著者
池谷 裕二
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

脳回路の自己書き換え性を追求する上で、ニューロン同士のつくるシナプスに着目をしながら実験を進めて行ったところ、偶然にもアストロサイトが神経細胞の活動性に大きな影響をあたえることを見出した。アストロサイトはグリア細胞の一種であり、近年の研究では、脳の情報処理に多様な影響をもたらしうる動的な細胞であることはすでに報告されてはいる。しかし、多数のアストロサイトからなるアストロサイト・ネットワークがどのような挙動を示すかということについては未だ不明な点が多い。そこで、本研究では、急性海馬スライス標本における、アストロサイト・ネットワークの自発的な時空間活動パターンを、大規模カルシウムイメージング法によって記録した。その結果、隣接したアストロサイトどうしは、同期したカルシウム活動を示しやすく、ネットワーク全体として、局所的かつ動的な同期細胞集団を形成していることが見出された(本研究では、この活動を「アストロサイト・アイランド」と命名する)。薬理学的検討の結果、このネットワーク活動には、代謝型グルタミン酸受容体の活性化が関与し、神経活動とは独立に生じうることが明らかになった。また、ケージド・カルシウム化合物を用いて数個のアストロサイトを光刺激すると、周辺のニューロンにおいて、数mVの静止膜電位の脱分極と、自発的なシナプス入力頻度の増加が観察された。本結果は、アストロサイト・ネットワークの活動パターンを、従来にないほど大規模かつ詳細に記述するものであり、アストロサイト-ニューロンコミュニケーションを考察する上で重要な知見であると考えている。

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