著者
安田 康晴 山本 弘二 岸 誠司 友安 陽子 坂口 英児 藤原 ウェイン翔
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.51-54, 2019-02-28 (Released:2019-02-28)
参考文献数
12

背景:救急隊現場到着所要時間・病院収容所要時間の延伸および救急車走行中の事故,ヒヤリハットの発生は,自動車運転者が救急車のサイレン音に気づかず救急車の接近が認識できないため緊急走行が妨げられていることも要因の一つであると推測される。目的:自動車運転者に救急車サイレン音が聴こえているかについて検討すること。方法:自動車走行時の車内騒音量と距離別に救急車サイレン音量とを比較した。結果:自動車まで20mの救急車サイレン音(46.4±1.3dB)は,自動車走行中車内音量,オーディオ視聴時(54.6±6.7dB)や会話時(68.4±1.6dB)より小さかった。考察:救急車が20mに接近してもサイレン音量は窓全閉時の走行中車内騒音量より小さいこと,音が高齢者に聴きづらい周波数帯であることなどから救急車の接近が認識できないと考えられた。サイレン音の改良やサイレン音量の基準の見直しが必要である。
著者
坂口 英伸
出版者
The Association for the Study of Cultural Resources
雑誌
文化資源学 (ISSN:18807232)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.63-83, 2019 (Released:2020-07-15)
参考文献数
70

本論は小野田セメント株式会社が1950年代より展開した芸術支援活動の一端を解明しようとする試みである。セメント製造業者である同社が異分野といえる芸術に進出した理由は、建築や土木の主要素材というセメントの従前の伝統的イメージからの脱却と、美術素材としてのセメントの利用促進と応用域の拡大にあった。その実現化の手段として同社が目論んだ戦略が芸術活動へのスポンサーシップだった。その代表例として有名なのが野外彫刻展への協賛である。同社は東京都主催の野外彫刻展への出品作家に対して、主に経済と物質面から彼らの制作活動を下支えした。 本論で考察の対象とする芸術支援活動は、①セメント彫刻作品の買い上げと寄贈(買上寄贈)、②依頼主からの注文に応じて作品制作を請け負う受託制作、③児童の造形教育への関与、の3点である。論点①②③のそれぞれについて、本論では具体例を挙げながらその活動内容を詳述し、その意義づけを試みる。 論点①については、野外彫刻展の出品作を主対象とした。小野田セメントは野外彫刻展へ出品された作品(一部)を彫刻から買い上げて全国各地へ寄贈する活動を展開した。現金による作品の買上は、制作活動が彫刻家へ経済的恩恵として還流され、セメント彫刻の創作が活発化する効果があった。 論点②の受託制作とは、個人や団体などのさまざまな依頼主からの要望を小野田セメントが聞き入れ、オリジナル作品を制作するオーダーメイド方式ともいえる。依頼主かの目的や意図に合わせ、同社は彫刻家を選定して作品の制作を依頼、完成作品は依頼主を通じて寄贈された。作品には人々の精神に潤いをもたらす効験が期待された。 論点③の具体例として、プレイ・スカルプチャー(遊戯彫刻)の制作援助、小学校と連携した記録映画の撮影、児童造形作品展への協賛を挙げる。造形教育への支援を通じて、セメントの受容層の拡大とセメントの需要量の増大が目指されたのである 同社の芸術支援活動の動機と目的は、美術素材としてのセメントの利用促進という実利的な側面と、芸術を通じた人々の豊かな精神の涵養や児童の創造性の育成という公益的側面に根差したものだった。同社の芸術援活動によって、日本の戦後美術の新局面が開拓されたと筆者は考える。
著者
坂口 英児 安田 康晴 山本 弘二 吉川 孝次 佐々木 広一 友安 陽子 竹井 豊
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.712-716, 2021-10-31 (Released:2021-10-31)
参考文献数
15

