著者
伊藤 治 渡辺 厳 PETERS Gerald A.
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物
巻号頁・発行日
vol.25, pp.57-63, 1983

窒素固定生物であるらん藻との共生体であるアカウキクサにおいて,培地中に化合態窒素が存在した場合,窒素固定能ならびに窒素収支がどのような影響を受けるか,また培地窒素は宿主とらん藻との間を行ききするものであるかどうかについて調査を行なった。1.培地窒素の吸収返度の濃度依存性はアンモニアで最も高く,尿素,硝酸の順に低くなった。吸収速度の大きさも同様な順序であった。2.アセチレン還元能が無窒素区の半分となる濃度は,アンモニアと尿素で約10mM,硝酸で25mMであった。3.全体の窒素収支の中で培地窒素の占める割合はアンモニア,尿素,硝酸の順であった。5mMで比較すると,各々約50,40,20%であった。4.アンモニア,尿素添加により全窒素の有意な増加が認められた。特に前者の効果は顕著であった。硝酸では無窒素区とほとんど変わらなかった。5.^<15>Nで標識した無機態窒素を含む培地に一定時間置かれたアカウキクサかららん藻を分離したところ^<15>Nの富化が認められた。このことは窒素の動きが,らん藻から宿主へという一方性のものではなく,宿主かららん藻へというものも含む両方向性のものであることまたは,らん薬において窒素の流出入に関してsourceとなるものとsinkとなるものとに分かれていることを示している。
著者
赫 英紅 佐野 輝男
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.104-108, 2011-11-01
参考文献数
10

リンゴ樹葉圏から高い頻度で分離される非病原性及び病原性の真菌と細菌41種を選定し,真菌はrDNA-ITS,細菌は16S rDNAから各種に特異的な40塩基を抽出し,リンゴ葉圏主要真菌・細菌検出用オリゴDNAマクロアレイを作成した。検出限界は10^2-10^3CFU,培養性・難培養性及び病原性・非病原性を含むリンゴ葉圏に生息する主要な真菌・細菌類を同時に検出可能で,検出シグナルの強度は生息密度を反映していた。青森県弘前市周辺の慣行防除園,特別栽培園,JAS有機栽培園,自然農法実践園の4園地を調査対象として,病害発生状況とリンゴ葉圏に生息する主要な病原性・非病原性真菌・細菌の動態を分析した。慣行防除園と特別栽培園では栽培期間を通じて目立った病害の発生は認められなかった。JAS有機栽培園と自然農法実践園では,開花期にモニリア病,6月上旬から黒星病,6月後半から斑落或は褐斑病斑が発生した。マクロアレイ分析の結果,一般に真菌ではAurerobasidium, Cladosporium, Cryptococcus,細菌ではSphingomonas, Pseudomonas, Bacillusなどが優占していた。慣行栽培園では真菌・細菌の種の多様性に乏しく,生息量も少なかった。自然農法実践園では栽培期間を通じて黒星病菌が優占し,Auyeobasidiumが顕著に少なく,他の園に比べて多様な種が生息していた。