著者
吉田武彦
出版者
北海道農業試験場
巻号頁・発行日
no.30, pp.1-152, 1986 (Released:2011-09-30)
著者
鐙谷 大節 北沢 健治
出版者
北海道農業試験場
雑誌
北海道農業試驗場彙報 (ISSN:00183415)
巻号頁・発行日
no.81, pp.43-48, 1963-09

1. 本文は菜豆根腐病菌Fusarium solani f. phaseoli SNYDER et HANSEの土壌内垂直分布状況およびその消長と,各種作物の長期連作土壌中の存在状況等についての報告である。2. 菜豆および小豆の長期連作圃場で耕鋤前と生育最盛期に本病原菌の土中垂直分布を調査した結果,耕鋤前(5月中旬)では本菌は地表から5~10cmのところに分布し,それ以上深いところからは分離できなかった。6月末~7月初めには本菌は25~30cmのところまで分布を拡大していた。3. 他の菌類および放射状菌も大体病原菌と同一傾向にあった。4. 各種多数作物を30年以上も長く連作している圃場に菜豆および小豆を播種して,本病の罹病度を調べ,またその罹病株から菌を分離した結果によると,本病菌はえん麦,小麦圃場に植えた菜豆および小豆からは分離できなかったが,他の菜豆,ライマ豆,えん豆,小豆,そら豆,大豆,大麦,あわ,稲きび,とうもろこし,陸稲,ばれいしょ,てん菜,玉ねぎ,トマトの連作土壌に植えた菜豆または小豆からは分離できた。5. 根腐病の被害は菜豆,ライマ豆,えん豆,小豆に激しく,他作物土壌では少なかった。供試検出作物では菜豆が小豆よりも激しかった。6. 上記検出作物から分離された本病原菌は菜豆,えん豆,ライマ豆土壌からは青色系が多く,その他の作物連作土壌からは褐色系のものが多かった。7. 以上の諸結果から土壌中の本病原菌は春先きは比較的浅い所にのみ存在し,作物(寄主)の生育とともに深い所まで侵入する。したがって土壌中の本病原菌の殺菌を考えるならば春先き早いほど殺しやすく,遅くなるにしたがい深い所まで考えねばならない。また寄主でない作物を長期連作しても本病原菌は存在するが,寄主を植えても被害は少ない。また本病原菌は異なった作物を長期連作すると青色系,褐色系に分化し,病原性にも差を生ずるごとく観察された。
著者
井上 康昭 岡部 俊
出版者
北海道農業試験場
雑誌
北海道農業試験場研究報告 (ISSN:03675955)
巻号頁・発行日
no.143, pp.p149-157, 1985-03

単交配一代雑種品種への急速な移行に伴い,その親である自殖系統の効率的育成方法の確立が待たれている。本研究は,単交配一代雑種品種の採種性向上のために,自殖の早期世代での打ち切りの可能性と集団改良の効果について調べるために実施された。日本在来自然受粉品種「塩ノ岐-1」,中国複交配一代雑種品種「双跃808号」,米国合成品種「BS5」,及び米国合成品種で改良集団である「BS13」の四つの起源集団を用いて自殖を開始し,それぞれの起源集団のS0からS4~S6までについて,1系統当たり5個体の稈長を測定し,系統平均値,系統平均値間分散及び系統内分散を算出した。それによって,系統平均値間分散と系統内分散の相対的大きさ,及び基準に用いた高次の自殖系統内分散に対する供試系統内分散の比について,自殖世代による推移を調べ,整一性の面から自殖打ち切り可能世代を検討した。更に,集団改良の効果を調べるため,自殖弱勢の自殖世代による推移について起源集団による違いを比較検討した。得られた結果は次のとおりである。(1)系統平均値間分散と系統内分散の比は,S1で2.79~8.88,S2で7.68~13.12,S3以降更に増大した。また,系統内分散はS2においてすでに統計的に有意ではなかった。このことから,S2以降の系統内選抜の効果は非常に小さいことが推測された。(2)供試系統の系統内分散を基準の高次の自殖系統内分散と比較した場合,S2で1.6,S3で1.1,S4以降は1.0以下であった。このことから,整一性の面で,S3においてすでに高次の自殖系統とほとんど差がないことがわかった。(3)自殖弱勢の程度は,より改良が進んでいる集団ほど小さい傾向がみられ,S4のS0に対する比率は自殖弱勢の最も大きい「双跃808号」で63%,最も小さい「BS13」で76%であった。(4)S1における自殖弱勢の程度によって,全体の自殖弱勢の程度を推測することは可能でなかった。以上のことから結論として,単交配一代雑種のための親系統として,少なくともS3系統を利用することは実用上問題がなく,これによって採種性を高めることができ,さらに育種の回転を早めることが可能であると考えられた。また,集団改良によって優良な遺伝子を集積することにより自殖弱勢を小さくすることが可能であり,これによってもまた採種性を向上させることができると考えられた。
著者
大島 栄司 後藤 忠則 佐藤 倫造
出版者
北海道農業試験場
雑誌
北海道農業試驗場彙報 (ISSN:00183415)
巻号頁・発行日
no.83, pp.87-99, 1964-03