背景:救急活動においてストレッチャー操作は不可欠であり,とくにストレッチャーの持ち上げ操作における身体負荷は男性より女性のほうが大きいと考えられる。目的:ストレッチャー操作での男女の身体負荷を明らかにし,その対策を検討する。対象と方法:救急救命士養成課程の学生男性24名,女性5名を対象に,ダミーを乗せたストレッチャーの持ち上げ操作前後の自覚的運動強度と客観的運動強度の身体負荷をそれぞれ比較した。結果:自覚的運動強度での身体負荷は65kgの頭側と75kgの頭側,尾側で男性より女性のほうが有意に大きかった(p<0.05)。65kgの尾側では身体負荷に有意差はないものの,男性より女性のほうが身体負荷を感じていた。客観的運動強度での身体負荷は65kg,75kgともに頭側,尾側で男性より女性のほうが有意に大きかった(p<0.05)。考察:腰痛予防対策指針には重量物取扱い作業時の自動化・省力化が示されている。女性救急隊員の身体負荷の軽減や活躍できる環境を整えるために,女性がストレッチャー操作する際には頭側を避け,尾側の左右に1名ずつ配置し持ち上げ操作を行うなどの対策や,電動ストレッチャーを導入するなどの対策が必要である。
著者
坂口 英伸
出版者
文化資源学会
雑誌
文化資源学 (ISSN:18807232)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-19, 2017

<p>本論では鉄筋コンクリートの観点から、近代日本の記念碑研究に検討を加える。従来の記念碑研究が銅像を中心とした建設背景や制作者の分析であるのに対し、本研究は鉄筋コンクリートという構造と素材に主眼を置き、近代日本における鉄筋コンクリート造の記念碑の誕生と発展を論じる。記念碑制作の担い手である彫刻家と建築家の関係に着目すると、鉄筋コンクリート造の記念碑が登場する道筋が明瞭となる。記念碑への鉄筋コンクリートの導入者は、西洋建築を学んだ建築家である。その応用の背景には、日清・日露戦争による大量の戦死者の存在があった。鉄筋コンクリート造の記念碑の誕生期にあたる明治40年代、碑文を刻んだ平らな一枚岩を垂直に立てる従来の伝統的な記念碑に加え、戦死者の遺骨や霊名簿などの奉納が可能な内部空間を有する記念碑が必要とされた。内側に空洞をもつ複雑な形態の記念碑の建造には、専門知識と実用に秀でた建築家の関与が欠かせなかったのである。一方で彫刻家もコンクリートを率先して作品に摂取した。硬軟自在なコンクリートは、新たな美術素材として彫刻家の間に浸透、彫刻家は積極的に建築へ接近した。1926(大正15)年、彫刻と建築との融合を目指す彫刻家団体として構造社が誕生。設立者の日名子実三は、建築家・南省吾の監修のもとで《八紘之基柱》を設計、その総高約37mは1940(昭和15)年当時の日本で最大規模を誇った。鉄筋コンクリートという堅牢な構造の採用により、日本の記念碑はかつてないモニュメンタリティを獲得したのである。記念碑は記念事項の将来への伝達を目的に作られる。顕彰すべき事跡の長期的保持は、記念碑の物理的堅牢性に結び付く。記念事項をより長く伝えるためには、より強固な素材と構造が必要である。鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete)は、文字通り「補強(reinforced)」を目的とした堅固な素材であり、記念碑の存続を維持するには最適の材料である。記念碑の構造に鉄筋コンクリートが採用された理由は、記念事項の永続性へ対する欲求にあったと結論づけられよう。</p>
著者
坂口 英伸
出版者
文化資源学会
雑誌
文化資源学 (ISSN:18807232)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-19, 2017 (Released:2018-07-11)
参考文献数
72

本論では鉄筋コンクリートの観点から、近代日本の記念碑研究に検討を加える。従来の記念碑研究が銅像を中心とした建設背景や制作者の分析であるのに対し、本研究は鉄筋コンクリートという構造と素材に主眼を置き、近代日本における鉄筋コンクリート造の記念碑の誕生と発展を論じる。記念碑制作の担い手である彫刻家と建築家の関係に着目すると、鉄筋コンクリート造の記念碑が登場する道筋が明瞭となる。記念碑への鉄筋コンクリートの導入者は、西洋建築を学んだ建築家である。その応用の背景には、日清・日露戦争による大量の戦死者の存在があった。鉄筋コンクリート造の記念碑の誕生期にあたる明治40年代、碑文を刻んだ平らな一枚岩を垂直に立てる従来の伝統的な記念碑に加え、戦死者の遺骨や霊名簿などの奉納が可能な内部空間を有する記念碑が必要とされた。内側に空洞をもつ複雑な形態の記念碑の建造には、専門知識と実用に秀でた建築家の関与が欠かせなかったのである。一方で彫刻家もコンクリートを率先して作品に摂取した。硬軟自在なコンクリートは、新たな美術素材として彫刻家の間に浸透、彫刻家は積極的に建築へ接近した。1926(大正15)年、彫刻と建築との融合を目指す彫刻家団体として構造社が誕生。設立者の日名子実三は、建築家・南省吾の監修のもとで《八紘之基柱》を設計、その総高約37mは1940(昭和15)年当時の日本で最大規模を誇った。鉄筋コンクリートという堅牢な構造の採用により、日本の記念碑はかつてないモニュメンタリティを獲得したのである。記念碑は記念事項の将来への伝達を目的に作られる。顕彰すべき事跡の長期的保持は、記念碑の物理的堅牢性に結び付く。記念事項をより長く伝えるためには、より強固な素材と構造が必要である。鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete)は、文字通り「補強(reinforced)」を目的とした堅固な素材であり、記念碑の存続を維持するには最適の材料である。記念碑の構造に鉄筋コンクリートが採用された理由は、記念事項の永続性へ対する欲求にあったと結論づけられよう。
著者
安田 康晴 佐々木 広一 坂口 英児 山本 弘二 吉川 孝次 友安 陽子 上杉 香鈴 二宮 伸治
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.806-815, 2022-10-31 (Released:2022-10-31)
参考文献数
20

