著者
原田 眞澄
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 = Journal of Chugokugakuen (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.51-57, 2017-06-16

私は,タッチケアを特集する雑誌を見たことをきっかけに,どのようなものか興味をもった。タッチケアとはどのようなものなのか,肌に触れるスキンシップのことを指すのであろうか,抱っこやおんぶやベビーマッサージなども含むのであろうかと様々な疑問をもった。そこで,平成29年2月12日~3月16日の期間,タッチケア・抱っこ・おんぶをキーワードに中国学園図書館で文献検索を行った。その結果,タッチケアという言葉には狭義と広義があることがわかった。狭義では,アメリカマイアミ大学のTouch Research Institute のタッチセラピーを起源としたもので,1999年吉永により日本に伝えられたものをいう。一定の圧力をかけながら子どもの全身をゆっくりとマッサージするふれあいの方法であり,従来から言われてきたスキンシップや,赤ちゃんマッサージ全般を指しているものではないということがわかった。また,広義では子どもの体に(あるいは肌に)触れること全般(たとえば,子どもに対する整体や子どもの気持ちに寄り添ったスキンシップ,ベビーマッサージなど)が包括されていた。タッチケアとベビーマッサージを比較すると,目的や手技に大差はなかった。どちらも赤ちゃんの肌に指や手のひらで触れ,一定の圧力でマッサージしながらふれあえるものである。する側,される側のどちらにとっても情緒が安定する効果があることと親子の絆が深まることがわかった。しかし,タッチケアが未熟児・新生児も対象とする点で対象月齢が広いこと,資格取得・講習会などが無料で営利を目的としていない点で,ベビーマッサージと違うことがわかった。子どもは,抱っこやおんぶによって大人と広範囲に肌を接触してもらうこと,手のひらで優しくマッサージしてもらうこと,トントンとリズミカルに皮膚に刺激をされることなどを好む。「皮膚は露出した脳」といわれ,大きな意味がある。近年,スマホで子育てする親も少なからず見受けられるが,一緒にいるときには子どもと肌を密着すること,心地よい接触の仕方をすること,子どもの状態をしっかり感じ取ることが大切であることが分かった。
著者
松田 文春 二階堂 修以知 福森 護
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 = Journal of Chugokugakuen (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.195-201, 2007-06-16

知的障害のある生徒にとって,自己決定に基づく活動が円滑に行えることは,学校教育終了後の主体的な社会参加を可能にするための基礎的な力となる。本研究では,この自己決定の過程において,とくに選択・決定場面に焦点を当てた。複数の選択肢の中から一番欲するものを明確な自己の意思に基づいて選択できるための選択肢の提示方法,そして,選択・決定後の活動に向けてどのような支援が生徒の主体性を引き出すことができるのか,その具体的実践論について考察した。
著者
國田 祥子 山本 あゆみ
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 = Journal of Chugokugakuen (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.13, pp.131-140, 2013-06-16

子どもの問題行動の背景には,自己表現力や自己抑制力の欠如があると言われている。本研究では,この2者の関係について検討した。保育者および小学校教諭を対象に,担任している子どもについての質問紙調査を行った。回収した質問紙を学年によって幼児,低学年,中学年,高学年に分類し,適切な自己表現であるアサーティブな自己表現および不適切な自己表現であるノンアサーティブ,アグレッシブな自己表現の生起頻度について平均得点を算出した。さらに,自己抑制を構成する行動の抑制,注意の移行,注意の焦点化の3因子についても平均得点を算出した。自己表現に関する得点を説明変数,自己抑制に関する得点を従属変数とする重回帰分析を行ったところ,アサーティブ得点から自己抑制の3因子に対して概ね負のパスが見られた。このことから,適切な自己表現を行っている子どもほど自己抑制ができないと捉えられていることが示唆された。保育現場や教育現場においては,本来独立しているはずの自己表現と自己抑制が,対照的なものと捉えられているのかもしれない。保育者や小学校教諭は,子どもの自己表現をより肯定的に捉えられるよう,配慮していく必要があるだろう。
著者
小倉 毅 須貝 静 小倉 譲
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 = Journal of Chugokugakuen (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.21-30, 2008-06-16

