著者
渡部 俊広 TOSHIHIRO WATANABE (独)水産総合研究センター水産工学研究所漁業生産工学部 Fishing Technology Division National Research Institute of Fisheries Engineering Fisheries Research Agency
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.16-23, 2005-01-15
参考文献数
32
被引用文献数
9 9

隠岐諸島西方の海域で,商業ベニズワイガニ籠と円形脱出口をつけた商業籠による長期浸漬(約 6 ヶ月間)漁獲試験を行い,逸失時の商業籠の漁獲サイズ選択性を推定した.選択性曲線は,多項分布の尤度を用いた SELECT モデルによって求めた.商業籠の 50% 選択甲幅は 100.8 mm,選択性スパンは 3.4 mm であった.甲幅 99 mm 以下の個体は,商業籠から脱出できるため,雌についてはゴーストフィッシングが生じる可能性はない.しかし,籠に入った甲幅 103 mm 以上の雄については,籠内に保持されたまま死亡する可能性がある.<br>
著者
松下 吉樹 本多 直人 藤田 薫 渡部 俊広
出版者
水産総合研究センター
巻号頁・発行日
no.10, pp.15-17, 2004 (Released:2011-03-05)

3種類の刺網を千葉県館山湾奥部の水域に20~37日間設置した。その後潜水観察を行い、羅網した生物と網成りの変化を記録した。刺網には27個体の魚類と甲殻類が設置後14日以内に羅網し、その後は観察されなかった。網目が展開している網の面積は、いずれの刺網も時間経過とともに減少して0となった。これは刺網が持つ漁獲機能のうち、特定の層を遊泳する生物の通路を遮断する機能と、生物を網目に刺させる機能が無くなったことを意味する。
著者
渡部 俊広
出版者
日本水産學會
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.16-23, 2005 (Released:2011-03-05)

隠岐諸島西方の海域で、商業ベニズワイガニ籠と円形脱出口をつけた商業籠による長期浸漬(約6ヵ月間)漁業試験を行い、逸失時の商業籠の漁獲サイズ選択性を推定した。選択性曲線は、多項分布の尤度を用いたSELECモデルによって求めた。商業籠の50%選択甲幅は100.8mm、選択性スパンは3.4mmであった。甲幅99mm以下の個体は、商業籠から脱出できるため、雌についてはゴーストフィッシングが生じる可能性はない。しかし、籠に入った甲幅103mm以上の雄については、籠内に保持されたまま死亡する可能性がある。
著者
藤田 薫 渡部 俊広 北川 大二
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.695-701, 2006-07-15
参考文献数
19
被引用文献数
5 7

調査用トロール網によるズワイガ二類の資源量の推定精度を向上するために,水中ビデオカメラを用いてグランドロープ(GR)に対するズワイガ二類の行動を観察した。2000年と2001年の6月に宮城県沖から茨城県沖において行った合計10回の調査の映像記録から466個体のズワイガ二類の行動を解析した結果,94%が静止したままGRに遭遇した。ズワイガ二類はペンネソトや手綱によって網口へ駆集されることはないと推測した。入網しなかった個体はGRの下方から抜けた。ズワイガ二類の漁獲はGRに大きく影響される。
著者
渡部 俊広 山崎 慎太郎
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.503-504, 1999-05-15
被引用文献数
10 8

曳航式深海用ビデオカメラによって, ベニズワイガニの分布を観察し, 生息密度観察法として本装置が有効な機能を有することを確認した。本装置は, バッテリーを内蔵し, タイマーによって作動する水中ビデオカメラ部とライト部, およびソリ型曳航台から構成される。ベニズワイガニの観察を隠岐諸島西側の水深約1000mの海域で, 1997年11月に2回行った。映像記録から観察されたベニズワイガニは, それぞれ25尾, 33尾であった。また, ベニズワイガニの行動に与える照明光の影響は少ないと推察した。
著者
渡部 俊広 渡辺 一俊 北川 大二
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.620-623, 2003-07-15
参考文献数
14
被引用文献数
5 6

