著者
伊藤龍星
出版者
大分県海洋水産研究センター
雑誌
大分県海洋水産研究センター調査研究報告 = Bulletin of Oita Institute of Marine and Fisheries Science (ISSN:13430602)
巻号頁・発行日
no.3, pp.5-7, 2001-12
被引用文献数
1

1)1998年春季、大分県国東半島沿岸の天然ワカメが不漁であった。そこで、聞き取り調査や水温などの水質環境について検討し、原因を推定した。 2)聞き取りから、例年に比ベワカメ藻体の発生数、生長ともに不良であることがわかった。また、近隣県でも同様の状況にあることが確認された。 3)当該海域の水温は、平年より継続して高め傾向にあることがわかった。ワカメの分布南限域にあたる大分県沿岸では、この高水温傾向がワカメの生長不良を引き起こし、不漁につながったともの推定された。
著者
岩男 昂
出版者
大分県海洋水産研究センター
雑誌
大分県海洋水産研究センター調査研究報告 = Bulletin of Oita Institute of Marine and Fisheries Science (ISSN:13430602)
巻号頁・発行日
no.3, pp.19-25, 2001-12

1)水温は表層では4~9月、底層では4~10月の間は沿岸部の方が、沖合部より高い水温となる。冬季は6~8℃台まで低下し、夏季は27~28℃台まで昇温する。また、半閉鎖的水域の水温は気温の影響を強く受けて変動すると思われた。 2)塩分は冬季は33台の高塩分水塊が灘奥まで侵入する。低塩分は7月に観測され、国東半島沿いにかなり沖合まで、低塩分域を形成する。冬季は32~33台、夏季は27~30台で推移する。変動は淡水の流入量の影響が大であると考えられた。 3)成層は8月に最も顕著となり、9月は崩壊へと進む。また、成層の形成には水温の方が塩分より強い影響をおよぼしているものと考えられた。 4)成層形成期に湾奥の水域にDINは7μM/L台、P04-Pは0.5μM/L台の高濃度域が出現する。 5)DINは1982年に最高値を記録した後、減少傾向にある。P04-Pは1980年を境に減少し、その後はほぼ横這い傾向で推移している。 6)栄養塩の減少に伴い植物性プランクトンの発生量は減少傾向にある。また、赤潮発生件数も減少傾向にあり、出現プランクトン組成にも変化が伺われた。
出版者
大分県海洋水産研究センター
雑誌
大分県海洋水産研究センター調査研究報告 = Bulletin of Oita Institute of Marine and Fisheries Science (ISSN:13430602)
巻号頁・発行日
no.4, pp.51-55, 2003-06

1)飽和露出処理で保存した場合の、ノリ貝殻糸状体の使用可能日数を調べるため、殻胞子放出実験と放出された殻胞子を室内培養し、生長を観察した。2)殻胞子放出実験は、1997年10月1日から糸状体を0、3、7、13、26、47、110日間保存したのち、ビーカーに垂下して海水に戻し、落下した胞子数を計数し、その放出までに要する日数や連続放出期間、最大放出日などを観察した。3)幼芽の生長は、放出された殻胞子をフラスコ内で採苗し、室内で10日間培養しながら観察を行った。4)殻胞子放出実験では、採苗に十分な胞子数を得るまでに、13日保存までは2-4日の短期間で済んだ。しかし、26日保存以降は6-9日を要し、しかも最大放出日も遅くなる傾向にあった。5)室内培養による生長は、13日までの保存では生長に大差は見られなかったが、それ以降の保存では細胞の分裂が遅く、葉体の生長は劣った。6)以上から、飽和露出処理保存した場合の貝殻糸状体の使用可能日数は13日間、ほぼ2週間までと考えられた。
著者
岩男昂
出版者
大分県海洋水産研究センター
雑誌
大分県海洋水産研究センター調査研究報告 = Bulletin of Oita Institute of Marine and Fisheries Science (ISSN:13430602)
巻号頁・発行日
no.4, pp.57-63, 2003-06
被引用文献数
6