いきがい対応型デイサービス利用者140名に調査をした結果,前期高齢者に旅行希望が多く,国内外に関係なく観光ツアーに希望が多かった。また,国内旅行においては,夫婦や家族と旅行するより,「気のおける友人」と楽しい旅行をしたいという要望が強い。逆に海外旅行では,夫婦や家族といった身内との旅行を望んでいる。また,オーダーメイドの手作り旅行や目的地のみを設定する旅行では,兄弟や親戚,ご先祖様の供養にお墓参り,思い出の地に行きたいといった希望がある。旅行日程は「2泊3日」が最も高く,次いで「1泊2日」,「日帰り旅行」である。旅行中の心配事については,「目的地までの移動時間・手段を考えると体力に不安,荷物を運ぶのが不安,トイレが近いので,休憩回数・時間がきになる。また,後期高齢者になるほど,付き添い者がいてほしい」という結果がでた。これらの結果をもとに,「長崎に単身赴任中の息子に会いに行きたい」と願う89歳(男性)のエスコートヘルパー旅行を実施した。長崎で息子に会えた喜び,観光,希望のかなった食事に満足して,「一生懸命遊び,人生を楽しむことこそ生きがいである」という本人の人生観に基づいた旅行が実施できた。今後の課題として,旅行先の移動手段,お手洗いの整備状況,入浴・食事の手配と介助方法,疾患状況を把握するためのアセスメント技術,さらには,旅行者の「生きがい感(人生観)」を理解する技術,車いすの操作方法,準備物の運搬方法を確立する必要がある。
著者
小野 文子 廣畑 まゆ美
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 = Journal of Chugokugakuen (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.13, pp.177-182, 2013-06-16

2013年3月に執筆した「芸術と社会の関わりを強めるために-地域の音楽活動を実例に-」の調査では,地域の音楽活動や先人の音楽活動の実例をもとに,現代における音楽と社会の関わりの希薄さを述べた。比較対象として山田耕筰の調査を行っていたが,山田の音楽の発展の陰には,彼の「すぐれた時代を読む力」があったことがわかった。明治から大正にかけて,列強諸国に追いつこうと必死の政府,企業の方針が文化にまで及んだことが,芸術家にとっては追い風となっていた。複雑化する中で,近年の音楽はどのような時代背景とともに今の姿になったのか?また今後,音楽文化が発展していく中でどのようなことが課題になるのか?明治,大正,昭和の日本における音楽と社会の動きを考察しながら,近年の音楽を社会的な視点を交えて考察する。
著者
尾崎 恭子
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.4, pp.61-67, 2005-06
被引用文献数
2

幼児教育において「絵本」は重要な保育内容の1つとして位置づけられているが,絵本は幼児の精神発達にどのような役割を果たしているのだろうか。本研究の結果は,幼児の絵本体験における発達を根底から支えているのが,"想像力"であり,しかも,それらの想像力が創造性や発明,発見へとつながっていくことが明らかになった。また,絵本を通して子どもたちの想像力を思いっきり飛翔させ,"感動"する心をくり返し体験させるためには,読み手である保育者の感動とともに,すぐれた絵本の絵と文が子どもたちの想像力を豊かにするための大きな役割をになっていることが分かった。そうした観点から,保育者はどのように絵本を選んだらよいかについて,文については5つのポイント,絵については10のポイントを具体化した。さらに,絵本の読み方をどのように工夫すればよいかについては,9つのポイントを具体化した。最後に,「ぐりとぐら」の絵本の実践例から,絵本を通して生活体験をより広げ,絵本の楽しみをより深めるための保育者の言葉かけや手立てを明らかにした。