著者
鈴木 朋子 山東 勤弥 Tomoko SUZUKI Kinya SANDO
出版者
大阪樟蔭女子大学学術研究会
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.253-263, 2016-01

本研究は、広くダイエット法として普及している低炭水化物ダイエット(Low Carbohydrate Diet: LCD)の 減量効果および安全性について検討することを目的とする。方法は、1)LCD の方法について概観し、2)LCD の体 重減少効果について報告した学術論文を収集し、文献的に検討した。その結果、LCD の特徴は、炭水化物(糖質)を 含む食品の摂取は制限するが、たんぱく質および脂質を主成分とする食品に対する制限は設けられていなかった。医 学系学術論文データベースを用いて検索し、21 論文を検討対象とした。体重減少効果は、1)観察期間が長いほど、 2)炭水化物熱量比が低いほど、高くなる傾向が観察された。また、3)Blackburn の体重減少の評価法を参照する と、約70%の研究で高度な体重減少が観察され、安全性への疑問が示唆された。LCD は、一般的に健康的な食事と して推奨される食事の熱量構成比と大きく異なること、糖尿病性腎症患者においては腎機能を悪化させる危険を伴う ことをはじめ、適正かつ注意喚起を促す情報をあわせて普及していくことの重要性が窺われる。Weight loss effects and safety of low carbohydrate diets(LCD), which are common in Japan, are examined. This literature review was conducted to reveal 1)features of the LCD methods, 2)factors that influence weight loss, and 3)safety of weight loss, with reference to Blackburn's weight loss clinical evaluation index. Twenty one LCD studies, whose subjects were healthy obese people, were selected for review from the academic medical research database. Most LCDs allow intake of high fat and high protein foods, rather than a strict regime of limiting carbohydrates. Weight loss appeared to be greater in studies with longer rather than with shorter observation periods. Also, the greater weight loss was observed, the carbohydrate to energy intake ratio became smaller. Rapid weight loss was observed in about 70% of the studies, which presents a risk of malnutrition. LCDs should be used with caution because 1)the energy ratios of LCDs diverge widely from the healthy diet that is recommended from Japanese dietary reference intakes, and 2)the risks of worsening renal function will increase if patients with diabetic nephropathy use LCDs. Warnings about possible negative effects of LCDs should be publicised to protect people's health.
著者
村井 尚子 ムライ ナオコ Naoko MURAI
出版者
大阪樟蔭女子大学学術研究会
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.175-185, 2016-01

本研究は、子どもにとっての「家」のもつ意味を現象学的人間学的な手法をおよびリアリスティック・アプロー チを用いた授業を展開することで、学生とともに探究する試みを扱ったものである。現象学的人間学の方法は、1950 年代のオランダユトレヒト学派によって用いられるようになり、現代カナダの現象学的教育学者マックス・ヴァン= マーネンによって深化されることで各国の教師教育の現場で活用されるようになっている。さらに、リアリスティッ ク・アプローチは、現代オランダの教育学者F・コルトハーヘンによって、学び続ける教師を養成するための教師教 育の手法として開発された。筆者はこれらの手法を参考にしながら、学生と共に創るワークショップ型の授業を実施 し、家のイメージの抽出、絵本や映画における家の意味についての考察、学生自身のお留守番の経験を振り返るといっ た方法を用いて、様々な角度から子どもにとっての「家」の有り様を明らかにした。この授業を通じて、学生達は、 家族が子どもの成育に与える影響を自ら体感的に理解し、家庭の有り様と子どもとの関係に感受性豊かに気づき、教 師・保育者として子どもの育ちの基盤を支えていくことの意義を看取したと言える。
著者
越智 砂織 オチ サオリ Saori OCHI
出版者
大阪樟蔭女子大学学術研究会
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 = Research bulletin of Osaka Shoin Women's University (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.117-124, 2018-01

本論文は、企業が特許権を保有したまま国内外の第三者に無償提供する、いわゆる「知的財産のオープン化(特許の無償開放)」が法人税法 22 条 2 項にいう無償の役務提供に該当するか否かについて論じたものである。知的財産のオープン化とは、同業他社に自社技術を解放することによって、自社技術の技術標準化を図ることを目的としたものである。本論文では、無償取引が収益を認識するのかという問題提起を行い、収益の擬制や役務提供の範囲について検討した。結果として、特許の無償開放は無償の役務提供に該当し、それは法人税法上、みなし特許収入として益金に算入されるべきであると結論づけた。
著者
越智 砂織 オチ サオリ Saori OCHI
出版者
大阪樟蔭女子大学学術研究会
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 = Research bulletin of Osaka Shoin Women's University (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.105-116, 2018-01

本論文は、企業が特許権を保有したまま国内外の第三者に無償提供する、いわゆる「知的財産のオープン化(特許の無償開放)」が法人税法 22 条 2 項にいう無償の役務提供に該当するか否かについて論じたものである。知的財産のオープン化とは、同業他社に自社技術を解放することによって、自社技術の技術標準化を図ることを目的としたものである。本論文では、無償取引が収益を認識するのかという問題提起を行い、収益の擬制や役務提供の範囲について検討した。結果として、特許の無償開放は無償の役務提供に該当し、それは法人税法上、みなし特許収入として益金に算入されるべきであると結論づけた。
著者
徳永 正直 Masanao TOKUNAGA
出版者
大阪樟蔭女子大学学術研究会
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.45-53, 2016-01

近年「道徳」の教科化による道徳教育の充実が要請されているが、「道徳」授業の評判はあまり芳しくない。 なぜなら「道徳」授業は予め設定された道徳的価値の「教え込み」(inculcation)に終始しているので、結果的に、 子どもに「偽りの自己」としての「良い子」を演じさせる「隠れたカリキュラム」に陥っているからである。このよ うな「道徳」授業を改善し、子どもたちの道徳的判断の発達促進を期待されたのが「モラルジレンマ授業」であった。 だが、道徳的判断の発達を促進することができても、道徳的行為の実践に結びつかないという批判がなされてきた。 コールバーグはこの批判を克服するために新たに「ジャスト・コミュニティ・プログラム」を提唱した。そこでは子 どもたちのコミュニティへの参加が促進され、具体的な問題解決のための民主的な手続きとしてのモラルディスカッ ションを通じて、共同体や仲間に対して責任を担う主体性のある子どもが育てられる。したがって、このジャスト・ コミュニティ・プログラムによる道徳教育は、「能動的市民の育成」をめざす「市民性教育」の基礎を構築する可能 性を秘めているのである。Der bisherige Unterricht über die sittlichen Erziehung in Japan ist für <inculcation> oder <indoctrination> gehalten worden. Im Unterricht haben viele Schüler und Schülerinen <good boys> und <nice girls> als ein sog. falsches Selbst gespielt. Dagegen im von Lawrence Kohlberg vorgeschlagenen Moral Dilemma Programm äußern sie sich als ein sog. wahres Selbst und durch die Moraldiskussion können ihre Entwicklungsstufe der sittlichen Urteilskraft erheben. Trotzdem hat Kohlberg erst später gemerkt, daß die sittliche Urteilskraft nicht unmittelbar zu der sittlichen Praxis führt. Dann hat er nochmals ein neues Just Community Programm vorgeschlagen. Darin geht es um die Moraldiskussion, konkrete Probleme in der Gemeinschaft, z.B. in einer Klasse zu lösen. Dadurch entsteht die sittlich gute Atmosphäre und kommunikative Alltagspraxis bei Jürgen Habermas. Ich bin davon überzeugt, daß das Just Community Programm sog. <citizenship education> begründen kann.