- 著者
-
岩野 正之
斎藤 能彦
赤井 靖宏
- 出版者
- 奈良県立医科大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2005
われわれは、間質線維化の進展に尿細管上皮細胞のfibroblast specific protein 1(FSP1)陽性線維芽細胞への形質変異(EMT)が重要な役割を果たすことを明らかにしている。また一方では、慢性虚血による尿細管上皮細胞の低酸素暴露が間質線維化の進展に関与すると考えられている。本研究で、われわれは低酸素応答で中心的な役割を果たすことが知られているhypoxia inducible factor-1α(HIF-1α)がEMTの協力な誘導因子であることを、初代近位尿細管上皮細胞を用いた実験系で明らかにし、HIF-1α阻害薬であるYC-1に初代近位尿細管上皮細胞におけるEMTの抑制効果があることを示した。また、Cre-loxPシステムを用いてHIF-1α遺伝子を尿細管上皮細胞特異的にターゲッティングした遺伝子改変マウスにおいては、一側尿管閉塞(UUO)マウスで誘導される間質線維化の進展が抑制されることを明らかにした。さらに、尿管に、連日30μ/g・mouseのYC-1を腹腔内投与することで、尿管閉塞後8日目のUUOマウスにおけるFSP1陽性細胞数は有意に現象し、タイプ1コラーゲン染色で評価した間質線維化面積も有意に減少することを示した。以上の結果より、慢性低酸素刺激で誘導された尿細管上皮細胞におけるHIF-1αの発現が、EMTによる間質線維化の進展に関与すること、およびHIF-1α阻害薬が間質線維化の新しい治療薬となる可能性が示された。