著者
佐藤 幸雄 熊代 克巳
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.p61-69, 1985-12

セイヨウナシの葉やけ発生要因と考えられる気孔運動機能の鈍化が,他の果樹にも認められるかどうかを知るため,ナシ,リンゴ,モモ及びブドウを用いて,葉の比較蒸散量及び蒸散抵抗を調べた。得られた結果の概要は次のとおりである。1.葉齢の進行にともなう気孔運動能の鈍化は,葉やけの発生しやすいナシ「バートレット」が最も著しく,6月下旬にすでにその微候が認められ,7月中旬から急速に進行した。しかし葉やけの発生が認められないモモ「缶桃5号」は,8月下旬においてもなお気孔の運動機能が鋭敏であった。ブドウ「コンコード」は,8月上旬以降に機能鈍化が認められたが,「バートレット」ほど顕著ではなかった。またリンゴ「ふじ」も8月上旬以降に機能鈍化の微候を示したが,その程度は比較的軽かった。2.ナシの品種別比較では,「バートレット」の機能鈍化が最も著しかった。「新水」は7月中旬に「バートレット」と同程度の機能鈍化を示したが,それ以降はさほど進行しなかった。また「幸水」は,8月中旬以降に急速に機能鈍化が進行し,9月上旬には「新水」とほぼ同程度となった。3.夏季の高温乾燥条件下における着生葉の蒸散抵抗は,「缶桃5号」が最も高く,次いで「ふじ」,「コンコード」,「幸水」,「新水」,「バートレット」の順に低下し,「バートレット」が最低であった。またいずれの果樹も新梢の基部葉は先端部葉に比べて低かった。4.葉やけ発生率と気孔の運動機能との関係をセイヨウナシについて調べた結果,発生率の高い品種ほど機能鈍化が著しい傾向がみられた。しかし「プレコース」のみは機能鈍化が著しかったが,葉やけ発生率は低かった。
著者
梅村 信哉 Tayutivutukul J. 中村 寛志
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.31-36, 2005-03

2003年10月19日から2003年10月30日にかけて,タイ国チェンマイにおける6つの調査地(チェンマイ大学,Mae Hia Station, Chang Kien Station, Nong Hoi Station, チェンマイ市郊外)においてスウィーピングとビーディングを用いてハムシ類の定性的調査を行った。調査全体を通じて8亜科24種(チェンマイ大学:11種,Mae Hia Station:3種,Chang Kien Station;2種,Nong Hoi Station:11種,チェンマイ市郊外;4種)のハムシ類を確認した。このうち,ヒメアカクビボソハムシLema coomani,ウリハムシAulacophora indica,ヒメクロウリハムシAulacophora lewisii,キイロクワハムシMonolepta pallidula,ヒメドウガネトビハムシChaetonema (Chaetocnema) concinnicollis,カミナリハムシAltica cyanea,ジンガサハムシAspidomorpha furcataの7種は日本にも分布する種であった。これらのデータをもとにハムシ類の目録を作成した。
著者
大井 美知男 磯村 由紀
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.49-55, 2000-10

長野県在来の大根13品種の形態調査を26項目について行った。得られた結果をもとにクラスター分析を行ったところ,以下の3グループと5サブグループに分類された。グループ1,サブグループA:「灰原大根」,「信州地大根」,「ねずみ大根」,「切葉松本地大根」,「戸隠大根」,「上平大根」,「牧大根」 サブグループB:「上野大根」 サブグループC:「前坂大根」 グループ2,サブグループD:「たたら大根」 サブグループE:「大門大根」 サブグループF:「赤口大根」 グループ3,「親田辛味大根」 さらに,長野県在来の大根品種が多様な変異を持ち合わせていることが明らかになった。
著者
山田 明義
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要
巻号頁・発行日
vol.38, no.1-2, pp.1-17, 2002-01-31

日本の野生きのこ類の主要な位置を占める菌根性きのこ類について,食資源としての利用性を明らかにすることを目的に,文献調査を行った。その結果,これまでに300種を超えるきわめて多様なきのこ類が利用されており,今後さらに研究の進展にともない,より多くのきのこ類が利用される可能性のあることが示唆された。これら菌根性きのこ類は,これまで殆ど人工栽培の研究が行われていなことから,産業利用の見地からは研究の必要性が指摘された。
著者
松尾 信一 森下 芳臣 大島 浩二
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.59-90, 1984-07

