著者
川添 敏弘
出版者
横浜国立大学技術マネジメント研究学会
雑誌
技術マネジメント研究 (ISSN:13473042)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.46-50, 2018-03-31

重度知的障害者には、自閉症の特徴的な行動が認められる場合がある。その行動特性が理解されないことで、暴力行動を含めた「問題行動」が生じる場合がある。その「問題行動」への対処を間違えれば、深刻な状態を引き起こすことがある。その状況を解決するために、対象者にイヌを介入する研究を行った。動物介在介入では、障害者がイヌに対して自発行動が出現するような関わりを作っていった。イヌとの関係が形成されると、イヌと一緒であれば場所を移動することで様々な困難場面に直面していくことが可能になった。その結果、イヌが存在することで様々な刺激に対応できるようになり「問題行動」が減少していった。このような介入が対象者の行動の変化をもたらし、さらに、職員が新たに出現した適切な行動を評価することで、障害者のQOL (生活の質) が向上していった。事例で示した行動の変化が生じる理由について、イヌを用いた個別の研究で明らかにした。さらに、実際に動物介在介入で用いた学習理論による説明を行った。動物介在介入では、レスポンデント条件付けを重視することで、「問題行動」を変容することが可能となっていると考えられた。本研究では、重度知的障害を伴う発達障害者の「問題行動」へ、これまで報告されていない介入方法を提案することができた。
著者
川添 敏弘 宮田 淳嗣 尾松 美佐子 福山 貴昭 山川 伊津子 今村 伸一郎
出版者
日本動物看護学会
雑誌
Veterinary Nursing (ISSN:21888108)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.37-41, 2020 (Released:2021-08-04)
参考文献数
13

動物の体温測定は、健康状態を確認するうえで極めて重要なことであるが、直腸温計測は簡単な技術ではない。イヌでは腋下温が直腸温測定の代替法になることが報告されているが、ネコでの報告は認めない。そこで、直腸温と腋下温を同時に測定し、興奮の有無を確認して記録とした。その結果、回帰直線はy=0.909x+3.436(r2=0.829、p<0.01)で表され、ネコの直腸温の正常値(37.5~38.5°C)の範囲では、腋下温に-0.03~0.07°Cを加えると直腸温に相当した。これにより、イヌと同様にネコでも腋下温計測が、臨床上、直腸温測定の代替法になり得ることが示唆された。
著者
堀井 隆行 相澤 里菜 福山 貴昭 宮田 淳嗣 川添 敏弘 植竹 勝治 田中 智夫
出版者
Japanese Society for Animal Behaviour and Management
雑誌
動物の行動と管理学会誌 (ISSN:24350397)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-11, 2021-03-25 (Released:2021-06-09)
参考文献数
21

本研究では、愛着対象である飼い主の体臭が、飼い主との分離状態のイヌの行動に及ぼす影響を調べることを目的とした。健康で分離不安の既往歴のない一般家庭犬12頭を供試した。イヌに提示するニオイとして飼い主の靴下(愛着対象の体臭付着物)、牛干し肉(興味を示しやすいニオイ)、ラベンダー精油(リラクゼーション効果が報告されている芳香物質)、Control(コットンのみ)という4種類のニオイ刺激を選定した。各ニオイ刺激は、クッションカバーの裏側のポケットに入れて、サークル内でイヌに30分間提示した。このとき、実験室内にはイヌのみを残し、イヌの行動反応はビデオカメラで撮影した。ニオイ刺激の提示は、連続的に繰り返したが、4×4ラテン方格法を用いて提示順の影響を考慮した。飼い主の靴下に対する探査時間の長さは、ラベンダー精油よりも有意(P < 0.05)に長かった。Controlとの差は有意ではないものの、約半数のイヌがControlの倍以上の時間を飼い主の靴下の探査に費やしており、そのような個体は飼い主の靴下に付着した汗のニオイに対してより強い興味を示したと考えられる。また、飼い主の靴下を長く嗅ぐ個体は、ニオイ(クッション)周囲での伏臥・横臥位休息も長い(rs=0.661、P < 0.05)ことから、そのような個体は飼い主の体臭付着物に対して飼い主の代替として近接性を維持する愛着行動を示した可能性が考えられた。しかし、飼い主との分離に伴う発声の抑制作用については明確ではなかった。