背景:救急現場で使用されている眼球保護具の形状はさまざまであり,それら形状別の飛沫防御効果を検証する必要がある。目的:救急活動時に使用されている眼球保護具の形状による飛沫防御効果を検証し,適切な眼球感染防御対策について検討すること。対象:ゴーグルなど着用なし,眼鏡,全周カバー付きゴーグル,スポーツタイプゴーグル,シールドグラス,フェイスシールド,シールド付きヘルメット。方法:模擬飛沫発生装置により,救急活動での傷病者と救急隊員の距離・水平角・方位角別の眼球部の模擬飛沫付着を比較・検討した。結果:模擬飛沫の付着は本研究で用いたフェイスシールドでは認められなかったが,他の眼球保護具では認められ,眼鏡やスポーツタイプのゴーグル単体より,シールドグラスなどを併用することにより飛沫防御効果が高まった。まとめ:顔面全体を覆うフェイスシールドの着用や眼鏡やゴーグルにシールドグラスなどを併用することにより眼球への飛沫曝露リスクを軽減させることが示唆された。
著者
坂口 英
出版者
岡山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

本研究ではまずはじめに,後腸発酵動物(モルモット,デグー,オオミミマウス,マーラ,ヌートリア,ハムスター,ハタネズミ,ラット,ウサギ)のADF消化率と消化管内容物滞留時間との関係を検討した.その結果,繊維の消化能力は微生物発酵槽である大腸の内容物貯留能に支配されるが,それぞれの動物の消化管によって異なる貯留機能が備わっており,繊維消化能はその機能に応じて異なることが示された.また,ウサギの消化管機能は飼料の物理性,特に粒子サイズに大きく影響され,飼料繊維の消化率の変動は他の後腸発酵動物とは異なった要因によってもたらされることが明らかになった.次に,異なる大腸内容物貯留機能と繊維消化能力を備えた動物種間で,消化管内微生物活性にどのような違いがあるかを検討するために,同一飼料を与えたラット,モルモット,オオミミマウスの大腸内容物中の繊維分解菌数,有機酸組成,大腸内微生物の繊維分解活性等を調べた.繊維分解菌数は繊維消化能力の高いモルモットが必ずしも多くなく,短鎖脂肪酸組成,短鎖脂肪酸総量,セルロース分解活性にも動物種間差が認められ,これら3動物種の盲腸内セルロース分解菌の種類と性質に差異があることが示された.しかしながら繊維の消化能力とこれらの微生物に関わる測定結果との一定の関係はつかめなかった.以上のように本研究で調べた齧歯類間の繊維消化能力の違いは,動物の持つ盲腸内セルロース分解菌数と活性からだけでは説明することはできないことが示唆された.繊維分解の動物種間差は,セルロース分解菌群が存在する発酵槽(盲腸)へ流入する内容物(基質)の質的な違い,セルロース分解菌を効率よく保持できる消化管構造と機能の有無などによってもたらされるものと考えられる.
著者
松崎 隆哲 安永 昌司 吉田 朋紘 花元 克巳 笹原 泰史 藤木 哲雄 坂口 英和 安武 英剛 空閑 哲博 中尾 勉
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.23-24, 2015-03-17