曳航式深海用ビデオカメラを用いて,金華山から小名浜沖の水深約440m〜700mの海域に24箇所の調査点をもうけて,2001年5月から6月の日中にキチジを観察し,生息密度を推定した。合計30回の観察を行い,延べ1,650分の映像記録を得た。総観察面積は86,160m^2,キチジの総観察個体数は253個体であった。それぞれの調査点における1,000m^2当たりの観察個体数は,0〜11個体であった。曳航式深海用ビデオカメラを用いたキチジの観察から生息密度を推定できることを確認した。
著者
兼廣 春之 東海 正 渡部 俊広
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

脂肪族ポリエステル系の生分解性繊維3種と天然繊維の綿糸と絹糸を、(1)水深約2000mの深海底(鳥取沖カニ籠漁場)に10ヶ月間浸漬、及び(2)富山県水産試験場の富山湾深層水中(試験場内の飼育水槽(水温0.5℃)及び加圧タンク(水圧約20atm、水温約3.6℃))に約1年間浸漬し、繊維の強度低下と海水中における微生物分解の評価を行った。その結果、浸漬したすべての繊維で強度低下が起こり、深層水中での強度低下は綿>絹>脂肪族ポリエステル(PCL≧PHB/V>PBS)の順であった。繊維表面の電子顕微鏡観察の結果、繊維の強度低下は深層水中の微生物分解により起こっているものと推察された。この結果、低水温、高水圧の極限環境下の深層水中でもプラスチックの微生物分解が起こることが確認された。試験に用いた富山湾深層水からプラスチック分解微生物の単離を試みた結果、加圧タンク水から2株のPCL分解微生物(Toyama04とToyama10)の単離に成功した。さらに、他の海域(東京湾表層水)より単離したPCL分解菌2株(TUF-1とTUF-2)の計4株について、それらの生理生化学的特性、遺伝学的特性、プラスチック分解活性の比較を行った。遺伝子解析の結果、4株ともPseudomonas sp.と高い相同性を示し、そのうち、深層水より単離した2株と東京湾表層水より単離したTUF-2はPseudomonas denitrificansと非常に高い相同性を、TUF-1はPseudomonas pachastrellaeと高い相同性を示した。また、単離した4株の形態学的性状及び生理生化学性状を調べた結果、4株ともグラム陰性の桿菌で、運動性を有し、生理生化学性状(生育条件や代謝活性)はほぼ同様の性状を持つことがわかった。単離した4株についてPCLグラニュール液体培地により、4℃、10℃及び25℃におけるPCL分解能を調べた結果、深層水から単離した2株はともに25℃の室温での分解活性を示すとともに4℃及び10℃の低温でも分解活性を示した。一方、表層水から単離した2株は、25℃では分解活性が見られたものの4℃及び10℃の低温では分解活性は見られなかった。
著者
渡部 俊広 北川 大二
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.297-303, 2004-05-15
被引用文献数
4 8

調査用トロール網の漁獲からズワイガニ類(ベニズワイガニとズワイガニ)の現存量を正しく推定するために,袖先間隔を基準とした調査用トロール網の採集効率を推定した。調査は,太平洋東北沖において2000年6月に,曳航式深海用ビデオカメラを用いてズワイガニ類の生息密度を観測後,トロール網の操業を行った。トロール網の採集効率は,生息密度に対するトロール網の掃過面積と漁獲個体数から求めた密度との関係から回帰分析によって求めた。調査用トロール網の採集効率を0.30,その95%信頼区間を0.23〜0.37と推定した。
著者
山崎 慎太郎 日向野 純也 渡部 俊広
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.368-373, 2002-05-15
被引用文献数
1 2

貝桁網で漁獲された二枚貝にみられる足部の欠損(舌食い)の発生を低減するため,チョウセンハマグリの舌食いの発生機構について検討した。舌食いの発生率は水温の高い時期に高く水温の低い時期に低くなり,曳網速力の増大と共に高くなった。行動観察から,舌食いは貝が足部を伸張した状態で貝桁網の爪と砂に殼を圧迫されて発生すると考えた。潜砂している貝を引き上げてから底質へ潜入を開始するまでの時間は水温の高い方が短かく,潜砂深度は水温の高い方が大きかった。水温の高い時期には潜砂深度の増大と活発な潜砂行動により舌食いの発生率が高くなると考えた。舌食いの発生を抑えるには,曳網速力の低減が最も有効な方法である。