著者
川合 暢彦 中村 彩花 大谷 淳二 本川 雅英 當麻 愉衣子 西 美香 丹根 一夫
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13490303)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.75-82, 2009-06-25
参考文献数
39

矯正歯科を受診した不正咬合患者における外傷既往の実態を把握するとともに,外傷と不正咬合の関連性を明らかにするため,2001年8月から2005年11月の期間に広島大学病院矯正歯科を受診した不正咬合患者1,000名を対象とした調査を行い,以下の結果を得た.1.外傷既往歴を有する不正咬合患者は1,000名中51名(5.1%)であった.そのうち,当科受診前に受傷した者が38名,当科にて治療中もしくは保定中に受傷した者が14名で,うち2名が重複した既往を有していた.2.受傷部位は乳歯,永久歯ともに上顎前歯が最も多かった.3.不正咬合については,患者全体では叢生が最も多かったが,外傷既往歴を有する患者では上顎前突が最も多く,約5割を占めていた.4.ほとんどの症例において,適切な外傷歯の処置により,その後の矯正歯科治療に大きな影響が及ぼなかったものの,打撲により乳歯の転位や埋入が生じ,後継永久歯への交換錯誤を引き起こした症例や外傷が顎偏位の原因と考えられる症例も認められた.外傷既往者に上顎前突の患者が多く,上顎前歯部が最も多い受傷部位であったことから,若年期に上顎前突の改善を行うことは,その後の健全な生活にとってきわめて有益と考えられる.また,外傷が不正咬合の原因となる症例も存在することから,初診時に外傷の既往について診査することの重要性が示された.
著者
渡辺 厚 毛利 環 渡邉 直子 渡邉 洋平 宮崎 秀夫 齋藤 功
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13490303)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.142-154, 2009-10-25
参考文献数
43
被引用文献数
2

わが国の不正咬合の疫学調査は独自の基準によるものが散見されるのみで,国際的に比較可能なIndex of Orthodontic Treatment Need(IOTN)を用いた疫学調査はほとんどない.そこで今回,日本人における不正咬合の種類と程度および矯正治療の必要性に関する基礎データの構築を目的に,IOTNを用いた疫学調査を行った.調査対象は,4つの地域の11歳から14歳児,497名としたが,矯正治療経験のある72名(14.5%)は除外した.調査は,レントゲン,研究用模型を利用せず口腔内診査法によりIOTNを算出した.機能と形態の両面から咬合を評価するDHCにおいて「矯正治療必要性あり」(DHC Grade 4,5)と判定された者は34.1%であった.不正咬合の内訳は,叢生17.4%,過度のoverjet 10.1%,萌出余地不足13.2%,永久歯欠損4.0%,過蓋咬合2.6%,交叉咬合2.4%,開咬0%,反対咬合0%であった.一方,客観的審美性の観点から咬合を評価するACにて「矯正治療必要性あり」(AC Grade 8-10)に分類された者は10.4%であった.これらの結果を総合すると,「矯正治療必要性あり」と分類された者は35.5%であった.以上の結果をこれまでの報告と比較すると,矯正治療が必要とされる者の割合は英国の調査結果とほぼ近似していたが,不正咬合の種類としては叢生が約2倍で,不正咬合の特徴は欧州と異なる可能性が示唆された.
著者
陳 明裕
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13490303)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.118-120, 2008-06-25

バネ式拡大装置(CEA)は,0.9mmステンレススチールラウンドワイヤーと内径0.9mmのステンレススチールチューブ,および0.3mm×0.9mmのNi-Tiオープンコイルよりなる単純な構造の装置である.また,単純な構造のため,製作も容易で,清掃性に優れ,装着感も比較的良好である.なお,本装置は,側方拡大のみならず,主線の延長によって同時に前歯部の傾斜移動も可能であり,歯列狭窄を伴う叢生症例の治療などに有効である.また,リンガルシースやSTロックと組み合わせることで,調節時の取り外しも可能となる.本稿ではその製作方法および応用例を紹介する.