- 著者
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兼廣 春之
東海 正
渡部 俊広
- 出版者
- 東京海洋大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2004
脂肪族ポリエステル系の生分解性繊維3種と天然繊維の綿糸と絹糸を、(1)水深約2000mの深海底(鳥取沖カニ籠漁場)に10ヶ月間浸漬、及び(2)富山県水産試験場の富山湾深層水中(試験場内の飼育水槽(水温0.5℃)及び加圧タンク(水圧約20atm、水温約3.6℃))に約1年間浸漬し、繊維の強度低下と海水中における微生物分解の評価を行った。その結果、浸漬したすべての繊維で強度低下が起こり、深層水中での強度低下は綿>絹>脂肪族ポリエステル(PCL≧PHB/V>PBS)の順であった。繊維表面の電子顕微鏡観察の結果、繊維の強度低下は深層水中の微生物分解により起こっているものと推察された。この結果、低水温、高水圧の極限環境下の深層水中でもプラスチックの微生物分解が起こることが確認された。試験に用いた富山湾深層水からプラスチック分解微生物の単離を試みた結果、加圧タンク水から2株のPCL分解微生物(Toyama04とToyama10)の単離に成功した。さらに、他の海域(東京湾表層水)より単離したPCL分解菌2株(TUF-1とTUF-2)の計4株について、それらの生理生化学的特性、遺伝学的特性、プラスチック分解活性の比較を行った。遺伝子解析の結果、4株ともPseudomonas sp.と高い相同性を示し、そのうち、深層水より単離した2株と東京湾表層水より単離したTUF-2はPseudomonas denitrificansと非常に高い相同性を、TUF-1はPseudomonas pachastrellaeと高い相同性を示した。また、単離した4株の形態学的性状及び生理生化学性状を調べた結果、4株ともグラム陰性の桿菌で、運動性を有し、生理生化学性状(生育条件や代謝活性)はほぼ同様の性状を持つことがわかった。単離した4株についてPCLグラニュール液体培地により、4℃、10℃及び25℃におけるPCL分解能を調べた結果、深層水から単離した2株はともに25℃の室温での分解活性を示すとともに4℃及び10℃の低温でも分解活性を示した。一方、表層水から単離した2株は、25℃では分解活性が見られたものの4℃及び10℃の低温では分解活性は見られなかった。