著者
田中 克 中坊 徹次 山下 洋 中山 耕至 益田 玲爾 上田 拓史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

有明海筑後川河口域を中心に有明海産スズキの生態を種々の側面より調べるとともに,養殖場から逸散したタイリクスズキの成長,成熟,仔稚魚の分布などを宇和島海域を中心に調べた.得られた主な成果は以下のとおりである.筑後川河口域におけるかいあし類分布は,塩分1〜3psuにピークを持つ低塩分汽水性特産種Sinocalanus sinensisを優占種とする群と,塩分15〜20psu以上の下流域におけるAcartia omorii, Oithona davisae, Paracalanus parvusなどの沿岸性種より構成される群に分かれた.前者の分布は高濁度水と一致した.S. sinensisの消化管内容物からはフェオ色素が多く出現したが,A. omoriiなどの消化管よりはクロロフィルaが多く出現した.前者はデトリタス食物連鎖であることが推定された.低塩分汽水域にはスズキをはじめ,エツ・アリアケヒメシラウオ・ハゼクチ・ヤマノカミなどの有明海特産種の稚魚や当歳魚が集合し,S.sinensisを専食した.一方,塩分15〜20psu以上の河口下流域に出現するカタクチイワシやメバルなどは優占する多様なかいあし類を摂食した.実験的に確認したスズキ当歳魚のδ^<13>Cの濃縮係数や半減期をもとに,スズキの胃内容物と筋肉のδ^<13>Cを調べた結果,多くの個体は4月には淡水・低塩分域まで遡上し,5〜7月には中塩分域に,8月には高塩分域に移動することが確認された.一方,タイリクスズキの採集場所より,養殖が行われている近くに分布することが明らかとなり,成長は日本産のスズキを上回り,雌雄の生殖腺より11〜12月に生殖可能なことが予想された.しかし,卵や仔稚魚は採集されなかった.有明海で採集されたスズキの遺伝子を分析した結果,個体変異は大きかったもののいずれの個体もスズキとタイリクスズキの遺伝子を有していた.また,中国大陸沿岸域には南北で異なる地方個体群の存在が示唆された.本研究を通じて有明海湾奥部筑後川河口域上流部に,高濁度汽水-特産種かいあし類・アミ類-特産種稚魚・当歳魚間の強いつながりが確認され,この「大陸沿岸遺存生態系」の起原を求めて韓国西岸で調査することが必須と考えられた.

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@Cottus_sp @hekotori_AQUA 湾奥はほとんどが黒斑が強い印象ですが、外海に近い地域では黒斑が少ないものも多いと聞いたことがあります。そもそも交雑由来ですし個体差、地域差は激しいようです。 写真は湾奥(筑後川水系)のものです。 https://t.co/OBKrRvjtX9 https://t.co/UokmU7vMvx https://t.co/wp9yNw6JrB

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