著者
高久 史麿 平井 久丸 岡部 哲郎 春日 雅人 浦部 晶夫 大沢 仲昭
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1984

白血病においても他の悪性腫瘍の場合と同様に活性化された癌遺伝子、すなわちtransforming geneが存在することが証明されている。transforming geneの証明には、通常、培養NIH3T3細胞を用いるtransfection assayが行われているが、われわれはその方法を用いて32例の白血病症例を対象にして患者白血病細胞DNA中のtransforming geneの有無を検索し、4例でその存在を確認、この中の2例(慢性骨髄性白血病ならびに急性リンパ性白血病各1例)で遺伝子のクローニングを行って、いずれもN-ras oncogeneの34番目のヌクレオチドがguanineからthymineに変わっており、この点突然変異がN-ras oncogeneの活性化すなわちtransforming geneの存在にむすびついていることを明らかにした。また、腫瘍細胞由来のDNAをtransfectしたNIH3T3細胞をヌードマウスに移植して、腫瘍の形成によるtransforming geneの検索をも行い、前白血病状態と呼ばれる病態でも、その半数でtransforming geneを証明した。各種の分化、増殖因子やレセプターと癌遺伝子との密接な関係が注目され、癌遺伝子の質的、量的変化が各種疾患の病態の発現に重要な役割を演じていることが明らかになってきているが、われわれの行った血液細胞における分化・増殖因子とレセプター、癌遺伝子ならびにレトロウイルスなどを中心とする研究は今後、白血病の病態の解明に大きく寄与するものである。

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