著者
前田 泰樹
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.13-26, 2003

近年、医療従事者による対人援助技法に関して、「傾聴」の重要性が強調されるが、その議論は、抽象的な理念や表現上の技法に関するものに留まる。本稿では電話相談を行う看護職のロール・プレイにおける相互行為を分析し、医療従事者が「<助言者>であることをする」実践のなかで、<相談者>の示す感情にいかに応じるべきとされているのかについて、詳細な記述を行った。この作業を通じて、傾聴という活動に結びついている概念の連関としての「論理文法」の概略を以下のように提示し、過度に個人に帰責することなく、実践のあり方を再検討していく方向性を示した。(1)情報提供などで助言が可能な場合、「傾聴」活動を行うことが関連性をもたない可能性がある。(2)アセスメントに成功するが、直ちには受け入れられない場合、「傾聴」の重要性は高まる。(3)アセスメントが困難である場合、傾聴的技法の一部は、医療的文脈に引き戻され、トラブルを助長させる可能性がある。
著者
海老田 大五朗
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.104-115, 2011

本研究は、接骨院における柔道整復師と患者のコミュニケーション研究の一編である。本研究で使用するデータは、柔道整復師によるセルフストレッチングの指導場面の映像データであり、このデータについて相互行為分析を行った。セルフストレッチングの指導の中で、患者の身体の操作および構造化が、柔道整復師と患者の相互行為によって達成され、いわゆる「I-R-E」連鎖構造が多くみられた。患者の身体の構造化とこれらの連鎖構造こそが本データの相互行為秩序を特徴付けている。