著者
坂口 英
出版者
岡山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

本研究ではまずはじめに,後腸発酵動物(モルモット,デグー,オオミミマウス,マーラ,ヌートリア,ハムスター,ハタネズミ,ラット,ウサギ)のADF消化率と消化管内容物滞留時間との関係を検討した.その結果,繊維の消化能力は微生物発酵槽である大腸の内容物貯留能に支配されるが,それぞれの動物の消化管によって異なる貯留機能が備わっており,繊維消化能はその機能に応じて異なることが示された.また,ウサギの消化管機能は飼料の物理性,特に粒子サイズに大きく影響され,飼料繊維の消化率の変動は他の後腸発酵動物とは異なった要因によってもたらされることが明らかになった.次に,異なる大腸内容物貯留機能と繊維消化能力を備えた動物種間で,消化管内微生物活性にどのような違いがあるかを検討するために,同一飼料を与えたラット,モルモット,オオミミマウスの大腸内容物中の繊維分解菌数,有機酸組成,大腸内微生物の繊維分解活性等を調べた.繊維分解菌数は繊維消化能力の高いモルモットが必ずしも多くなく,短鎖脂肪酸組成,短鎖脂肪酸総量,セルロース分解活性にも動物種間差が認められ,これら3動物種の盲腸内セルロース分解菌の種類と性質に差異があることが示された.しかしながら繊維の消化能力とこれらの微生物に関わる測定結果との一定の関係はつかめなかった.以上のように本研究で調べた齧歯類間の繊維消化能力の違いは,動物の持つ盲腸内セルロース分解菌数と活性からだけでは説明することはできないことが示唆された.繊維分解の動物種間差は,セルロース分解菌群が存在する発酵槽(盲腸)へ流入する内容物(基質)の質的な違い,セルロース分解菌を効率よく保持できる消化管構造と機能の有無などによってもたらされるものと考えられる.

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