近畿大学産業理工学部と筑豊ゼミ独楽研究会では、両手をあわせて一回ひねるだけで20分以上(最長19分)回る大名独楽について研究を行っている。大名独楽とは、福岡県飯塚市にある「日本の独楽資料館」の花元館長が20年の歳月を掛けて製作した誰が回しても長時間回る独楽である。大名独楽は回っている途中に回転速度が低下してふらつきだしても、回転が再度安定して独楽が起き上がる特性を持っている。本研究では、独楽の軸の動作について動画および画像による解析を行うことで、どのような原因で独楽が再度起き上がるのかについて明らかにしようとしている。
著者
山本 弘二 安田 康晴 友安 陽子 坂口 英児 宮崎 龍二
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.751-758, 2020-12-28 (Released:2020-12-28)
参考文献数
13

背景:救急車の出動件数は年々増加しているが,交通事故の形態や防止策については検討されていない。目的:救急車が緊急走行中に発生した交通事故形態を分析し,事故防止策を検討する。対象と方法:平成25年からの5年間に全国で発生した救急車の緊急走行中の事故について,交通事故総合分析センターのデータベースを用いて,一般車両による事故形態と統計学的に比較した。結果:救急車事故および一般車事故ともに「車両相互」による事故がもっとも多く,一般車事故では「追突その他」が多い。救急車事故では「交差点内」の「出会い頭」よる事故がもっとも多く発生していた。結論:救急車の緊急走行中における交通事故形態と一般車による交通事故形態が異なっていた。救急車の緊急走行中における「交差点内」および「出会い頭」の事故防止策として,一般車両に救急車の接近,とくに交差点内で早期認識効果につながる救急車の改良が必要と考える。
著者
森田 哲夫 平川 浩文 坂口 英 七條 宏樹 近藤 祐志
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.29, 2013

&nbsp;消化管共生微生物の活動を通して栄養素の獲得を行う動物は微生物を宿すいわゆる発酵槽の配置により前胃(腸)発酵動物と後腸発酵動物に大別される.消化管の上流に微生物活動の場がある前胃発酵の場合,発酵産物と微生物体タンパク質はその後の消化管を食物とともに通過し通常の消化吸収を受ける.一方,後腸発酵ではその下流に充分に機能する消化管が存在せず,微生物が産生した栄養分は一旦ふりだしに戻り,消化を受ける必要がある.その手段として小型哺乳類の多くが自らの糞を食べる.このシンポジウムでは消化管形態が異なる小型哺乳類を対象にこの食糞の意義について考える.<br><br>&nbsp;糞食はウサギ類に不可欠の生活要素で高度な発達がみられる.発酵槽は盲腸で,小腸からの流入物がここで発酵される.盲腸に続く結腸には内容物内の微細片を水分と共に盲腸に戻す仕組みがある.この仕組みが働くと硬糞が,休むと軟糞が形成される.硬糞は水気が少なく硬い扁平球体で,主に食物粗片からなる.一方,軟糞は盲腸内容物に成分が近く,ビタミン類や蛋白などの栄養に富む.軟糞は肛門から直接摂食されてしまうため,通常人の目に触れない.軟糞の形状は分類群によって大きく異なり,<i>Lepus</i>属では不定形,<i>Oryctolagus</i>属では丈夫な粘膜で包まれたカプセル状である.<i>Lepus</i>属の糞食は日中休息時に行われ,軟糞・硬糞共に摂食される.<br><br>&nbsp;ヌートリア,モルモットの食糞はウサギ類と同様に飼育環境下でも重要な栄養摂取戦略として位置付けられる.摂取する糞(軟糞,盲腸糞)は盲腸内での微生物の定着と増殖が必須であるが,サイズが小さい動物は消化管の長さや容量が,微生物の定着に十分な内容物滞留時間を与えない.そこで,近位結腸には微生物を分離して盲腸に戻す機能が備えられ,盲腸内での微生物の定着と増殖を保証している.ヌートリア,モルモットでは,この結腸の機能は粘液層への微生物の捕捉と,結腸の溝部分の逆蠕動による粘液の逆流によってもたらされるもので,ウサギとは様式が大きく異なる.この違いは動物種間の消化戦略の違いと密接に関わっているようにみえる.<br><br>&nbsp;ハムスター類は発達した盲腸に加え,腺胃の噴門部に明確に区分された大きな前胃を持つ複胃動物である.ハムスター類の前胃は消化腺をもたない扁平上皮細胞であることや,前胃内には微生物が存在することなどが知られているが,食物の消化や吸収には影響を与えず,その主な機能は明らかとはいえない.一方,ウサギやヌートリアと比較すると食糞回数は少ないが,ハムスター類にとっても食糞は栄養,特にタンパク質栄養に大きな影響を与える.さらに,ハムスター類では食糞により後腸で作られた酵素を前胃へ導入し,これが食物に作用するという,ハムスター類の食糞と前胃の相互作用によって成り立つ,新たな機能が認められている
著者
坂口 英
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