ニホンカモシカの骨格の形態学的研究の一環として,前肢骨格に引き続き,今回は,後肢骨格について調査研究を行なった。1.カモシカの後肢骨は,寛骨(腸骨,坐骨,恥骨),大腿骨,膝蓋骨,脛骨,腓骨,足根骨,中足骨,趾骨,種子骨および副蹄内の2個の小骨片から成り,それらの骨の各部位を確認し,図譜を作成した。2.カモシカの後肢骨格は,反芻動物の一般的な特徴を備え,概観的には,ヤギやヒツジの骨格に類似していた。また,ウシとは,骨格の大きさで区別できた。3.カモシカの寛骨では,次の部位でヤギやヒツジと区別できた。閉鎖孔,寛骨臼,大腿直筋外側野,腸歩翼,腸骨稜,寛結節,仙結節,殿筋面と殿筋線,大坐骨切痕,坐骨体,坐骨板,坐骨結節,小坐骨切痕,恥骨櫛,閉鎖溝および大腿骨副靱帯溝。カモシカの閉鎖孔の周縁に家畜解剖学用語には使用されていない背側閉鎖結節と腹側閉鎖結節の存在を発見し,靱帯解剖学用語を参照して命名した。4.カモシカの骨盤では,雌雄差について調査した。また,骨盤腔の形でヤギやヒツジと区別できた。5.カモシカの大腿骨では,次の部位でヤギやヒツジと区別できた。大腿骨頭,頭窩,大腿骨頸,転子窩,転子間稜,大転子,大腿骨粗面,顆上窩,顆間窩および栄養孔の位置。6.カモシカの膝蓋骨は,概観的にウシと異なり,ヤギやヒツジと類似していた。7.カモシカの下腿骨では,次の部位でヤギやヒツジと区別できた。脛骨では,外側顆,膝窩切痕,顆間区,顆間隆起,脛骨粗面,脛骨体,前縁,外側面および遠位端。また,腓骨は,腓骨頭と外果より成り,ヤギやヒツジのものによく類似していた。8.カモシカの長骨では,脛骨が最も長く,次に尺骨,大腿骨,上腕骨,橈骨,中足骨,中手骨の順であった。9.カモシカの足根骨は,ヤギやヒツジのものと類似しており,一部,ウシのものとは異なっていた。10.カモシカの中足骨では,退化している第二中足骨が,第三・四中足骨の近位(上端)の後内側に小突起として付着していた。一方,ヤギやヒツジでは,第三・四中足骨の近位には,第二中足骨との関節面が存在していた。さらに,中足骨と中手骨の形態的差異についても,カモシカとヤギでは異なっていた。11.カモシカの趾骨は,ヤギやヒツジのものに類似して細長かった。一方,ウシのものは,太くて短かった。さらに,カモシカでは前肢の指骨の方が,後肢の趾骨よりも太くて短かった。12.カモシカの四肢骨における雌雄差は,寛骨と骨盤においてのみ認められた。
著者
松尾 信一
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.115-132, 1990-12-25 (Released:2015-09-25)

明治以前の日本での最大の西洋百科事典の和訳書であるショメール『厚生新編』の中の家畜(馬,驢,山羊,水牛,猟犬,猫,駱駝,羊,ラム,馴鹿など),家禽・飼鳥(アヒル,鵞,七面鳥,雉,孔雀,カナリヤなど),畜産物等(乳,バター,チーズ,獣皮,膠,鮓答,肉料理)について詳細に調査し,更に,フランスのChomel原著,Chalmotオランダ語訳本(英文要旨記載)及び江戸時代の日本の本草書などとの比較考察を行った。
著者
泉山 茂之 岸元 良輔 中下 留美子 鈴木 彌生子 後藤 光章 林 秀剛
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部AFC報告
巻号頁・発行日
vol.10, pp.133-138, 2012-03-28

