著者
熊代 克巳 千葉 直史 塚原 卓郎
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.15-26, 1990-07-25

1. 飽和点以上の光量下で測定した場合の,リンゴ「ふじ」,ニホンナシ「幸水」,モモ「大久保」及びブドウ「ナイヤガラ」の葉の純光合成速度と,同化箱内気温,葉温,同化箱内湿度,蒸散速度,気孔伝導度,葉内CO2濃度,葉肉伝導度(純光合成速度/葉内CO2濃度)及び水利用効率(純光合成速度/蒸散速度)との相関を求めた。 4品種とも,気孔伝導度と純光合成速度との間には高い正の相関が認められ,湿度及び蒸散速度と純光合成速度との間にも正の相関が認められた。 気温及び葉温と純光合成速度との相関は低かったが,4品種とも,気温が約29℃あるいは葉温が約31℃を越えると,温度の上昇とともに純光合成速度が急低下する傾向が認められた。 葉肉伝導度と純光合成速度との間には,4品種とも,高い正の相関が認められた。水利用効率と光合成速度との間には,「ふじ」においてだけ正の相関が認められた。そして,気温と水利用効率との間には,4品種とも,高い負の相関が認められた。 2. 飽和点以上の光量及び気温が約25~29℃の条件下で,リンゴ,ニホンナシ,セイヨウナシ,モモ及びブドウの合計18品種について,純光合成速度,蒸散速度,気孔伝導度及び水利用効率を比較した。 18品種の純光合成速度は,13.7~16.7 μmol ・m-2・s-1(21.7~26.5 mg ・dm-2 ・hr-1)の範囲にあり,種類間の順位は高いほうからほぼ,リンゴ,セイヨウナシ,ニホンナシ,モモそしてブドウの順であった。 蒸散速度,気孔伝導度及び水利用効率は,種類・品種間に有意差は認められなかった。
著者
清水 裕子
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-46, 2006-03

わが国は国土の70%が森林に覆われ,その40%が人工林であるが,その多くは昭和35年ごろの拡大造林期によって造林された。しかし,昭和40年代後半からの林業の低迷により,国内村の供給低迷が恒常化し,広大な人工林で間伐時期を超過した放置林分の増加が問題となって現在に至る。一方,1970年代以降,森林の多目的利用に対する関心が高まっている。中でも森林の保健・休養利用であるキャンプやエコツーリズムのようなアウトドア・レクリエーション利用や,自然観察,林間学校のような環境教育など,現代の多様な価値観に伴った多様な需要が増加している。こうした需要に対応できる,魅力的で風致を感じる自然的要素の濃い森林を創出する事は急務であるといえる。 このような森林の風致向上を目的とした施業方法を「風致施業」という。現在,放置人工林を風致の感じられる森林へと改良向上する技術が必要とされている。「風致施業」は明治時代の林学導入と共にわが国に導入された「森林美学」から端を発し,昭和10年前後までには保健休養・風景維持のための施業方法としてその定義が確立し,研究がなされたが,第二次世界大戦によって中断された。戦後復興期の森林は経済復興の基礎資材生産の場として位置付けられたが,1970年代頃からようやく森林の風致的取扱いの研究が社会の要求にこたえる形で再開された。しかし,長い間の研究の中断や社会のニーズの変容で森林を取り扱う際に,「風致施業」は現在,さまざまな意味として捉えられており,その明確な目的の定義と方法論としての技術の体系的な展開は困難を極める。さらに森林は国土の被覆として,林業とレクリエーションなどの多目的利用に二分されるものではなく,両立しなくてはならないことが大きな課題である。 本研究では,この「風致施業」を戦前の風致研究に立ち返り,かつ現代の社会状況に合わせて定義づけをし直し,「風致施業」の継承と技術的な展開の可能性を考察することを目的とした。特に技術的な展開可能性について,林業との両立の課題から経済性の高いヒノキ林を取り上げることとした。 本論文の構成は5章からなる。 第1章では戦前を中心に現代に至るまでの「風致施業」の系譜を考察すると共に,現在問題であり,かつ地方再生の可能性を秘める山麓部の放置人工林,特に放置に関わる問題の深刻なヒノキ人工林に焦点を当て,その具体的な風致施業のあり方を考察した結果,森林風致改良の当面の目標として,強度の間伐による針広混交不斉多段林である択伐林型造成が適すると結論付けた。 第2章では,信州大学構内演習林で実際に行われた,2通りの間伐方法の違いによる,放置ヒノキ人工林から針広混交不斉多段林への変換を試みた結果,かつて田村や今田などが提唱したような,不均一な林木配置を作り出すポステル間伐に類似した間伐方法に効果があった事が明らかになった。 第3章では,ヒノキ人工林の構成単位としての単木樹形を把握するため,かつ実際の選本に必要な寺崎式樹型級区分を定量化するための基準を定量化するために,ヒノキの単木自然樹形の稚樹から成木に至るまでの経年変化とその樹形形成要因を調査・分析した。その結果,ヒノキの樹冠形の変化は1次回帰式に近似し,成長と共にうちわ型から円錐形へ,鈍頭型から尖頭型の樹冠を形成し,その変化には樹幹の外樹皮形成が関与することが明らかになった。 第4章では,前述した間伐方法の実際の現場での実行を視野に入れ,異なる林齢の放置ヒノキ人工林に対して,樹型級による選木基準を考察した。その結果,ヒノキ林は相当な過密状態でも隣接木との種内競争は樹形に反映しないことが明らかになり,その結果,単木的な選木ではなく,機械的に大きさの異なる樹冠ギャップを造ることで目標の林型を創出できることが明らかになった。 第5章では,以上の結果をまとめた。放置人工林に対する「風致施業」は,森林の経時間的変化を楽しむことの可能な自然的な森林と定義づけられ,技術的にもその効果的な創出は,可能であった。ところで,「風致施業」の最終目標林型である針広混交の不斉多段林は択伐林型として,林学では集約的技術と共に,林地の健全性やその森林機能向上にも寄与することは,戦前から言及されている。しかし,戦後は経済的林業の下で択伐方式は技術的に認知されていなかったが,70年代以降の一斉皆伐方式の造林に対する批判などから現在,再認識されつつある。このことからも,放置人工林に対する「風致施業」は,保健休養などの利用のみならず,将来的には山麓の広い範囲で林業と両立して適用される可能性のある技術であると結論付けた。
著者
Ryan D. Mark
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.2, pp.35-65, 2004-03

