著者
田村 正人
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.25-36, 2002-07-30
参考文献数
39
被引用文献数
1

本稿は1940~1952年の農村に於ける伝統的な家屋害虫の防除法,とくに土用干し,ハエ(蝿),カ(蚊)およびネズミ(鼠)の駆除法に対してIPMの光を当てることを目的として総括した.人と昆虫との関わりは古く広く深いので,生活の向上と安定化の歴史は「文化」を生んだものと考えられるので,語源や由来についても若干の考察を試みた.また本学会では,過去5年間「家屋害虫のモニタリング」を年次大会のメーンテーマに連続とり上げているので,ネズミのモニタリングについて,ラットサインによる生息の確認と,記号放逐法や捕殺除去法による個体数の推定を,わかり易く解説した.モニタリングによって防除の要・不要を判断し,さらには防除効果の評価も可能となる.
著者
福冨 友馬 安枝 浩
出版者
日本家屋害虫学会
雑誌
都市有害生物管理 (ISSN:21861498)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.33-42, 2011-06-20
参考文献数
28

本稿では,ハウスダスト中のダニと昆虫のアレルゲンとヒトのアレルギー疾患の関係を解説した.ハウスダストは多くの患者にとってアレルギー疾患の発症原因であり,かつ増悪因子である.しかし,ハウスダストは極めて多種のアレルゲンの混合物であり,家屋により優位なアレルゲン種も異なり,個々の患者が影響を受けているアレルゲンは異なっている.ダニアレルゲンは,国際的に最も重要な気管支喘息,アレルギー性鼻炎の原因アレルゲンである.多くの研究が,室内環境中のダニアレルゲン量の増加が,喘息の発症と増悪の原因であることを示してきた.アメリカをはじめとする多くの国々で,ゴキブリアレルゲンはダニと同等に重要な室内環境アレルゲンと考えられている.しかしながら本邦の室内環境では,ゴキブリアレルゲンはほとんど検出されず,ゴキブリ感作率も低い.むしろ,本邦の室内塵を調査するとチャタテムシ目や双翅目,鱗翅目などのほうが頻繁に検出され,本邦ではこれらの昆虫の方が重要性が高いと考えられている.