- 著者
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城下 荘平
熊本 博光
永平 幸雄
西原 修
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2004
明治になって欧米の先進諸国から近代機械技術が導入される以前の江戸時代に、我が国に存在したからくりは複雑な動きを、機械的な機構だけで行っている。それらの動きを実現している機械機構は、近代機械技術で用いられているものも含まれている。江戸時代の機械書、『機巧図彙』や『き訓蒙鑑草』にはそれらのからくりの機械機構が図解されているが、しかしながら、描かれている図が部分的過ぎて直感的に理解し難い。本研究では、からくりの中でも特に多様な機械機構を含んでいる"茶運人形"について、人形の各動作、すなわち、発進と停止の機構、足を前後に動かす機構、お辞儀をする機構、方向転換をする機構、逃し止め(エスケープメント)機構の理解し易い機構図を作成し、アニメーションを作成した。作成したアニメーションは京都大学総合博物館のウェブサイトに掲載した。そして、それらと近代機械機構を表しているルロー教育模型とを比較することで、江戸時代の機械技術を検証した。また、からくりやルロー模型に含まれている機械要素についても比較検討した。段返り人形についてもアニメーションを作成し、同様の検討を行った。これらの検討から、木や糸や鯨のヒゲで作られた江戸時代からくりの機械機構は高度ではあったが、金属を精密に切削加工する技術がなかったため、我が国においてからくりの機械技術が広く産業に応用されることはなかった、などのことが明らかとなった。