著者
安藤 瑠称 吉岡 実穂 大門 正太郎 板口 典弘
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
pp.psychono.42.4, (Released:2023-11-28)
参考文献数
56

Healthy participants can adaptively modulate their trajectory height to reduce possible disturbance to the movement when signal dependent noises increase. We aimed to clarify whether such an adaptive trajectory planning ability is preserved in hemiplegia patients, who showed decreased motor skills because of brain injury, and analyzed reaching kinematics with or without a 200 g weight. We hypothesized that patients would adjust their trajectory in simple reaching movements to compensate the lack of motor control accuracy due to their symptoms. The results show that patients’ trajectories with a weight were higher than those without a weight in affected hands. Moreover, in the 200 g weight condition, even higher trajectory was observed in the second block compared to the first block. These results suggest that hemiplegia patients can plan an adaptive trajectory, considering their movement accuracy, task requirements, and increased effects of motor noises due to muscle fatigue. We also replicated the results of the previous study using healthy participants, which are explained by the same mechanism considering motor noises and task requirements.
著者
板口 典弘 森 真由子 内山 由美子 吉澤 浩志 小池 康晴 福澤 一吉
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.436-443, 2019-12-31 (Released:2021-01-04)
参考文献数
16

本研究は, 日常的に利用できるタブレットから取得できる情報を用いて, 書字運動および書字障害を定量的に評価する手法を提案することを目的とした。頭頂葉を含む病変を有する症例 5 名 (以下, 患者群) と高齢健常者 5 名 (以下, 統制群) が参加した。提案手法によって, (1) 書字障害を呈する症例のみにおいて, 字画間にかかる時間が長かったこと, (2) 症状にかかわらず, 患者群の速度極小点の数が統制群の範囲を越えて大きかったこと, (3) 複数症例で, 字画間の時間と距離の関係が統制群と異なっていたこと, (4) 統制群の字画間の時間と距離の相関係数は, 比較的安定であったことが明らかとなった。この知見に基づき, タブレットによる書字運動評価の有用性について議論した。
著者
中島 美里 森 将輝 板口 典弘
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
pp.42.6, (Released:2023-12-06)
参考文献数
27

The present study aimed to investigate whether the laws of isochrony and homothety hold for Japanese characters by measuring handwriting movements using a liquid crystal display tablet. The law of isochrony means that handwriting time is constant regardless of handwriting size. The law of homothety means that the time required for each character is consistent regardless of the overall time required during continuous handwriting. The twenty-two participants made three shapes, four hiragana characters (Japanese phonetic alphabets),and four kanji characters (Chinese characters) on a tablet at various sizes and speeds. Total handwriting time was longer when character size increased for all character types. This result suggests that the law of isochrony does not hold for Japanese character types. When the characters were written sequentially, the partial handwriting time ratio was indefinite and, varied by character. This result suggests that the law of homothety might not hold for some characters. In summary, this study suggests that the spatiotemporal dynamics of handwriting in Japanese differ by character.
著者
田中 章浩 板口 典弘
出版者
東京女子大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-06-30

多様な文化的背景をもつ人々のグローバルな交流がますます加速する現代社会において、円滑なコミュニケーションを実現するためには、自身の感情の表出、そして他者の感情の知覚を媒介する顔と身体表現の普遍性と文化特異性を知ることが不可欠である。感情の知覚には顔や身体表現(視覚情報)のみならず、声(聴覚情報)も利用され、感覚間統合が本質的な役割を果たしている。申請者らのこれまでの研究の結果、他者の感情を知覚するとき、欧米人は顔への依存性が高いのに対し、日本人は声への依存性が高いことがわかっている。本計画班では顔・身体・声の認識様式の文化的多様性の根源として、感覚間統合を含む「情報統合」に着目する。そして、幼児期から成人にかけて感情知覚における複数情報統合の様式がどのように変化するのかを比較文化的に検討し、これらの知見を統一的に説明する理論的枠組みの提唱をめざす。2018年度は、日本人の声優位性はどのように獲得され、誘発されるのかを検討し、以下の点が明らかとなった。①母親と子どもの間で声優位性に正の相関が見られ、母親が声優位であるほど、その子どもも声優位で感情を知覚するというように、知覚パターンの発達には身近な大人の影響を受けることが明らかとなった。②日本人では、外集団よりも内集団の話者に対して声優位で感情を捉える傾向が見られた。話者の見た目と言語を操作した感情知覚実験の結果、話者の見た目が日本人でなくとも、日本語を話していれば声優位で感情を知覚することが明らかとなった。トランスカルチャー状況における「異質な他者」とは何かを考察するうえで重要な知見である。③感情表出をする話者に対する注視パターンの発達文化間比較を行ったところ、相手の目領域に視線を向けることが声優位の知覚を形成する可能性が示唆された。
著者
板口 典弘 山田 千晴
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

本研究は,空書行動が漢字構成課題に及ぼす効果を検討した。空書が科学的に“発見”されてから30年が経ったが,そのメカニズムは未だ解明されていない。そこで本研究では空書が認知処理に与える効果を再検討した。実験では,従来用いられてきた空書許可条件,不許可条件に加え,無関係な指運動を行う統制条件を設定した。実験1では,漢字構成パーツを同時に提示し,刺激提示時間を1秒,3秒,10秒とした。実験2では,漢字構成パーツを継時的に2秒ずつ提示した。実験3では,佐々木・渡辺(1983)と同じ刺激・提示方法・回答時間を設定し実験をおこなった。実験の結果,いずれの実験においても,空書許可条件が他の条件よりも正答数と反応時間において有意に上回ることはなかった。本実験結果は,少なくとも現代の若年者においては,空書行動が漢字構成課題に対して促進的な効果を及ぼさないことを示唆した。