2011年は,長野県でツキノワグマが大量出没した2006年および2010年と異なり,目撃件数・人身事故件数・捕獲数は平常年並であった。しかし,山ノ内町では10月に1頭のオスのツキノワグマが4人に被害を与えるという人身事故が発生した。人身事故をきちんと検証することは,被害軽減,防止に向けて必要不可欠である。そこで,今回の人身事故について聞き取り・現場検証・加害個体の年齢や安定同位体比による食性などを調査した。その結果,当該個体は山の自然の中で生活していたが,高齢になって体が弱り,河川に沿って人里まで下りてきた可能性が考えられる。その際に,偶然に散歩中の人と出会ってしまったために人身事故に至り,それをきっかけにパニック状態になって住宅地に入り込み,さらに被害を拡大してしまったと推測される。
著者
茅原 紘 川上 晃 奥谷 能彦 中西 潮 只左 弘治
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.35-44, 1991-07

今回,砂糖の約2000倍の甘味を持つといわれるペリラルチンと類似構造を有するように,甘味発現のAH-B-X系に基づき,(1)オキシムをシッフ塩基に置き換えたアナローグ,(2)オキシムをペプチド結合に置き換え,水酸基を持つアミノ酸Ser,Thrを導入したアナローグを合成した。(1)では,perillaldehydeや,他のアルデヒドにアミンを導入したものについても呈味は得られなかった。(2)の場合,C端保護Thr,Serに有機酸を導入した場合苦味を呈し,C端無保護の時酸味となった。ところが,Ferulic acidを導入した場合,C端保護時で甘味を呈した。このことから,Ferulic acidの特殊な構造と,SerおよびThrの水酸基の位置が微妙に甘味に関連している事が推定される。
著者
佐藤 幸雄 熊代 克巳
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.61-69, 1985-12

セイヨウナシの葉やけ発生要因と考えられる気孔運動機能の鈍化が,他の果樹にも認められるかどうかを知るため,ナシ,リンゴ,モモ及びブドウを用いて,葉の比較蒸散量及び蒸散抵抗を調べた。得られた結果の概要は次のとおりである。1.葉齢の進行にともなう気孔運動能の鈍化は,葉やけの発生しやすいナシ「バートレット」が最も著しく,6月下旬にすでにその微候が認められ,7月中旬から急速に進行した。しかし葉やけの発生が認められないモモ「缶桃5号」は,8月下旬においてもなお気孔の運動機能が鋭敏であった。ブドウ「コンコード」は,8月上旬以降に機能鈍化が認められたが,「バートレット」ほど顕著ではなかった。またリンゴ「ふじ」も8月上旬以降に機能鈍化の微候を示したが,その程度は比較的軽かった。2.ナシの品種別比較では,「バートレット」の機能鈍化が最も著しかった。「新水」は7月中旬に「バートレット」と同程度の機能鈍化を示したが,それ以降はさほど進行しなかった。また「幸水」は,8月中旬以降に急速に機能鈍化が進行し,9月上旬には「新水」とほぼ同程度となった。3.夏季の高温乾燥条件下における着生葉の蒸散抵抗は,「缶桃5号」が最も高く,次いで「ふじ」,「コンコード」,「幸水」,「新水」,「バートレット」の順に低下し,「バートレット」が最低であった。またいずれの果樹も新梢の基部葉は先端部葉に比べて低かった。4.葉やけ発生率と気孔の運動機能との関係をセイヨウナシについて調べた結果,発生率の高い品種ほど機能鈍化が著しい傾向がみられた。しかし「プレコース」のみは機能鈍化が著しかったが,葉やけ発生率は低かった。
著者
鈴木 俊介
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要
巻号頁・発行日
vol.49, no.1-2, pp.11-18, 2013-03-22