1)各アサリ漁場の特性を明らかにする目的で、環境調査などを行った。2)一般的な底質環境である強熱減量、全硫化物量はほぼ同じ様な変動を示し、漁場間に違いはみられなかった。3)粗粒砂以上の占める割合は長洲、小祝、真玉、豊後高田、柳ヶ浦、和間、四日市漁場の順に高かった。4)細粒砂以下の占める割合は和間、真玉、四日市、豊後高田、柳ヶ浦、小祝、長洲漁場の順に高かった。5)地盤変動は小祝、四日市、長洲、和間、豊後高田、真玉、柳ヶ浦漁場の順に小さかった。6)底泥表層中の全色素量は四日市、柳ヶ浦、小祝、和間、真玉、長洲、豊後高田漁場の順に多かった。7)底泥間隙水中の全色素量は小祝、真玉、四日市、柳ヶ浦、和間、長洲、豊後高田漁場の順に多かつた。8)アサリの可食部中のグリコーゲン量は小祝で高い傾向が伺われた。9)粗粒砂以上の占める割合、中央粒径値、地盤変動、底質全色素量、間隙水全色素量を用いて、漁場の評価を5段階に大別した相対評価で行うと、小祝漁場の評価が最も高く、ついで、長洲、四日市、柳ヶ浦・真玉、和間、豊後高田の順であった。
著者
伊藤龍星
出版者
大分県海洋水産研究センター
雑誌
大分県海洋水産研究センター調査研究報告 = Bulletin of Oita Institute of Marine and Fisheries Science (ISSN:13430602)
巻号頁・発行日
no.2, pp.23-30, 1999-03
被引用文献数
2

1)1994年4月及び6月に大分県中津市地先において殻長5~6mmのアサリ人工種苗を放流し、逸散を防ぐためネットを被覆して約2年間にわたり育成した。 2)放流後夏季にかけて急激に成長し、放流後2ヵ月には殻長15mmを超え、中間育成目標サイズに達した。その後冬季の成長は緩慢となったが、翌春から再び成長し、約1年半後には殻長30mmに達した。 3)生残率はネット被覆の場合、中間育成目標サイズ達成時(殻長15mm以上、放流から2ヵ月後)には40%前後であったが、直放流の場合は3%程度であり、ネット被覆はアサリ種苗育成に有効な方法であることが推察された。 4)当漁場での適正放流サイズはネット目合い3.5mm1×5.Ommの場合、6~7mm以上と考えられたが、種苗のサイズや各漁場の砂質によって目合いを選定する必要があることが示唆された。 5)人工種苗は周囲の天然貝と同様の形態に成長し、成熟も確認されたことから、漁獲対象のみならず再生産にも寄与できることが判明した。
出版者
大分県海洋水産研究センター
雑誌
大分県海洋水産研究センター調査研究報告 = Bulletin of Oita Institute of Marine and Fisheries Science (ISSN:13430602)
巻号頁・発行日
no.5, pp.23-28, 2004-11

1)1990-2002年度の13年間の周防灘大分県ノリ漁場の水温、比重の値を標準化して推移動向をとりまとめた。また、水温と日平均気温との関係を検討した。さらに、標準化した値を年度ごとに平均し、「高」、「平年並」、「低」水温(比重)年度の3つに分類した。2)赤ぐされ病と壺状菌病の発生日と被害の状況をとりまとめ、水温や比重との関係を検討した。また、壼状菌病については9月15日-10月20日の水温の推移と同病害の発生の有無について検討した。さらに、赤ぐされ病の発生日について、本県と福岡県有明海を比較した。3)ノリ漁場の水温は日平均気温と強い正の相関にあり、水温と気温は密接に関連していた。4)「高」水温年は1990、1998年度、「低」水温年は1995、2002年度であった。また、「高」比重年は1994、1995年度、「低」比重年は1993、1997、1999年度であった。5)赤ぐされ病は過去13年間のうち12カ年で発生していたが、低水温の年や高比重の年には発生が抑制されるか、発生時期が遅延する傾向が見られた。6)壺状菌病は過去13年間のうち7カ年で発生していたが、水温が9月中に22℃を下回るような、いわゆる早冷年に発生する傾向にあった。7)赤ぐされ病の発生日は11月20日前後が多く、福岡県有明海の発生より、およそ2週間遅れていた。8)地球温暖化に伴う今後の水温上昇を考えた場合、赤ぐされ病の抑制が期待される年は減少するが、壺状菌病の発生する年も減少すると推察された。