著者
河合 利方 福田 理 中野 崇 磯貝 美佳 中田 和彦 中村 洋 土屋 友幸
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.684-691, 1998-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
34

外傷により脱落した歯を再植し,その予後を良好なものとするためには,その歯根膜の活性の維持が重要な要因の一つであると考えられている。本研究では,歯根膜の活性の維持をするための保存液としてソフトコンタクトレンズ保存液に注目し,その溶液の歯根膜細胞への影響をヒト歯根膜由来線維芽細胞を用い,それまで脱落歯の保存液として有効性が報告されている牛乳と生理食塩水を比較対照とし,短時間低温保存条件下で細胞数,細胞形態の観察から検討を加え,次の結果を得た。1.細胞数の測定3種類のソフトコンタクトレンズ保存液ともに,牛乳のような高い細胞数は示さず,溶液間にも差が認められた。しかし,経日的に細胞数の増加が認められ,作用7日後には牛乳の作用直後より高い細胞数を示した。2.細胞形態の観察牛乳においては,まったく異常所見は認められなかった。3種類のソフトコンタクトレンズ保存液では,生理食塩水と同様な所見を示した。すなわち,作用直後に原形質突起の縮小・球状化・剥離が認めらるものの,作用7日後には回復傾向を示し異常な所見は認められなくなっていた。以上のことからソフトコンタクトレンズ保存液は,脱落歯保存液の第一選択とされている牛乳よりも劣るものの,緊急時の一時保存溶液として短時間低温条件下での有用性を示唆したものと考える。
著者
徳倉 健 中野 崇 柴田 宗則 丹羽 英之 土屋 友幸
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-7, 2006-03-25
被引用文献数
5

今回著者らは,愛知学院大学歯学部附属病院小児歯科初診患者の全容および経年的推移を把握する目的で,小児歯科初診申込用紙をもとに,1993年度および2003年度に当科を受診した初診患者の動向について実態調査を行い,以下の結論を得た。<BR>1.総初診患者数:1993年度412人,2003年度562人であり,増加率は36.4%であった。両年度ともに初診時平均年齢は,6歳4か月であった。<BR>2.月別初診患者数:1993年度では学童期の長期休暇にあたる月で多く,それ以外の月では少ないのに対して,2003年度では年間を通しての変化は少なかった。<BR>3.曜日別初診患者数:1993年度では,木曜日を除き,各曜日ともほぼ同数を示していたのに対し,2003年度では月曜日と土曜日が多かった。<BR>4.主訴内訳:両年度ともに「齲蝕」と「口腔管理」が全体の50%以上を占めており,その他の主訴においても,この10年での顕著な差はみられなかった。<BR>5.初診患者の居住地域分布:両年度ともに市内が高い割合を示し,名古屋市近郊からの初診患者は,調査年度間において増加を示した。
著者
香西 克之 鈴木 淳司 内川 喜盛 木本 茂成 田村 康夫 中島 一郎 小野 俊朗 有田 憲司 新谷 誠康 福本 敏 海原 康孝 林 文子 土屋 友幸
出版者
日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.517-523, 2008-12-25
被引用文献数
3

本邦における小児歯科学教育の現状を調査するために,全国29歯科大学・大学歯学部の小児歯科学担当講座(分野)に対してアンケート調査を行った.アンケートは小児歯科学授業(講義),基礎実習,臨床実習の3項目について行った.アンケートの結果から以下の実態が確認された.授業では,ほとんどの大学で小児歯科,あるいは成長,発達などの小児歯科学と関連のあるシラバスの科目名称を有していたが,小児歯科学単独のシラバスを持たない大学もあった.授業時問は平均55時間程度であったが,最も少ない大学と多い大学では6倍の差があった.基礎実習は平均35時間行われていたが,国公立大学の平均に比べ私立大学は有意に多かった.臨床実習実施期間は平均11.9か月で大学間の差は少なかったが,実施時期は国公立大学に比べ私立大学が約6か月程度早期に行われていた.また,臨床実習での学生の参加形態や評価方法などは大学問で大きな差があった.<BR>以上のことから,小児歯科学の教育は各歯科大学・大学歯学部で大きな差があることが確認された.特に授業時間や実習時間は私立大学が多い傾向にあった.また臨床実習の実習期問は大学問で大きな差はないが,開始時期は私立大学が国公立大学に比べ有意に早いことが示された.
著者
井上 美津子 浅里 仁 池田 訓子 小林 聡美 佐々 龍二 高木 裕三 朝田 芳信 大嶋 隆 小口 春久 田中 光郎 前田 隆秀 宮沢 裕夫 藥師寺 仁 渡部 茂 真柳 秀昭 鈴木 康生 下岡 正八 野田 忠 渋井 尚武 進士 久明 田村 康夫 土屋 友幸 大東 道治 香西 克之 西野 瑞穂 木村 光孝 本川 渉 藤原 卓 山崎 要一 吉田 昊哲 丸山 進一郎 嘉ノ海 龍三 品川 光春
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.561-570, 2005-12-25
参考文献数
11
被引用文献数
5

小児に対する歯科用局所麻酔剤の安全性を明らかにするため日本小児歯科学会の委嘱により,臨床における使用実態と不快事項の発現に関する調査を行った.大学病院小児歯科および個人小児歯科診療所より4,145名分のデータが収集され,以下の結果を得た.<BR>1.局所麻酔を用いた治療は0歳から20歳以上の幅広い年齢層に行われていたが,12歳以下の者が約90%を占めていた.<BR>2.全身疾患やアレルギー体質を有する小児は調査対象児の2割以上を占め,また局所麻酔が初めての小児が16.2%であった.3<BR>.小児の治療において,局所麻酔はコンポジットレジン修復などの修復処置にも多用されていた.<BR>4.局所麻酔薬剤としてはリドカイン製剤が多く用いられており,投与量は1.0ml以下が多かったが,1.8mlを超えた例も3%程度みられ,追加投与により総量が増える傾向がみられた.<BR>5.術中,術後の不快事項は,それぞれ108名(2.6%),109名(2.6%)にみられた.不快事項の内容は,麻酔の奏効不良による疼痛や麻痺による違和感・不快感の訴えや,麻痺の残存による咬傷などが多くを占めていた.<BR>6.局所麻酔薬剤の副作用を疑わせる熟睡や軽い呼吸困難,悪心などの症状は,術中に3例,術後に6例ほどみられたが,いずれも重篤なものではなかった.