著者
赤澤 薫 柏原 健一
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.3-7, 2019-04-30 (Released:2019-08-31)
参考文献数
8

誤嚥性肺炎と診断されて入院し,摂食嚥下リハビリテーション開始時には経口摂取不能であったが,入院前には3食経口摂取であったパーキンソン病(Parkinson's disease: PD)37 例について,3 食経口摂取再開に関連する要因を検討した.退院時に3 食経口摂取となった17 例はそうでない20 例に比べ,年齢が若く,Hoehn-Yahr 重症度が低値,退院時の運動FIM,入院時の認知FIM,退院時の認知FIM,運動FIM 効率が高値であった.また,嚥下機能と運動機能の改善度には相関関係を認めた.誤嚥性肺炎後のPD 患者でも,認知機能が高い患者では,運動機能の改善と経口摂取の再開に至りやすいと考えた.
著者
中村 達也 藤本 淳平 鹿島 典子 豊田 隆茂 鮎澤 浩一 小沢 浩
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.185-192, 2018-12-31 (Released:2019-04-30)
参考文献数
29

【目的】重症心身障害児者の舌骨は,嚥下造影検査(VF)で鮮明に投影されないことも多く,咽頭期嚥下の特徴が不明確である.そこで,本研究では,重症心身障害児者の咽頭期嚥下の特徴を明らかにするために,舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置を健常成人と比較した.【対象と方法】健常成人19名(健常群)と重症心身障害児者41名(障害群)について,ペースト食品3~5 mLの自由嚥下時のVFを撮影し,30フレーム /秒で動画記録した.VF動画をフレームごとに解析し,舌骨挙上開始時と舌根部と咽頭後壁の接触時の特定,舌骨挙上開始時の特定が可能だった者の舌骨挙上開始時から舌根部と咽頭後壁の接触時までの時間間隔の測定,誤嚥の有無の評価をした.さらに,舌骨挙上開始時および舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置を,喉頭蓋谷を基準に到達前・到達・通過後の3段階で評定した.統計解析は,一元配置分散分析およびFisher’s exact testを用いて比較した.【結果および考察】舌骨挙上開始時から舌根部と咽頭後壁の接触時までの時間間隔の群間差は認めなかった.各群の平均値は0.105~0.231秒であり,舌骨挙上開始時と舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置は92.8%の対象者で一致していた. 舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置は,健常群では到達前:7名(36.8%)・到達:12名(58.3%)・通過後:0名,障害群では到達前:2名(4.9%)・到達:18名(43.9%)・通過後:21名(51.2%)であり,群間差を認めた.これより,障害群は健常群に比較して,嚥下開始前に食塊が深部に到達しやすいと考えられた.【結論】重症心身障害児者は健常成人よりも,ペースト食品を嚥下する際に,舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置が喉頭蓋谷を通過する対象者数が多かった.