ゲノムインプリンティングは一部の遺伝子に親由来により異なるエピジェネティック修飾を与え,片親性発現を引き起こす。本来,雄由来と雌由来の染色体からなる二倍体の細胞をもつことは劣勢変異の表現型を抑える大きなメリットがあるが,片親性発現であるインプリント遺伝子は二倍体でありながらその機能が一倍体と同じ状態になっている。このユニークな遺伝子発現制御機構は,高等脊椎動物において哺乳類には広く保存されているが,鳥類以下では見つかっていない。ゲノムインプリンティングが哺乳類の進化上なぜ現れ,どのように進化して現在まで保存されてきたかは,非常に興味深い側面であるがまだ結論は出ていない。哺乳類には,卵生で胎盤をもたない単孔類,胎生だが真獣類と比べ非効率的な胎盤をもち早期に出産する有袋類,効率のよい胎盤をもち長期間胎内で子を育てる真獣類という,それぞれ異なった生殖様式をとる三つのサブグループが存在する。ゲノムインプリンティングの進化は,哺乳類の中でも胎生である真獣類と有袋類のみにみられること,インプリント遺伝子群に胎児の成長や母子間の栄養輸送,母性行動などに関わる遺伝子が複数含まれること,ほとんどのインプリント遺伝子が胎盤組織で高い発現レベルを示すことなどから,哺乳類の胎生の進化と関連があったと考えられている。したがって,生殖様式の異なる真獣類と有袋類においてインプリンティングを受ける遺伝子や領域,メカニズムを解析し比較することは,その起源や生物学的意義,進化を考察する上で必須である。本総説では,これまでのほとんどの研究が対象にしてきたマウスやヒトとは別のグループである有袋類や単孔類を含めた比較解析により見えてきたこれらの知見について議論する。
著者
村井 秀夫 松尾 信一
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.p245-257, 1974-12

Nagano-ken (Shinano no kuni) was very famous for a horse breeding area in Japan. In January 1972, an old scroll of horse medicine was found from an old family, the Sasakos, at Komagane, Nagano-ken. The scroll was copied in 1710 from the original by Harimano-Kami Ansai in 1579. The basic feature of the scroll is founded on the traditional Chinese horse medicine and Buddhism. It has several sections. First; the summarized graph of the Chinese five natural elements such as fire, wood, earth, metal and water. Second; the anatomical charts of the five parenchymatous organs and six viscera, the pictures of a horse body, horse's face, Buddha's face, the five storied stone Pagoda (Stupa) and [ア] (sanskrit). These are divided respectively by the five colors (blue, red, white, black and yellow), and the parts of the same color of each picture are connected with a same color line. Third; explanatory notes and diagrams of interrelationships of seasons, the old calender, Buddhism, the body and diseases with the five natural elements. Fourth; two pictures of the horse body show points for acupuncture. Fifth; the aim of the arrangement of this scroll was to summarize concisely from the Ankishu (the name of Chinese horse medicne). Lastly; names of authorized scholars of this School, The founder was Memyo Bosa-tsu (Asvaghosa) in India. Successors; Sanzo priest in Tang (China), Funsen (a Japanese Buddhist priest) etc. , and the scroll was kept in the Ansai School. The scroll shows that one horse medicine in Japan was brought directly from China.
著者
松島 憲一 竹村 真奈美 畠山 佳奈実 須田 元輝 山谷 美紀生 馬場 真優子 根本 和洋 南 峰夫
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要
巻号頁・発行日
vol.52, pp.41-48, 2016-03-28

長野県駒ヶ根市内で栽培利用されている在来作物について,その分布と利用状況の聞き取り調査を信州大学と駒ヶ根市の共同研究として2014年10月から12月にかけて実施した。この結果,在来の果樹3品目としてカキ,マメガキおよびナシが,在来の蔬菜類4品目としてサトイモ,ウリ,トマト,チョロギが栽培利用されていることが明らかになった。このうち,在来のカキ品種'せんぼ柿'については,地域の他産業(養蚕および馬による運送業)との関係が明らかになった。
著者
安井 俊樹 根本 和洋 南 峰夫 北村 嘉邦
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 = Journal of the Faculty of Agriculture, Shinshu University (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.9-15, 2015-03

