- 著者
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河岡 義裕
喜田 宏
堀本 泰介
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 基盤研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 2000
全世界で2000万人以上のヒトを殺したスペイン風邪のように、新型インフルエンザウイルスの出現派は世界的な大流行を引き起こし、未曾有の大惨事を引き起こす。1997年に香港に出現したH5N1新型インフルエンザウイルスは、18名のヒトに直接伝播し、6名の命を奪った。幸いにもヒトからヒトへと伝播することはなかったが、病原性の強さはスペイン風邪に匹敵するほどであった。近年我々が開発したリバース・ジェネティクス法を用いることで、ウイルス蛋白質に任意の変異を導入し、哺乳類での病原性獲得メカニズムを明らかにすることが可能になった。本研究は、香港で分離されたH5N1ウイルスをモデルとして、トリインフルエンザウイルスがどのようにヒトに病原性を示すようになるのかを分子生物学的に解明することを目的とした。哺乳類に強い病原性を示すウイルス株と弱い病原性を示すウイルス株とのアミノ酸配列を比較すると、それらの間には数箇所しか違いがないことがわかった。各アミノ酸に点変異を導入しウイルスを人工合成することで、どのアミノ酸が哺乳類における病原性発揮に関与しているかを調べた。その結果、RNAポリメラーゼ蛋白質を構成するPB2蛋白質の627番目のアミノ酸の変異(グルタミン酸がリジン)が、トリインフルエンザウイルスが哺乳類で病原性を発揮するために必要であることが明らかになった。