著者
森 俊夫
出版者
京都文教大学
雑誌
人間学研究
巻号頁・発行日
vol.7, pp.89-101, 2006

欧米の1940年代から60年代にかけてのファインアートの分野では、作品を構成する諸要素の中で、純粋な造形性を追求することに重点が置かれてきた。その後、様々な動向を経て、1980年代以降は、物語性やメタファーなど言説性が重視される傾向にある。これはポスト・モダニズムの諸相と考えられている事柄とも一致している。この論文では、英国の現代アート作品における物語性を分析した上で、その特徴について考察をしている。
著者
今井 [カン]弌
出版者
京都文教大学
雑誌
人間学研究
巻号頁・発行日
vol.8, pp.77-90, 2007

亡き祖母の父性的精神像である霊に取り付かれた女子の変容過程と魔女の魔法によって老婆の姿に変えられた「ハウルの動く城」のヒロインであるソフィーの変容過程とを比較した。思春期危機は変容のための危機である。思春期の女子は親から守られなければならない。しかし、母親との結びつきが弱い女子は完全な女性像である老婆と出会う必要がある。彼等は老婆の守りの中で悲しみや怒りを体験し、大人の女性へと変容するのである。
著者
杉本 星子
出版者
京都文教大学
雑誌
人間学研究
巻号頁・発行日
vol.7, pp.115-126, 2006

ニュータウンは生活空間であるとともに住宅市場でもある。この市場の基盤となる都市の「トポグラフィー(地形)」は、土地や建物といった物質的なものと、それらに付与され、それらから読み取られる理念やイメージといった想像的なものからなる。それはまた、人びとの社会的行為や関係の遂行を通して産出され、維持され、改変されていく。本稿は、京都府南部に建設された向島ニュータウンのトポグラフィーが、かつてその立地に広がっていた巨椋池の土地の記憶を組み込みながら社会的に構築され、またそれがどのように変わりつつあるかを考察する事例研究である。
著者
田巻 義孝 加藤 美朗 堀田 千絵 宮地 弘一郎
出版者
中部人間学会
雑誌
人間学研究
巻号頁・発行日
vol.14, pp.43-62, 2015

本稿では, Kanner(1943, 1944)が自閉的な孤立を示す子どもの症例を(当時の精神医学の学説を踏まえて)早期幼児自閉症と命名し, DSM‐Ⅲ(APA, 1980)で自閉性障害が広汎性発達障害として認定された経緯などを概観した. また, 自閉性障害のサブタイプとして, ①高機能自閉症, 中機能自閉症, 低機能自閉症, ②孤立型, 受動型, 積極奇異型, ③折れ線型自閉症の概要を記述した. さらに, Asperger(1944)の報告した自閉性精神病質を, Wing(1981)がアスペルガー障害と名づけて英語圏に紹介したが, この紹介が自閉症研究に及ぼした影響を論述した.DSM‐Ⅳ(APA, 1994)でアスペルガー障害は新たな臨床単位として認められたが,主に疾病概念の理解や定義が研究者ごとに異なることから, アスペルガー障害の外的妥当性に関する研究領域における議論は決着していない. これらに併せて, 自開性障害の関連障害(サヴァン症候群, 意味・語用論障害, 症候性自閉症), 自閉性障害と注意欠陥/多動性障害の関係について考察した.
著者
鈴木 七美
出版者
京都文教大学
雑誌
人間学研究
巻号頁・発行日
vol.7, pp.75-87, 2006

デンマークに特徴的な余暇活動は、神学者・歴史家のグルントヴィに率いられた19世紀の民衆運動と農民教育を源流とし、現在は、立ち止まりや学び直しの機会を提供すると同時に、個々人を地域に結びつけ市民として生かす戦略の役割を果たしている。本稿では、余暇活動の実践にユニークな役割を果たしてきた「人生の学校」とも呼ばれるフォルケホイスコーレ、コーディネーターであるペダゴウを養成する生活指導教員養成大学に関する現地調査をとおして、余暇とライフスタイルの可能性について考察を深める。