著者
田巻 義孝 加藤 美朗 堀田 千絵 宮地 弘一郎
出版者
中部人間学会
雑誌
人間学研究
巻号頁・発行日
vol.14, pp.43-62, 2015

本稿では, Kanner(1943, 1944)が自閉的な孤立を示す子どもの症例を(当時の精神医学の学説を踏まえて)早期幼児自閉症と命名し, DSM‐Ⅲ(APA, 1980)で自閉性障害が広汎性発達障害として認定された経緯などを概観した. また, 自閉性障害のサブタイプとして, ①高機能自閉症, 中機能自閉症, 低機能自閉症, ②孤立型, 受動型, 積極奇異型, ③折れ線型自閉症の概要を記述した. さらに, Asperger(1944)の報告した自閉性精神病質を, Wing(1981)がアスペルガー障害と名づけて英語圏に紹介したが, この紹介が自閉症研究に及ぼした影響を論述した.DSM‐Ⅳ(APA, 1994)でアスペルガー障害は新たな臨床単位として認められたが,主に疾病概念の理解や定義が研究者ごとに異なることから, アスペルガー障害の外的妥当性に関する研究領域における議論は決着していない. これらに併せて, 自開性障害の関連障害(サヴァン症候群, 意味・語用論障害, 症候性自閉症), 自閉性障害と注意欠陥/多動性障害の関係について考察した.