著者
小野 文子 間島 秀徳
出版者
大学美術教育学会
雑誌
美術教育学研究 (ISSN:24332038)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.129-136, 2016 (Released:2017-03-31)
参考文献数
16

本稿は,「日本画とはなにか」という問いに焦点をあて,現代と明治期それぞれの時代におけるグローバリゼーションに接点を見出し,明治期に始まる政策としての「日本画」創出について考察したものである。「日本画」の誕生には,明治期に欧化主義のなかで西洋の価値基準を取り入れ,新たに自国の絵画を作りだそうとした歴史的背景があり,お雇い外国人アーネスト・F・フェノロサの関与は,このことを明確に表している。さらに,フェノロサと金子堅太郎,J.McN.ホイッスラーとの関わりに着目すると,「日本画」の創出が,国家戦略,そしてグローバリゼーションによって広がる多様な価値観のなかで誕生したことが分かる。本稿では,対西洋としての「日本画」について,その誕生の歴史的経緯を吟味し,1980年代から90年代にかけての「日本画」の再考について論じた。
著者
小野 文子
出版者
大学美術教育学会
雑誌
美術教育学研究 (ISSN:24332038)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.97-104, 2017 (Released:2018-03-31)
参考文献数
33

19世紀後半,日本,西洋ともに,異文化と出会うことで自らの伝統を見直し,新しい芸術表現を探究した。J. McN.ホイッスラーは,イギリスのジャポニスムにおいて,最も早い時期から日本美術への傾倒を示した画家であり,東西の美の普遍性と融合を唱えた。本稿では,ホイッスラーを出発点として,東西の芸術文化交流における,チャールズ・ラング・フリーア,アーネスト・フェノロサ,金子堅太郎の関わりに焦点を当て,その広がりについて吟味し,画家,パトロン,お雇い外国人,そして官僚が,19世紀後半から20世紀にかけてのグローバリゼーションの中で,国境を超えた美の広まりに,それぞれの立場から歴史的役割を担っていたことを明らかにした。また,東西の芸術の源流を,西欧芸術の美の規範である古代ギリシャに求め,「普遍的に広がる美」を肯定したことを示した。
著者
長田 久文 蔡 培梁 太田 ふさ 殿村 た喜子 伊瀬知 幸代 中居 澄子 小野 文子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.98-101, 1979-02-25

1.はじめに 母乳栄養の確立が論じられてから,各方面より数多くの報告がみられ,全国的に普及した感がある。横浜市愛児センターにおいても,従来よりこの問題にとりくみ,授乳方法の検討からはじまり,乳汁分泌を促進および抑制する因子について検討を行なってきた。 第17回日本母性衛生学会において,「乳汁分泌に対する各種薬剤の影響」をはじめとし,社会的因子,環境的因子,行政的因子等について報告した。
著者
小野 文子 廣畑 まゆ美
出版者
中国学園大学/中国短期大学
雑誌
中国学園紀要 = Journal of Chugokugakuen (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
no.13, pp.177-182, 2013-06-16

2013年3月に執筆した「芸術と社会の関わりを強めるために-地域の音楽活動を実例に-」の調査では,地域の音楽活動や先人の音楽活動の実例をもとに,現代における音楽と社会の関わりの希薄さを述べた。比較対象として山田耕筰の調査を行っていたが,山田の音楽の発展の陰には,彼の「すぐれた時代を読む力」があったことがわかった。明治から大正にかけて,列強諸国に追いつこうと必死の政府,企業の方針が文化にまで及んだことが,芸術家にとっては追い風となっていた。複雑化する中で,近年の音楽はどのような時代背景とともに今の姿になったのか?また今後,音楽文化が発展していく中でどのようなことが課題になるのか?明治,大正,昭和の日本における音楽と社会の動きを考察しながら,近年の音楽を社会的な視点を交えて考察する。
著者
小野 文子
出版者
中国学園大学
雑誌
中国学園紀要 (ISSN:13479350)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.125-129, 2006-06-16

音楽の原点は,言葉を話すのと同じように自分の思いを音にのせ,人と人が繋がることであろう。人は「聴く」ことから音楽体験を始め,聴いた曲を「歌う」ことを試みる。「歌う」ことは音楽活動の基本である。
著者
小野 文子
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

地域美術館と教育現場との連携によっで行う鑑賞教育プログラムの開発を目指しで,今年度は以下のような研究を行なった。(1)長野県内の小・中学校を象として行なった,鑑賞教育に関するアンケート調査の結果の分析,及びアンケート回答者への結果報告。(2)長野県に所在する美術館・博物館を対象として行なった教育普及活動に関するアンケート調査の結果の分析。(3)学校教育の現場において,より充実した鑑賞学習を実現するために,信州大学教育学部附属長野中学校において,写生会の事前授業として鑑賞の時間を設け,第1学年(240名)全員に風景画を鑑賞する授業を行った。この授業では,風景画の歴史と鑑賞のポイントについで講義した後,長野県信濃美術館の協力を得て,東山魁夷の作品を美術室に持参してもらい,作品鑑賞を行なった。この写生会のための事前授業は附属学校の美術を担当する教諭との共同研究の一環のでもあり,来年度には,教育実習生のための鑑賞教育の教材開発へと発展させる方向で研究を進めることを合意した。(4)大学の講義である「美術史・美術理論研究」において,学習指導要領で定められている鑑賞学習について吟味すると共に,教育現場においてより有効,かつユニークな鑑賞教育を行うことを目指した教材開発を試みた。また,学生が考案した教材を用いて,須坂市内の小学校の協力を得て実習を行なった。尚,鑑賞対象として,信州大学教育学部で所蔵している彫刻作品を用いた。