著者
山崎 守一
出版者
仙台電波工業高等専門学校
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究は、ジャイナ教白衣派の聖典語であるアルダ・マガダ語で書かれたUttaradhyayana-sutra(N.V.Vaidyaの刊本:Uttaradhyayana-sutram,Poona,1959)の文法解析を、同僚の逢坂雄美教授(理学博士)の協力を得ながら、パーソナルコンピユ-タによって解明することを目的として遂行された。まず、Uttaradhyayana-sutraに現れる全語葉の正順と逆引索引を作成した。アルダ・マガダ語には日本語における所謂|て・に・を・は|がなく、名詞の変化は総て語尾変化で表されるため、これらの索引が必要不可欠である。また、動詞の分類では、単語の語尾に着目して整理された逆引索引が重要な役割を果たすことになる。動詞の分析を実行するに当たって動詞の語尾変化と動詞語幹のデータベースを作成した。語尾情報はR.Pischelの文法書から収集した。語棄分析に動詞情報のみ使うと、常にデータベースの全情報との比較検索を必要とするため、多大な演算時間を消費してしまうので、このことを避ける目的で不変化詞(接続詞、副詞、間投詞)に関するデータも蓄積した。データベースに収録された種々の語尾と単語とのパターンマッチングを行い、活用形を決定し、それらの語尾変化を新たなデータベースに収録した。名詞の格変化についても類似の手法によって解析できるようにした。ただ、現段階では本プログラムでは、品詞・態・格等は異なるが、同じ語尾変化をする単語(語尾変化のパターンが適合するもの)については総て出力されるので、今後マッチングデータの非決定数を限りなく少なくしていき、最終的に一つに絞り込めるよう、判定条件を整理していかなければならない。同様にして、他の4つのテキスト(Ayaramga-Sutta,Suyagadamga,Dasavcyaliya,Isibhasiyaim)も文法解析して十分な量の規則を収集・包括し、近い将来、アルダ・マガダ語の文法規則を集大成したいと考える。
著者
山崎 守一 NORMAN K.R. 宮尾 正大 逢坂 雄美 NORMAN K.R
出版者
仙台電波工業高等専門学校
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

本研究は、オックスフォードの「パーリ文献協会」(Pali Text Society=PTS)から刊行されている全パーリ文献の正順・逆順語彙索引の作成及びそのソフトウェアを開発することを目的としている。この研究目的を達成するため、韻文作品の代表として『ダンマパダ』(Dhammapada 423 詩節)を、また、散文作品として膨大な分量を持つ『ヴィナヤ』(Vinaya 全5巻・総ページ数1,588)を選び、パーソナルコンピュータを用いて、これらの完璧な正順と逆順の語彙索引を作成・完成させることを目指して遂行した。初年度は、ノーマン教授とヒニューバー教授により校訂・出版された『ダンマパダ』(PTS 1994)の語彙索引を作成した。ノーマン教授から、教授自身の作成によるパーリ語フォント(ノ-ミンフォント)を使用して入力された『ダンマパダ』を受け取り、われわれが作成したパーリ語フォントに書き換え、語彙(Word)の「正順索引」と「逆順索引」を作成した。さらに、これまでに開発したプラークリット語の詩脚索引作成プログラムを一部改良することによって、詩脚(Pada)の「正順索引」と「逆順索引」をも作成した。このことによって、韻文作品の語彙と詩脚の索引印作成するプログラムの妥当性が確認された。これら4種類の索引、すなわち語彙の「正順索引」と「逆順索引」、それに詩脚の「正順索引」と「逆順索引」は、いずれも写真製版出版が可能な索引であり、これらの索引を、「パーリ文献協会」に投稿した。そして、それらは同協会の評議委員会による査読を受け、1995年にIndexes to the Dhammapadaと題され、単行本として出版された。この書物は、世界中のパーリ文献学者及び仏教学者の研究に稗益することであろう。次に、オルデンベルクによって編纂された『ヴィナヤ』の研究にとりかかった。『ダンマパダ』と同様、語彙索引作成のためのノ-ミンフォントで打ち込まれたフロッピ-を、われわれのフォントに書き変えて解析処理をしたのであるが、このテキストには大量の省略文字があり、さらに明らかなミスプリントも多数存在しており、これらの問題点を解消することが先決事項となった。このため、逢坂の作成したプログラムを走らせることによって、まずプレリミナルな語彙索引を作成した。この出力結果をノーマン教授に送り、ノーマン教授がチェックしたものを、こちらのチェック結果と比較照合する。お互いにミスを見い出すことができなくなるまで何度もこのようなやり取りを繰り返し、コンピュータ上に正確なテキストを形成することを目指した。しかし、この作業が進むにつれて、PTS版『ヴィナヤ』の読みの訂正をどのようにするかの問題も起こり、ケンブリッジで直接討議することによってこの種の問題解決の基本方針を確認した。さらに、教授の来日中に、得られた結果を時間をかけて慎重に吟味し、パーリ語の語順(Word Order)プログラムの確認、同一語彙の異表記の取り扱い、研究者が最も使用しやすい形態にするためのレイアウト等についての共同討議を行った。また、これまでの一連の研究によって開発された、韻文用プログラムと散文用プログラムを使用して、膨大な量の全パーリ・テキストの完全な語彙索引と詩脚索引作成の実現に向けて、解決すべき問題点を建設的に討議した。このようにして、『ヴィナヤ』のテキスト・データベース構築上に横たわる種々の問題を解決し、省略文字の全文字化を行い、コンピュータ上に『ヴィナヤ』の完全なテキストを作成した。そして、このテキスト・データベースに基づいた語彙索引を作成し、独自に開発された語彙プログラムが3.5メガバイトもの大量な散文テキストでも処理できるプログラムであることを確認した。この語彙索引は、『ダンマパダ』と同様の手続きを踏み、「パーリ文献協会」からIndex to the Vinaya-Pitakaと題して出版され、コーン博士の辞書(New Pali-English Dictionary)編纂にも使用されており、その有用性が実証されている。現在、『ディーガ・ニカーヤ』(Digha-nikaya)の語彙索引作成に向けて、このテキストのテキスト・データベースを構築する作業に取りかかっている。
著者
笹森 崇行
出版者
仙台電波工業高等専門学校
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