This comparative and case study, undertaken from May 2000 to February 2004 at locations in Washington, Alaska and finally Nagano, Japan, focuses on a winter thoroughfare called the Kamikochi Norikura Super Rindo(herein: Forest Road) in the Azumi Village, which has been accosted with avalanche incidents and accidents for a number of years despite large investment in avalanche protection measures. In Japan, problems that are associated with winter both mountain travel safety to outdoor recreation safety are in many ways characterized by the issues which surround the risk management planning, use and management of this road. The problem in Azumi is of how to reduce the avalanche hazard along the Forest Road. In this paper, as an introduction and general overview in support of the ideas and concepts brought up body text, the current situation of avalanche work worldwide and in Japan is presented. One tendency seen in Japan is for heavy reliance on permanent measures such as the 88 snowfences constructed on the Forest Road at a huge expenditure(153,353,000JPY) in Azumi over the last 23 years. Avalanche forecast-ing is also rare, as demonstrated by only recent inclusion snowfall parameters for road closure purposes in Azumi. In North America and Europe, active avalanche control, which is the process of artificially releasing avalanches through explosive use, is popular as a temporary measure. Such protocol is often used to and complement to permanent measures such as earthworks or snowfences which redirect or reduce velocity of snow flow. In Switzerland alone 10,000kg explosives are used annually in avalanche control work. For the purposes of this study, operating models of bombing routes using hand-deployed charges and bomb trams which carry explosives to avalanche start zones as seen on field trips and inspected in Highway departments and ski areas in the US are proposed as a solution for the Forest Road in Azumi Village, Nagano, and investigated with respect to applicability, safety of use, legality, etc. The only legally hand-deployable charge in Japan, and major topic in this study is a new product called ACE(Avalanche Control Explosive) the research of which is facilitated through elementary on-snow testing. Through the course of this study it became evident that underlying the snow safety issue are issues in forest policy, road use planning, measure selection and funds appropriation. Delving further, it became clear that village and higher government may not have had access to a full range of internationally accepted options in the search for answers to problems of avalanche hazard reduction. In Azumi this inaccessibility to technology has resulted in expensive construction of inadequate permanent protection measures. Assuming that a program including active control could be formally made available to road managers at an attractive price, either deployment of charges by hand or light cableway would be suitable, albeit with some Japan-specific modifications. ACE are relatively low in total energy and their use would require some modification in size, and with respect to tram use it would be necessary to solve small engineering problems and determine which type of charge is explosive material bakes best economic and operational sense for the village. Both measures would require increasing the caliber and accuracy of the current forecasting program as well as unprecedented cooperation with road maintenance crews.
著者
有馬 博 北原 英一
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.p59-72, 1988-12

ベニバナインゲン3品種を準高冷地(信州大学農学部附属農場圃場,標高754m,年平均気温10.7℃)で播種期を変えて栽培し,生育,開花及び結きょう経過を調査するとともにこの地帯での経済栽培の可否を判定した。生育は寒地より明らかに早く,また無霜期間が高冷地より長かったため良く生育し,1株当たり約4,000花が咲いた。平均結きょう率は約4%であったが,秋に未熟のまま凍結して廃棄されるさやは少なかった。晩生種を終霜期ころに早く播種し,過繁茂にしないように注意すれば,準高冷地でも1粒重1.8g以上の種子が10a当たり300kg以上収穫でき,経済栽培が可能であることが明らかとなった。
著者
松井 寛二 森岡 弥生 竹田 謙一
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.3, pp.11-16, 2005-03

4頭の木曽馬の馬房内の夜間の姿勢と体温変化の特徴を明らかにし,姿勢および体温変化と睡眠の関連を考察した。姿勢と行動はビデオカメラを用いて,体温(膣温)はデータロガを用いて記録した。姿勢は,1)立位(歩行・摂食),2)立位(休息),3)伏臥および4)横臥の4型に区分して記録した。伏臥および横臥の出現パターンには個体差が認められた。4頭平均の伏臥持続時間は16.4分,横臥持続時間は4.2分,夜間11.5時間の横臥回数は6.1回であった。体温は17時の38.1~38.6℃から早朝の37.6℃前後まで漸減した。伏臥から横臥の姿勢変化時にノンレム睡眠からレム睡眠に移行し,横臥時にレム睡眠であることが推察された。