- 著者
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小林 盾
- 出版者
- 成蹊大学大学院文学研究科
- 雑誌
- 成蹊人文研究 (ISSN:09191488)
- 巻号頁・発行日
- no.27, pp.57-79, 2019-03
この論文は、キャバクラにおける女性サービス提供者(キャバクラ嬢)が、仕事からなにを獲得しているのかを描く。先行研究では(収入にくわえ)承認感を得るとされるが、それ以外の可能性や多様性については未解明であった。そこで、合理的選択理論の立場にたって、キャバクラ嬢が仕事から人的資本や社会関係資本を獲得し、転職や収入増といったその後の地位達成に活用すると仮定する。データとして現役または元キャバクラ嬢8 人を対象に、インタビュー調査を実施した。語りを分析した結果、(1)対象者のすべてのキャバクラ嬢が、(コミュニケーション力、美意識、飲酒、忍耐力などの)人的資本と(情報、人脈、恋人などの)社会関係資本を得ていると語った。(2)ただし、承認感は獲得したと語る人とそうでないという人がいて、もともと自信のある人は承認感を必要とせず、自信のない人は必要としていた。したがって、キャバクラ嬢という仕事に、承認感といういわばロマンチックな報酬だけでなく、資本獲得というしたたかな合理性も潜むことが明らかになった。これらは、この研究ではじめて明らかにされた。先行研究では、あたかもキャバクラ嬢なら一様に承認感をもつように描かれてきたが、実際には多様なことがわかった。