ネパールにおける花卉産業の現状を明らかにするために,信州大学のネパール農業実習で訪れたカトマンズ,ポカラ,マルファ,ナラヤンガートにおいて調査を行った。主に切り花を取り扱うフラワーズデコレーターでは切り花に関して,主に鉢花を取り扱うナーサリーでは鉢花に関して,品目,価格,販売形態および流通経路について開き取り調査を行った。マリーゴールド(Tagetes spp. ),アジサイ(Hydrangea spp. ),ユリ(Lilium spp. )については特に注目し,認知度,用途,嗜好について開き取り調査した。調査結果をもとに,ネパールにおける花卉産業の成熟度,花卉と文化,宗教との関係について考察した。
著者
辻井 弘忠
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-5, 2005-03
被引用文献数
1

近年,放牧を見直そうとする背景がある。そこには,乳用牛および肉用牛の飼養戸数の大幅な減少に対して飼養頭数は大幅な増加傾向にある。つまり,多頭飼育傾向が見られ,放牧場の存在は各農家の省力化のだめに必要かつ重要である。本論文は全国の放牧場について,地域別に見た放牧場数,放牧頭数,放牧面積,放牧場の立地条件,放牧場の草種,放牧期間ならびに放牧の持つ多角的価値などについて解析を試みてみた。その結果,各地域の放牧場は飼育している牛の種類の違いと地域の地理的または自然的な条件による違いが見られた。
著者
泉山 茂之 岸元 良輔 中下 留美子 鈴木 彌生子 後藤 光章 林 秀剛
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.10, pp.133-138, 2012-03

2011年は,長野県でツキノワグマが大量出没した2006年および2010年と異なり,目撃件数・人身事故件数・捕獲数は平常年並であった。しかし,山ノ内町では10月に1頭のオスのツキノワグマが4人に被害を与えるという人身事故が発生した。人身事故をきちんと検証することは,被害軽減,防止に向けて必要不可欠である。そこで,今回の人身事故について聞き取り・現場検証・加害個体の年齢や安定同位体比による食性などを調査した。その結果,当該個体は山の自然の中で生活していたが,高齢になって体が弱り,河川に沿って人里まで下りてきた可能性が考えられる。その際に,偶然に散歩中の人と出会ってしまったために人身事故に至り,それをきっかけにパニック状態になって住宅地に入り込み,さらに被害を拡大してしまったと推測される。
著者
鈴木 茂忠 宮尾 嶽雄 西沢 寿晃 高田 靖司
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.p147-177, 1977-12
被引用文献数
4

Investigation is running on since April 1975 in order to make clear the food habit of the Japanese marten, Martes melampus melampus on the eastern slope of the Mt. Kiso-Komagatake. In view of the results so far achieved, the authors attempted to make clear the food habit to examine scat samples, which were collected in the upper part of low mountaineous zone (1,200-1,600m above the sea level : we called "the A zone") and the sub-alpine zone (1,700-2,600m above the sea level : we called "the B zone") on the eastern slope of the Mt. Kiso-Komagatake from the end of March 1976 to the end of January 1977. In the present paper, especially the authors will be discussed on the following several points : i) change of food habit from autumn to winter in each year of 1975 and 1976 in the A zone. , ii) the change throughout the year in the A zone, and iii) difference of food habit between the A and B zones. The results obtained were summarized as follows 1) The number of scats collected in the A zone was less amount since August and thereafter its number suddenly increased from September. However, the authors could not be clear what had caused the results. 2) In the A zone, food habit from March to June seemed to be dependent on animal diet, while at the time from September to January of succeeding year, it may be dependent essentially on vegetable diet rather than animal. And both animal and vegetable were eaten in July and August. In the B zone, on the other hand, there was scarcely any scat which contained only animal component and scat containning vegetable component or vegetable and animal were commonly found from September to December. 3) Food habit was dependent on animal diet, namely, Lepus brachyurus from March to June in the A zone. 4) There was scarcely any scat which contained only animal and that containning vegetable component or vegetable and animal component were commonly found from September to December in the A zone. Food component in scat from July to August would be intermediate before June and after September within a year. 5) Kinds of vegetable diet eaten by the Japanese marten were Rubus, Pari-etales (Actinidia) and Sorbus in July and August, in September and October, and in November and January, respectively. 6) Sorbus was mainly eaten from November to January in 1976 as a vegetable diet, which had not been found at all in the previous report of 1976 (SUZUKI, MIYAO et al) in the A zone. It seemed to be considered that the lower temperature during June to September might cause the difference of kinds in vegetable diet among 1975 and 1976. 7) Lepus brachyurus and murine rodents were the most important as an animal diet in the A zone and the mutual compensatory relation as a companion diet would be recognized among two kinds of animals, that is, the higher the frequency of appearance of the murine rodents, the lower the L. brachyurus occurred and the frequency relation was vice versa. These tendencies may suggest that the Japanese marten may attack the animal as a density-dependent factor and the Japanese marten may be used to eat the animal which increased the population density. 8) Frequency of scat which contained animal component (L. brachyurus or Coleopterous insect) became higher in July and August and the component changed to both animal and vegetable in September and then it reached about 50% for vegetable diet (Sorbus) in the B zone. 9) Animal diet was much weight rather than vegetable in the B zone compar-ing with the diet in the A zone. 10) Main animal diet was L. brachyurus in the B zone.
著者
鈴木 茂忠 宮尾 嶽雄 西沢 寿晃 高田 靖司
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.p47-79, 1978-07