胃や小腸での消化を免れる糖質(難消化性糖質)フラクトオリゴ糖やマンニトールの摂取は,ウサギの飼料タンパク質利用効率を改善させ,その効果は「難消化性糖質が盲腸内微生物増殖を促し,血中尿素の微生物態タンパク質への移行量を増大させる。増大した微生物を良質のタンパク質源としてウサギが摂取する」ことにより発現することを示した。これは生産効率改善ならびに窒素排泄低減をもたらす飼養技術として実用化できる。
著者
坂口 英継
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05272997)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.294-296, 1987-07-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
森田 哲夫 平川 浩文 坂口 英 七條 宏樹 近藤 祐志
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
巻号頁・発行日
pp.52, 2013 (Released:2014-02-14)

消化管共生微生物の活動を通して栄養素の獲得を行う動物は微生物を宿すいわゆる発酵槽の配置により前胃(腸)発酵動物と後腸発酵動物に大別される.消化管の上流に微生物活動の場がある前胃発酵の場合,発酵産物と微生物体タンパク質はその後の消化管を食物とともに通過し通常の消化吸収を受ける.一方,後腸発酵ではその下流に充分に機能する消化管が存在せず,微生物が産生した栄養分は一旦ふりだしに戻り,消化を受ける必要がある.その手段として小型哺乳類の多くが自らの糞を食べる.このシンポジウムでは消化管形態が異なる小型哺乳類を対象にこの食糞の意義について考える. 糞食はウサギ類に不可欠の生活要素で高度な発達がみられる.発酵槽は盲腸で,小腸からの流入物がここで発酵される.盲腸に続く結腸には内容物内の微細片を水分と共に盲腸に戻す仕組みがある.この仕組みが働くと硬糞が,休むと軟糞が形成される.硬糞は水気が少なく硬い扁平球体で,主に食物粗片からなる.一方,軟糞は盲腸内容物に成分が近く,ビタミン類や蛋白などの栄養に富む.軟糞は肛門から直接摂食されてしまうため,通常人の目に触れない.軟糞の形状は分類群によって大きく異なり,Lepus属では不定形,Oryctolagus属では丈夫な粘膜で包まれたカプセル状である.Lepus属の糞食は日中休息時に行われ,軟糞・硬糞共に摂食される. ヌートリア,モルモットの食糞はウサギ類と同様に飼育環境下でも重要な栄養摂取戦略として位置付けられる.摂取する糞(軟糞,盲腸糞)は盲腸内での微生物の定着と増殖が必須であるが,サイズが小さい動物は消化管の長さや容量が,微生物の定着に十分な内容物滞留時間を与えない.そこで,近位結腸には微生物を分離して盲腸に戻す機能が備えられ,盲腸内での微生物の定着と増殖を保証している.ヌートリア,モルモットでは,この結腸の機能は粘液層への微生物の捕捉と,結腸の溝部分の逆蠕動による粘液の逆流によってもたらされるもので,ウサギとは様式が大きく異なる.この違いは動物種間の消化戦略の違いと密接に関わっているようにみえる. ハムスター類は発達した盲腸に加え,腺胃の噴門部に明確に区分された大きな前胃を持つ複胃動物である.ハムスター類の前胃は消化腺をもたない扁平上皮細胞であることや,前胃内には微生物が存在することなどが知られているが,食物の消化や吸収には影響を与えず,その主な機能は明らかとはいえない.一方,ウサギやヌートリアと比較すると食糞回数は少ないが,ハムスター類にとっても食糞は栄養,特にタンパク質栄養に大きな影響を与える.さらに,ハムスター類では食糞により後腸で作られた酵素を前胃へ導入し,これが食物に作用するという,ハムスター類の食糞と前胃の相互作用によって成り立つ,新たな機能が認められている
著者
坂口 英継
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.733-736, 2005-09-05
被引用文献数
1

心室細動と呼ばれる不整脈は心臓突然死の主因になっており, その発生メカニズムの解明, および細動を除去する有効な除細動法の開発が急務となっている.この高頻度で不規則な振動は, 心室内を旋回するスパイラル波動が複雑に分裂して生じると考えられている.非線形物理学の立場からスパイラル波動の不安定化のメカニズムおよびスパイラルカオスを除去する方法を考察する.
著者
坂口 英継
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05272997)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.243-280, 1987-11-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。