパスを構築し、利用することによる英語授業での可能性を提案する。
著者
三井 香奈 茂木 千恵
出版者
日本動物看護学会
雑誌
Veterinary Nursing (ISSN:21888108)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.N6-N11, 2022 (Released:2022-08-24)
参考文献数
15

飼い主のいない猫(野良猫)の、人道的管理として、野外を放浪する個体の捕獲、不妊去勢手術を施して元の場所に戻すTrap–Neuter–Return (TNR) 活動が行われ、TNR活動による個体数抑制の効果も報告されている。本研究では、動物看護関係の大学生と一般市民を対象とし、アンケートを用いた野良猫の捕獲やTNR活動に関する意識調査を実施した。アンケートは米国の野良猫に対する意識調査にて使用された項目を用いており、調査結果は日本と米国との比較、さらに対象者の属性間での比較を行い、意識の相違点を明らかにすることを目的とした。米国と比較した結果、日本では、TNR活動への認知度及び参加意向が高くなっており、この相違には社会的要因の関与が示唆された。加えて一般市民と比較し、動物看護関係の大学生のTNR活動の認知度が低いことが分かった。回答者の性別や年代が認知度に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
川添 敏弘 宮田 淳嗣 尾松 美佐子 福山 貴昭 山川 伊津子 今村 伸一郎
出版者
日本動物看護学会
雑誌
Veterinary Nursing (ISSN:21888108)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.37-41, 2020 (Released:2021-08-04)
参考文献数
13

動物の体温測定は、健康状態を確認するうえで極めて重要なことであるが、直腸温計測は簡単な技術ではない。イヌでは腋下温が直腸温測定の代替法になることが報告されているが、ネコでの報告は認めない。そこで、直腸温と腋下温を同時に測定し、興奮の有無を確認して記録とした。その結果、回帰直線はy=0.909x+3.436(r2=0.829、p<0.01)で表され、ネコの直腸温の正常値(37.5~38.5°C)の範囲では、腋下温に-0.03~0.07°Cを加えると直腸温に相当した。これにより、イヌと同様にネコでも腋下温計測が、臨床上、直腸温測定の代替法になり得ることが示唆された。