Investigation has been made from May 1975 to January 1977 in order to make clear the food habit of the Japanese serow, Capricornis crispus on eastern slope of the Mt. Kiso-Komagatake, where the University Forest in the Faculty of Agriculture, Shinshu University expands. The investigating area is a low temperate zone and is enveloped in natural forest in upper part of low mountaineous zone (1,200-1,600m above the sea level). Seasonal change of food plants was clear up by analyzing the plant traces eaten by the Japanese serow. This analysis didn't express quantitative estimation of plant eaten by the animal, but identification of plant, namely, qualitative list of plant species. Further, there was less data obtained from March to April and we were obliged to omit it. The results obtained were summarized as follows (1) The Japanese serow was used to bite tip of herbs, young trees and shrubs off and the animal seems not to be grazing herbivore, but browsing herbivore or snip feeder. (2) Total 189 plant species were listed up as the food of the Japanese serow, among them, 94 species (27 families) for herb ; 85 species (29 families) for broadleaf tree ; 7 species (2 families) for coniferous tree ; and 3 species (1 family) for bamboo grass, respectively. The number of species eaten by the Japanese serow reached to maximum in July (106 species) and thereafter down to minimum in November. (3) Number of plant species of herb and broad-leaf tree was divided into a half in each from May to November and the two plant groups should become themain food enough to feed at this time. While, ever-green coniferous tree and bamboo grass might be added to the two plant groups during winter from December to February. Number of herb species decreased suddenly and broad-leaf tree, therfore, might act an important role on food and percentage utility of broad-leaf reached on 83.1% at the time of February. On the other hand, the ever-green coniferous tree was down to 5% and 2% for bamboo grass. In the investigating area, there was so small amount of biomass for ever-green coniferous tree that the tree seemed to be a secondary food. (4) Plants feeded on each month throughout a year (but March and April could not be observed yet) were as follows : Hydrangea paniculata, H. cuspidata, H. macrophylla, Rubus kinashii, R. rnorifolius, Euonymus sieboldiana, Helwingia japonica, Clethra barbinervis, Sambucus sieboldiana and Viburnum furcatam. Above 10 species were all deciduous broad-leaf tree and the Japanese serow were used to feed on twings and leaf during spring to autumn and on twigs with winter bud. Moreover, plants feeded for the most part within a year were as follows Polygonum reynoutria, Clematis stans, Cirsium tanakae, Artemisia vulgaris, and Vitis coignetiae. It may be considered that these two sorts of plant species shall become a fundamental food resource for the Japanese serow in the area. (5) Petasites japonicus, Trillium tschonoskii, T. apetalon and Paris tetraphylla, which expand new green leaves to be the first to do other plants at the time of early spring may play a compensatory role upon many species of food plants feeded throughout a year. (6) Various species of herb and broad-leaf tree were feeded during summer, such as the plants mentioned (4) and Heracleum lanatum, Angelica multisecta, Cacaria hastata, Ainsliaea acerifolia, Eupatrium sachalinense, Elatostemma involuc-ratum and Boehmeria tricuspis as well. (7) Leaf of Petasites japonicus, fall down leaves of broad-leaf tree, dried herbs and nuts of Quercus crispula which were feeded during the late autumn must become a major food at the only short time of pass through autumn to winter. (8) Twigs and leaves of ever-green coniferous tree and bamboo grass which were feeded during only winter season (December to February), will supply for food in winter. In this period, the Japanese serow would usually not to be enough to feed the plant mentioned (4) and ever-green coniferous tree and bamboo grass seemed to be a suitable food for keeping hunger away. (9) Some poisonous plants were rearely feeded such as Scapolia japonica, Aco-nitum japonicum, Aquilegia buergeriana, Veratrum stamineum, Pieris elliptica, Aesculus turbinata and Buddleja insignis.(10) Plant species which did not remain traces eaten by the Japanese serow in the investigating area were as follows : Rhododendron degronianum, R. japonicum, Macleya cordata, Convallaria majalis, Shortia soldanelloides, Arisaema, Matteuccia struthiopteris, Blechnum niponicum etc.
著者
土屋 敏夫
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部農場報告
巻号頁・発行日
vol.1, pp.80-81, 1980-03-25
著者
野口 茜 武田 俊之 渡辺 剛 保井 久子
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部紀要 (ISSN:05830621)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-8, 2008-03

