著者
福元 健太郎 村井 良太 Kentaro Fukumoto Ryota Murai
出版者
学習院大学法学会
雑誌
学習院大学法学会雑誌 = Gakushuin review of law and politics (ISSN:13417444)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.75-99, 2011-09-30

本稿は,戦前日本の内閣は存続にあたって誰の支持を必要としていたかとの問いに,1885年から1947年までの全45内閣の月次データに離散時間の生存分析を適用することによって取り組む.その結果,一方で,議会が多くの内閣提出法案を通すほど,陸相が過去に入閣した経験が長いほど,国務大臣の数が少ないほど,首相選定者の数が多いほど,内閣は長続きすることが明らかになった.他方で,軍部大臣(現役)武官制や政党内閣が内閣の寿命を縮めた,あるいは与党が衆議院に多くの議席を占めるほど内閣が長期間支えられたなどの,証拠は見いだされなかった.以上から,戦前日本は超然内閣というよりも,立法の多寡に内閣の生存が依存するという意味で事実上の議院内閣制であったことが示唆される.
著者
福元 健太郎 早坂 義弘 Kentaro Fukumoto Yoshihiro Hayasaka
出版者
学習院大学法学会
雑誌
学習院大学法学会雑誌 = Gakushuin review of law and politics (ISSN:13417444)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.19-41, 2019-11

熊本地震の特徴として,災害関連死に認定された人数の多さと,発災から認定されるまでの期間の長さ(認定される時点の遅さ)が挙げられる.本稿は,熊本地震における災害関連死認定の市町村による違いがあるかを明らかにするために,関連死が認定されるタイミングに着目し,生存分析の枠組みを適用した.その結果,熊本市は他の市町村と比べて統計的に有意に早く関連死を認定していることがわかった.また益城町は遅めであった.さらに証拠はやや劣るが,大津町は早め,宇城市は遅めといった傾向も見られた.分析上の細かな設定を多少変えてみても,以上の結論は大筋変わらず,頑健である.ここから,データ分析が難しい関連死認定の他の側面(例えば,人数の多寡,認定基準,審査委員の傾向など)についても,市町村による違いがあったのではないだろうか,ということが示唆される.