送電線や鉄塔等の送電設備が電磁環境に及ぼす影響の1つとして,中波ラジオ放送所の近傍にある送電設備の工事や保守点検を行うときに,送電線に高い誘導電界が発生する場合があることがあげられる.普通は工事や保守点検時にも停電を避けるために,作業を行う側の回線は送電を停止するが,もう一方の回線は送電したまま行うのが一般的である.しかしこの状態のままでは,隣の送電線を流れる電流からの誘導によって,作業を行う送電線に誘導電流が発生して危険である.そこで,この商用周波数の誘導電流を防止するため,作業をする側の送電線は鉄塔に接続することになっている.しかしながら,中波ラジオ放送所の近傍にある送電設備においては,送電線と鉄塔が接続されることによってできたループがラジオ放送波と共振して高い誘導電界が発生する場合があることが報告されている.本研究では,隣の送電線を流れる電流による誘導と放送波による誘導の両方を低減するための対策として,送電線と鉄塔の接続部にコイルを取り付ける方法を提案した.また,理論解析によって効果的なコイルの値や取付場所について検討し,実測によってその効果を確認した.その結果,適切な値のコイルを適切な位置に取り付けることによって,放送波による誘導電界は大きく低減できることが確認できた.さらに,送電線にコイルを取り付けても誘導電界強度が低くならない径間があることも明らかになってきた.このような問題点があることなどから,本研究を押し進めて送電設備が電磁環境に及ぼす影響の解析と対策をさらに明らかにしていく必要があると考えられる.
著者
名久井 孝義
出版者
仙台電波工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

この報告書では,研究課題に関して以下の観点から日本の明治期における女性スポーツ(主にボールゲーム,体操,柔道,戸外運動<アウトドア・スポーツ>)の性差について歴史的事実の掘り起こしと言説分析を行った.その1つは,生物学的性や性差を形成してきた医学・衛生学的言説と女性性や性差の社会規範を形成してきた社会・教育的言説の対峙性と相補性に着目した.2つ目は,体操を含めた欧米スポーツと日本的スポーツ,さらに国内外の戸外運動と女性性・性差の創造や変革との関連性に着目した.しかもその分析は,制度的資料以上にスポーツする側の女性が立ち現れる教育現場(ローカルな資料)の資料に基づいた.この論文では,既存の制度史研究での知見を補う女性スポーツの歴史的展開を提示した.研究の結果,女性スポーツにおける女性性や性差の創造と変革には,医学・衛生学的言説(科学的知)と社会・教育的言説(思想・実践的知)が時系列的に対立物の統一となって立ち現れた.しかも社会・教育的言説による女性性・性差(いわばジェンダー)の変革の転機は,前世紀初頭の国民国家形成期に胎動し,高等女学校の制度化と連動していた.明治期の女性スポーツでは,欧米女性スポーツと日本的スポーツが,「稽古の思想」「技術化の思想」という形で発見・創造され,両者が文化習合するなかで女性性を「品性=淑女=レディ」を育む教育方法として位置づけられて展開した.加えて,女性の自転車乗り(サイクリング)・登山(遠足を含む)などの戸外運動がステータス・シンボルとなり,女性へのスポーツ解放を促進した.