著者
森田 厚 小林 盾 川端 健嗣
出版者
成蹊大学文学部学会
雑誌
成蹊大学文学部紀要 (ISSN:05867797)
巻号頁・発行日
no.54, pp.1-10, 2019-03

この論文では、理美容師の志望者に着目し、理容師志望者と美容師志望者、男性と女性とで、志望動機に違いがあるのかを検討する。さらに、男性の理容師志望者、女性の理容師志望者、男性の美容師志望者、女性の美容師志望者の4 グループで、志望動機が異なるかを調べる。データは、首都圏にある理美容専門学校で、量的調査を実施して収集した(有効回収数は268 人、回収率は当日の出席者全員)。なぜ理容師(または美容師)になりたいと思ったかを、自由回答で記述してもらい、計量テキスト分析した。その結果、理容師志望者と美容師志望者、男性と女性、4 グループで、志望動機に違いがあった。とくに、男性の理容師志望者には家業が、女性の理容師志望者には技術修得が、男性の美容師志望者には憧れ・向いてることが、女性の美容師志望者には人を喜ばせることが、特徴的な志望動機となっていた。したがって、理美容師への動機は多様であり、グループごとに特徴があった。このことは、理美容師の入職や転職において、グループごとに異なるサポートが必要であることを示唆する。
著者
川端 健嗣
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.61-89, 2016-05-30 (Released:2021-12-29)
参考文献数
51

本稿はウルリッヒ・ベックの社会理論の成立背景を明らかにすることを目的とする。 一九八六年にチェルノブイリの原子力発電所の事故があり、同年にベックはリスク社会論を発表した。以降、ベックの研究は学問内在的脈絡ではなく社会変化に応じる「時代診断」として脚光を集めた。 しかしベック自身が主張する通り「時代診断」には学問内在的な「理論的営為」の支えが必要である。そうでなくては「マスメディアの後追い」に陥り論理体系的な発展や継承が見込めない。 ベックの理論を構成する包括的命題は「再帰的近代化」である。「再帰的近代化」はスコット・ラッシュとアンソニー・ギデンズとの共有命題である。ベックは両論者との立論の違いを「非知」の働きから説明している。では「非知」論はいかなる研究系譜に位置付くのか。 二〇〇一年にペーター・ヴェーリングは「非知」の研究が社会学史に「不在」であったと指摘する。しかし一九七〇年代のベックのドイツ実証主義論争の研究には「非知」の前身となる問題設定を見出しうる。 実証主義論争は認識の限界と基礎付けを主題としていた。ベックは認識の限界や統制のきかない知識が、研究成果の「使用」される場面で「生み出されている」と指摘した。「非知」を知の欠落である「無知」や途上の「未知」ではなく、知の産出や運用自体がもたらす分からないこととして積極的に措定する視座は、実証主義論争の問いから出発していると再定位できる。
著者
小林 盾 大﨑 裕子 川端 健嗣 渡邉 大輔
出版者
成蹊大学アジア太平洋研究センター
雑誌
アジア太平洋研究 = Review of Asian and Pacific studies (ISSN:09138439)
巻号頁・発行日
no.42, pp.115-126, 2017

This paper scrutinizes on transformation of the romantic love ideology in Japan. The ideology has characterized the modern family by uniting love, marriage, and sex (and therefore birth). The paper decomposes the ideology into two sub norms: the "love and marriage combination" norm and the "marriage and birth combination" norm. Still, these norms are yet to be quantitatively examined. So, data are collected in the 2015 Japanese National Survey on Social Stratification and Life Course (SSL-2015) with 12,007 respondents. They are asked whether they agree that love is indispensable for marriage and that marriage is so for birth. Results are shown as follows. (1) By distributions, about 80 percent agree with the both norms. (2) By comparing proportions, most young males and females relax the norms. However, young females tighten the "marriage and birth combination" norm. (3) As a result, by odds ratios, young males present consistent patterns on the two norms, while young females not. Therefore, mostly the romantic love ideology has been relaxed, but the "marriage and birth combination" norm survives and even revitalizes. This means that the ideology has been transformed and diversified, which may affect future forms of the family. These findings are obtained only in quantitative analyses.
著者
川端 健嗣
出版者
成蹊大学大学院文学研究科
雑誌
成蹊人文研究 (ISSN:09191488)
巻号頁・発行日
no.27, pp.81-96, 2019-03

本研究は各個人の経済状況について、本人の努力に左右される度合いの意識と、責任を感じる度合いの意識の関係を分析する。データは、ランダムサンプリングによる「2018年度暮らしについての西東京市民調査」(N =292)を用いた。分析の結果、全体の半数以上に不均衡があり、約3 割以上が努力の度合いに比べて責任を過大に感じていることが明らかになった。さらに多項ロジスティック回帰分析の結果、等価所得が低いほど努力の度合いに比べて責任を過小に感じることに有意な効果を持つことが明らかになった。分析を通じて、人々の意識における責任実践の不均衡な規定構造が明らかになった。