著者
斎藤 泉 千葉 丈 松浦 善治 宮村 達男
出版者
国立予防衛生研究所
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1990

日本の慢性肝炎(120万人)の半数以上、最近の肝細胞癌全体(1万8千人/年)の半数近くがC型肝炎ウイルス(HCV)によるものと考えられている。クロ-ン化したウイルスcDNAを用いてHCV遺伝子産物の発現系・検出系を開発し、肝炎・肝癌組織中で発現するHCV遺伝子産物を検討することにより、このウイルスによる肝炎・肝癌発症機構解明の基礎を確立するのが本研究の目的である。1.HCVの構造領域cDNAを組み込んだバキュロウイルス発現ベクタ-やプラズミドベクタ-をサル由来細胞株に導入することによりHCVの構造蛋白を発現させた結果、HCVのコア蛋白とエンベロ-プ蛋白の発現と同定に成功した。コア蛋白は糖鎖のつかない22kdの蛋白で、p22と命名し、エンベロ-プ蛋白は糖鎖を持つ35kdの蛋白でgp35と命名した。また粗精製したp22蛋白を用いてHCVのコア蛋白に対する抗体(コア抗体)を検出する実用的なELISAを作製した。2.組換えバキュロウイルスにより産生されたコア蛋白などを抗原として、構造蛋白の検出に用いられるモノクロ-ン抗体を作製した。3.非B型肝癌の8例において、癌部と非癌部からRNAを抽出し、PCR法によりHCVRNAを検出した結果、少なくとも一部の非B型肝癌組織からHCVRNAが検出されることが分かった。本研究によりHCV構造蛋白の特異抗体作製への道が開かれ、患者組織におけるウイルス抗原の検出への基礎が開けたといえよう。一部の肝癌組織からHCVRNAが検出されることは、持続感染状態にあるHCVが細胞の癌化に何等かの役割を果たしている可能性を示唆するが、その証明には今後の定量的検討が必要であろう。

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