- 著者
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宮地 良樹
黒沢 元博
石川 治
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1996
アレルギー炎症の組織修復過程においは、線維芽細胞、肥満細胞、好酸球,マクロファージなどが参画すると考えられるが、とくに肥満細胞はその発症と遷延化を考える上で重要である。従来、肥満細胞は単に即時型アレルギー反応を惹起する細胞としてのみ評価されてきたが、近年肥満細胞由来サイトカインやメディエーターが解明されるに及んで、そのアレルギー炎症過程への干渉や炎症後リモデリング過程への介在などが極めて注目されるようになった。今回の研究ではアレルギー炎症後のリモデリング過程における肥満細胞の関与を検証するため、臍帯血から樹立したヒト肥満細胞を用いて、線維芽細胞との相互作用、とりわけ肥満細胞由来トリプターゼによる線維芽細胞増殖やコラーゲン産生への影響、さらには肥満細胞が産生する各種成長因子などを検討する中で、炎症後の修復過程における肥満細胞の役割を解明した。肥満細胞と線維芽細胞の共存培養系において線維芽細胞の増殖能が亢進したことから、肥満細胞由来トリプターゼやその抗体を用いた実験で、その本態は肥満細胞由来トリプターゼである可能性が示された。また、肥満細胞は、TGF-βやbFGFなどの成長因子を産生することで線維芽細胞の増殖を制御していることも判明した。線維芽細胞と肥満細胞が相互に干渉することでリモデリングを修飾するとすれば、その制御の視点から、ステロイド剤、抗アレルギー剤、抗酸化剤などがその制御にどの程度有用かを調べることも意義深い。また、皮膚に限らず、気道炎症をはじめとする他のアレルギー炎症性疾患、肺線維症や肥厚性瘢痕を含む線維化、強皮症における硬化などの線維化疾患の序と制御における肥満細胞の役割などが今後検討されるべきであろう。