毎年冬季に流行するインフルエンザ感染症は,主にA型インフルエンザウイルス(Flu)により発症する。A型Fluは,複数の亜型に分類されることやゲノム変異が頻繁に起こることから,その予防にワクチン接種は完全とは言えず,また抗Flu薬も問題が多い。一方,紅茶や緑茶等の茶フラボノイドは,高いFlu感染阻害作用を有することが注目されている。そこで,我々はアントシアニンなどのフラボノイドを多量に含む果実であるカシスに注目し,その抗Flu作用を検討した。その結果,カシスエキスはFluに対して高い赤血球凝集阻害作用を示し,Flu感染モデルマウスを用いた試験において,発症率を減少させ,生存率を高めた。これらのことから,カシスエキスはA型Fluの予防に有効であると考えられた。また,活性成分の探索のため,カシスエキスを合成吸着樹脂にて分画し,赤血球凝集阻害作用を調べた。その結果,アントシアニン以外の物質が含まれる画分に,強い吸着阻害作用を有する化合物の存在が示唆された。
著者
辻井 弘忠 末成 美奈子 増野 和彦
出版者
信州大学農学部
雑誌
信州大学農学部AFC報告 (ISSN:13487892)
巻号頁・発行日
no.1, pp.73-79, 2003-03

長野県林業センターで系統維持しているヤマブシタケ(Hericium erinaceum)6系統(国内産4,台湾産1,中国産1)を供試し,ヤマブシタケ子実体の収穫所要日数および収量ならびに子実体抽出エキスのHeLa細胞に対する細胞毒性活性を調べた。すなわち,栽培培地基材であるコーンコブミール含有量の違いや栄養剤添加が,子実体の収穫所要日数および収量に及ぼす影響ならびに各系統の子実体抽出エキスのHeLa細胞に対する細胞毒性活性に及ぼす影響を調べた。その結果,実験に用いたヤマブシタケ6系統の子実体抽出エキスともHeLa細胞に対する細胞毒性活性がみられた。子実体の収穫所要日数が少なく,子実体の収量の多い系統はY5とY6,子実体エキスのHeLa細胞に対する細胞毒性活性の強い系統はY1とY2であった。栽培培地基材であるコーンコブミールを添加すると子実体の収穫所要日数は短かくなり,子実体の収量は少なかったが,コーンコブミール添加によって子実体抽出エキスのHeLa細胞に対する細胞毒性活性は高まった。栄養剤(フスマ)添加によって,子実体の収量は少なくなったが,子実体抽出エキスのHeLa細胞に対する細胞毒性活性は高くなった。これらのことから,ヤマブシタケの系統は台湾産および中国産より国内産のY1~3系統のものを使用し,栽培培地基材としてはコーンコブミールを,栄養剤としてはフスマをそれぞれ添加して栽培すれば,HeLa細胞に対する細胞毒性活性の強い子実体を生産出来ることが判明した。