当場のトマト圃場のモザイク斑紋,糸状葉あるいはシダ葉状奇形などを生じた株から分離接種試験を行った結果,55例中51例からトマトの病徴に関係なく,サムスンタバコに斑紋と灰白色や褐色の壊疽,N. glutinosaとN. sylvestrisに局所病斑を生じ,菜豆「大手亡」には生じないウイルスが分離された。この外,空知や函館地方から採集されたモザイク病のトマトからも同様のウイルスが分離された。これらはその感染植物から病徴のTMVの特殊な系統群と思われた。上記の系統の一つであって,不明瞭な黄色斑紋を示すトマトから分離され,局所病斑をとおして純化された系統(TMV-L)について普通系統のTMV(TMV-O)と比較研究を行なった。その結果このウイルスは既述の特徴の外にChenopodium amaranticolorやC. muraleにTMV-Oと異なる病状を発生し,トマトにはTMV-Lを分離したトマトと同様の病状の外に葉先がとがり,シダ葉状の奇形を生じた。これはトマトの生育段階の相異が病徴に影響を与えたためと思われる。またタバコ「アンバレマ」「ジャバ」「ホワイト・バーレー」およびツクバネアサガオに局所病斑のみを生じた。キャベツ「サクセッション」および寄居カブには感染せず,TMV-Cと区別された。この外,トウガラシ「札幌大長なんばん」,シロバナヨウシュチョウセンアサガオ,N. glutinosa,N. glauca,タバコ「キサンチ」にはTMV-Oとほぼ同様の症状を発生した。TMV-Lは85℃,10分処理で不活性化し,1,000,000倍希釈でも完全には不活化せず,180日以上室温で活性を保った。また電子顕微鏡で観察した結果,ウイルス粒子は棒状で,長さ280~300mμであった。TMV-LとTMV-O間の交互免疫作用をトマト,N. gylvestris,タバコ「ホワイト・バーレー」およびツクバネアサガオで試験した結果,いずれの場合も保護作用は不完全であったが,TMV-L単独感染の場合よりいずれも軽い病徴を呈した。また,菜豆「大手亡」に両ウイルスを混合接種した結果,TMV-Oによる局所病斑数は対照の15~30%に減少し,TMV-Lによる保護作用は明らかに認められた。トマト葉とサムスンタバコ葉のディスク内のTMV-LとTMV-Oの接種48時間後の増殖を調べたところ,前者ではTMV-Lの増殖がまさり,後者ではTMV-Oがわずかによく増殖した。以上の結果からTMV-Lは特にトマトに親和性のあるTMVの一系統と判定された。
出版者
北海道農業試験場
雑誌
北海道農業試験場研究資料 (ISSN:03862224)
巻号頁・発行日
no.50, pp.97-115, 1994-03

大規模といわれる十勝農業も低コスト・環境保全が求められ,エネルギー効率も高くない。前者の主因は多肥で,後者には機械が加わる。本稿は土壌管理面から問題解決の方向と可能性を探った。基本は,主役たる作物特性の定量的把握,土壌機能とその不均一性の認識に立った土壌管理である。その際,広域かつ細密な土壌機能の把握にはランドサットTM情報が有効で,同様のセンサーを登載したトラクタを開発すれば,土壌機能に応じた不均一施肥による収量,品質の均一化が可能になる。他方,家畜排泄物はゴミと資源の狭間にあり,多様な畑作の展開がバッファーとして働けば,収量を維持した減肥と環境保全への道がみえる。加えて,簡易耕の導入も期待されるが,大区画圃場では土壌侵食が考慮されるべきである。何れにせよ,農業の原点に立った総合的な努力が必要で,技術開発だけでなく消費者,行政の発想の転換と合意なしには農業の将来像は見えてこないであろう。