著者
田中 章浩 板口 典弘
出版者
東京女子大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-06-30

多様な文化的背景をもつ人々のグローバルな交流がますます加速する現代社会において、円滑なコミュニケーションを実現するためには、自身の感情の表出、そして他者の感情の知覚を媒介する顔と身体表現の普遍性と文化特異性を知ることが不可欠である。感情の知覚には顔や身体表現(視覚情報)のみならず、声(聴覚情報)も利用され、感覚間統合が本質的な役割を果たしている。申請者らのこれまでの研究の結果、他者の感情を知覚するとき、欧米人は顔への依存性が高いのに対し、日本人は声への依存性が高いことがわかっている。本計画班では顔・身体・声の認識様式の文化的多様性の根源として、感覚間統合を含む「情報統合」に着目する。そして、幼児期から成人にかけて感情知覚における複数情報統合の様式がどのように変化するのかを比較文化的に検討し、これらの知見を統一的に説明する理論的枠組みの提唱をめざす。2018年度は、日本人の声優位性はどのように獲得され、誘発されるのかを検討し、以下の点が明らかとなった。①母親と子どもの間で声優位性に正の相関が見られ、母親が声優位であるほど、その子どもも声優位で感情を知覚するというように、知覚パターンの発達には身近な大人の影響を受けることが明らかとなった。②日本人では、外集団よりも内集団の話者に対して声優位で感情を捉える傾向が見られた。話者の見た目と言語を操作した感情知覚実験の結果、話者の見た目が日本人でなくとも、日本語を話していれば声優位で感情を知覚することが明らかとなった。トランスカルチャー状況における「異質な他者」とは何かを考察するうえで重要な知見である。③感情表出をする話者に対する注視パターンの発達文化間比較を行ったところ、相手の目領域に視線を向けることが声優位の知覚を形成する可能性が示唆された。

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顔と身体表現における感覚間統合の文化間比較 https://t.co/jGHzcO60oM “他者の感情を知覚するとき、欧米人は顔への依存性が高いのに対し、日本人は声への依存性が高い” “話者の見た目が日本人でなくとも、日本語を話していれば声優位で感情を知覚する” 日本人がマスクに抵抗が少ない理由の一つかも?

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