- 著者
-
副島 美由紀
- 出版者
- 小樽商科大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1999
ヴァイマール文化を準備した揺藍ともなったドイツ19世糸昧における生活改革運動に関する研究は、まずドイツ産業革命以降に始まった社会改革運動の様々な形態を把握することから始まった。つまり、住宅改革、土地改革、田園都市運動、菜食主義運動、禁酒運動、裸体運動、芸術教育運動など個別の改革運動の性質や背景、また各運動間の関連等についてまず概括を行い、その後「あらゆる生活改善思想が結実する場」と言われた田園都市運動に特に着目してその歴史に関する研究を行った。その結果として明らかになったのは、住宅改革の一種である田園都市構想はそもそもヨーロッパにおいて長い歴史を持つユートピア構想の一形態であり、イギリス、フランス、イタリアなど個々の国にはそれぞれのユートピア的社会改革構想の系譜が存在するという事実である。ドイツにおけるその系譜は、宗教的ユートピアや労働者コロニーの建設、またアフリカ植民コロニー構想等を経由しながら緑の党などの革新的政治運動にまで連なっている。13年度までの研究成果発表においては、それらユートピア構想の背景を概説しながらドイツ最初の田園都市であると同時に芸術家コロニーでもあったヘレラウ建設の歴史までをたどり、紹介することができた。これらの実績を踏まえ、今後はさらにヘレラウ以外の田園都市構想や芸術家コロニー運動を始め、その他の文化現象と生活改革運動との関連について研究を続け、成果を発表していくつもりである。